あらゆる命をもれなく平等に
愛知県西尾市の阿弥陀院はペットの供養をしています。専用の火葬炉(愛知県認可)でのお骨拾い、本堂での読経などに立ち会う個別火葬を執り行い、いつでもお参りできる永代供養塔もあります。「ちゃんと供養に重きを置いて、真心を込めて」という田中宗龍住職に、その想いやお寺の歴史などを語ってもらいました。
平安末期から、天災も乗り越え
――愛知県の西三河南部、三河湾に面した西尾市にある浄土宗西山深草派のお寺ですね。
「当院があるのは、西尾市の西の端、矢作川を渡ればすぐ碧南市という場所で、矢作川と並行するように北へ深く入る平坂の入り江をのぞむ港町にあります。この平坂港は、近代の海運の要衝で、入り江を中心に鋳物やレンガ、三州瓦の工場が軒を連ねていました。今でも鋳物のにおい、フェノール臭(消毒や水性絵の具の臭い)がします。あくまで歴史の一端ですが、平安時代末期の昔からおよそ900年にわたり、様々な歴史の趨勢を見守ってきたのが阿弥陀院です」
――平安時代に始まったお寺なんですね。
「残念ながら、当寺は、昭和19(1944)年の東南海地震、ひと月後の昭和20年1月13日に発生した三河地震で、本堂をはじめ諸堂が倒壊してしまいました。さらに、昭和28年の台風13号、昭和34年の伊勢湾台風など、たび重なる天災で甚大な被害をこうむり、その折、寺の由緒書きや縁起なども散失してしまいました。
しかし、先先々代と先代の住職が手控えや覚書のかたちでその一端を紡いでくださり、概略をうかがうことができます。
それによりますと、開基は平安時代の長承元年(1132年)にさかのぼります。融通念仏宗の祖である良忍上人の門弟で、大和の良寛上人という方が草庵を結んだのが始まりだと伝わっております。平安末期から鎌倉時代のころにつくられたとされる釈迦如来像が安置されておりまして、これは衣の文様が独特の波状になっている清凉寺式仏像で、愛知県内では阿弥陀院のものを含めて2体しか現存していないそうです。
草庵を結んでから400年を経た享禄5(1532)年に現在の西山深草派に改宗しまして、今に続いているとされてます」
名称から推測する「込められた願い」
――こちらは阿弥陀院という院号で呼ばれているんですね。
「昔は山門のすぐ前までが海で、海難事故で亡くなった人を供養する役を担ったお寺だったそうです。それはお寺の名称から、込められた願いが見て取れます。山号が『救う』に衆生の『衆』で『救衆山』、院号が『阿弥陀院』、寺号は『海』と『平ら』という漢字で『海平寺』といいます。お寺は寺号を呼ぶのが一般的ですが、あえて院号で通称されています。その呼称を使うことで、念仏に通じるということで定着したようです」
――ご住職は地元のご出身ですか。
「兵庫県の丹波です。京都の本山で修行をした後、岡崎市のお寺の手伝いに入った縁から、こちらに来ました。阿弥陀院は徳川家康から土地を賜った御朱印地で、寺紋は葵の紋です。とても由緒あるお寺を受け継ぎましたし、なんとか盛り上げていきたいと思っております」
ワンちゃん、ネコちゃんの供養も
――歴史あるお寺ですが、逆に、新しい試みなどはされていますか。
「3年前から、ペットのワンちゃんやネコちゃんたちの『動物供養』を始めました」
――始めた理由は?
「私の大先輩で大恩人のご住職の教導によるところが最大なのですが、阿弥陀さまのお誓いはあらゆる命をもれなく平等に供養するということです。それに基づいて、人間のみならず、動物の供養も教えにのっとり、お寺で責任をもって極楽へお送りするという考えからです」
命は周りを明るく照らす光
――ペットは家族同然という方も多いですからね。
「私どもはお念仏の宗旨です。そもそも『南無阿彌陀仏』とは、阿彌陀さまに南無(帰命)するという意味です。とは、古代インドの言葉でアミターユス『無量の寿命(いのち)』・アミターバ『無量の光明』という言葉の音写です。漢字自体に意味はありません。
生きるとは寿命があるということです。この寿命を自分のものでなく、阿彌陀さまを寿命としてこの身にいただいていると心得ることが帰命ということです。同時にその命は、周りを明るく照らす光であるということです。家族や仲間、傍らにいる人を命の光でもって明るく照らすことが生きるということになります。阿彌陀さまと一緒に、お釈迦さまの教えに則って生活することが念仏の日暮らしということです。
ペットの動物たちも同じです。その愛らしい姿やしぐさに癒しや元気、生きる力をいただきます。それこそがまさに、その子たちの寿命の光に照らされるということであり、阿彌陀さまとともに生きている念仏の姿そのものなのです」
――ペットの供養を始めて何か気づいたことはありますか。
「毎週のようにお参りに来る方もいらっしゃるし、すごいお花をお供えする方もいます。若い人が多いですね。ウォーキングの途中で立ち寄ってお参りをされる。
お寺に来てもらいたい、ということでイベントをすることがあります。それはそれで素晴らしいけど、用があれば自然と足を運んでくれると、改めて気づきました。
永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
毎月の第2、第4月曜日に更新する予定です。
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