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第21話 また明日

 流星群?と、疑問符を浮かべている尾張さんではなく、椎堂さんが発言する。

「そういえば、来るらしいね。流星群。」

「えぇ、椎堂さんも知ってたんですね。」

「まぁ、ニュースで見たから。」

 そこまで、興味はないわ。と、どうでもよさそうに言う。

「ロマンがないですね。」

「現実主義なだけよ。」

「流星群は現実ですよ。」

「落ちてくる星を見たって、どうなるわけでもないじゃない。」

「世界が終わるかもしれませんよ?」

「ありえないわね。」

 一蹴される。まぁ、僕もそれには同意だが。しかし、尾張さんは、

「聞き捨てならないわね。」

 と、椎堂さんに噛み付く。

「ハレー彗星しかり、流星は、世界の終わりと切り離せないわ。」

 と、言うが、椎堂さんには聞こえていない。

「尾張さん、聞こえてないです。」

「歯痒いわね。」

 そう言ったあと、なにやら、スマホを取り出して、メッセージを打ち始める。

 しばらくして、椎堂さんのスマホが鳴る。
 椎堂さんは、それを見ると、

「確かにハレー彗星は、天変地異の前触れって言われてたけど、結局世界は終わらなかったじゃない。」

 と、尾張さんに向けて言う。

 それを聞いた尾張さんは、それは、周期がずれていただけよ。と、さらに反論をメッセージで送る。

 それに対して、椎堂さんがさらに反論する。

「あの、尾張さん?」

「今忙しいから話しかけないでもらえるかしら、紀美丹君。」

「えぇ・・・・・・。」

 返事がまだ聞けてないんですが・・・・・・。

「あの、椎堂さん?」

「ちょっと黙ってて。」

「はい。」

 どうやら、二人の世界に僕が入り込む余地はないようである。
 こんな時は、スマホゲームにかぎるなぁ。

 そんな事を考えながら、やり尽くしたアプリを開く。
 相変わらず、更新はされていなかった。

「・・・・・・はぁ。」

 その僕のため息は、二人の気に触ったようで、

「ため息なんか吐いてると幸せが逃げるよ紀美丹君?」

「そんな迷信はありえないんじゃないのかしら?椎堂さん?」

 と、いうように、二人の口喧嘩ならぬ討論は、僕を挟んでいつまでも続けられるのだった。

 それから、しばらくあと、精神的に疲れ切った僕が、真っ白な灰になっていると、ようやく二人の討論は終わったようで、椎堂さんが、

「それじゃあ。」

 と、言って帰路につこうとしていた。
 尾張さんは、そんな彼女に、

「また明日。」

 と、言うと、薄く微笑するのだった。

 聞こえるはずのないその言葉を、しかし、椎堂さんは、

「また明日。」

 と、繰り返して、歩き出していった。

 その後ろ姿は、どこか憑物がとれたような。そんな風に見えた。

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