6月のとある悲しい日
その日はバイトがあった。行ってしまえば楽だけど、行くまではだるいな〜とか、行きたくねえな〜とかだらだらしてしまうのがバイトっちゅうもんだが、その時はなぜかいつもの10分前に家を出た。
そして駐輪場で自分の自転車のスタンドを外し、漕ぎ出そうとした瞬間、あることに気づいた。なんと、自転車の鍵が刺さっていなかったのだ...
僕が悪いのは百も承知である。自転車にいつも鍵を差しっぱなしにしているのだから、盗まれても仕方がない。
けれども、なぜ鍵だけを盗むのか。自転車を盗むのは1兆歩譲ってわかる。でもなんで鍵だけ盗むのか。僕も最初は疑った。鍵を引き抜いてどっかに落としたのではないか、と。しかし、前日の夜に鍵を差しっぱなしにして家に帰ったのをはっきりと覚えている。鍵だけ盗まれた...
家の周り治安悪すぎるだろ!
鍵を探して家と駐輪場を行ったり来たりしていたら、あっという間に10分が過ぎていた。いつも通りの時間になってしまった。いつもなら自転車をちょっと早く漕いで、間に合う時間だが、今日はその自転車が使えない。
走るしかない。
遅刻するかもしれない、自転車の鍵を作るのに何千円もかかるかもしれない、色んな恐れさえも力に変えてしゃにむに走った。気分は『走れメロス』のメロスである。妹の結婚式も、親友の処刑も、王の奸佞邪智を打ち破る目的もないが、走った。少しずつ沈んでいく太陽の、十倍も早く走った。もう自分がメロスなんじゃないか思いはじめていた...
しかし、無情にもいつも乗っている電車は僕を乗せることはなかった。
僕はホームにうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂うダイヤを!」...
ゼウスうんぬんは嘘だが、乗り遅れたのは事実である。これで遅刻確定か、そう思ったが、中央特快がちょっと遅延していて、ギリギリ間に合いそうなことが判明した。神は見捨てていなかった。ありがとうゼウス。にゃんこ大戦争でちょっとだけ使ってたおかげで助けてくれたのか。
そして、電車を乗り継ぎ、バイト先の最寄駅を降り、人通りが少ないことを確認しながら、走った。正直歩いても走っても変わらない距離だが、いてもたってもいられずに、俺は走った明日に向かって。
が、走り出して三歩目で足を滑らせ思いっきり転んだ。午前中の雨で濡れた路面×コンバースという100%転ぶ環境だった。膝を大幅に擦りむいた感覚があった。久しぶりだった。小学生以来の大転びだった。
ただ、怪我の心配よりも遅刻の方が大事だったので、確認もせずにバイト先に向かった...
結局遅刻はせず、いつも通り制服に着替えて働いた。
退勤時間になり、着替えて帰ろうとしていたら...
僕のズボン(ただでさえ安いGUの特価コーナーで990円で買った)が破けている!!
あと写真は載せられないけど普通に膝擦りむいてグロい怪我してる!
もう散々だ。自転車の鍵盗まれて、遅刻しそうになって、転んで、ズボン破いて。なんか僕悪いことしたか?よっぽどの悪行をしなくちゃこんなに不幸が続くわけがない。
たしかに僕が小学生のとき、生活の授業で育てたトマトを嫌いだったから食べないでそのまま腐らせたけど。
たしかに僕が小学生のとき、ネットで調べた強いポケモンで友達を一方的に蹂躙してたけど。
たしかに僕が小学生のとき、お年玉の額が少な過ぎて少ない自虐をするために友達にお年玉の額聞いて回ってたけど。
たしかに僕が小学生のとき、給食がまずすぎてほぼ毎日残してたけど。
たしかに僕が小学生のとき、生活委員の花壇の水やりの仕事毎週やらなきゃいけないのに隔週でやってたけど。
たしかに僕が小学生のとき、youtubeに違法アップロードされてた陣内智則とアンジャッシュのネタ動画見てたけど...
うーん。思い返せば意外と悪い人間だわ。こりゃしょうがない。これからの人生待ち受ける不幸は甘んじて受け入れよう。
帰りの電車で今お気に入りの4曲をヘビーローテーションしてなんとか精神を回復させた。おわり。
今お気に入りの4曲↓
いやお気に入りの曲ジャンル幅広すぎるだろ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?