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第17話 前提がおかしい

「そもそも、私が死んでいるっていう前提で話を進めるのやめてくれないかしら。」

 尾張さんは、両手を組んでそう主張する。

「だって、事実として死んでますよ?」

「じゃあ、なんであなたは、私に触ったり、話したり出来るのよ。」

 それを言われると、ぐうの音も出ない。

「多分プラズマがどーのこーのして、なんかそこはかとなくいい感じになった結果、尾張さんに触れるんだと思います。」

「全く意味がわからないわ。」

「奇遇ですね。僕もです。」

 仕方ないじゃないか。わからないものはわからないのだ。

「そもそも、尾張さんこの頃、家に帰った記憶あります?」

「・・・・・・ないわね。」

「今日の昼ごろの記憶は?」

「・・・・・・。」

 ですよね。それもそのはず、尾張さんが出現するのは、夕暮れから、早朝の間、しかも、学校内でしか存在を確認していない。

 さらに言えば、僕以外に認識している人に会ったことがない。

「いえ、やっぱり納得できないわ。若年性の健忘症なのかもしれないじゃない。」

「それはそれで問題ですけどね。」

 まあ、本人が納得しようがしまいが、どちらにしろ亡くなっている事実はひっくり返らない。
 しかし、

「じゃあ、ちょっと実験してみましょう。」

「実験?」

「尾張さんが、その辺を歩いてる生徒に声をかけて、その生徒が振り向かなければ、あなたは幽霊です。」

「いいわよ?その程度、余裕で振り向かせてあげるわ。」

「無理だと思うけどなぁ。」

「あなたの心を揺さぶる物語を。」  あなたの感情がもし動かされたなら、支援をお願いします。  私達はあなたの支援によって物語を綴ることができます。  よろしくお願いします。