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桜やアジサイに込める想い

春、桜の季節に、高架になっている名鉄本宿駅のホームから南側を眺めると、みごとに薄いピンクの花が咲き誇る山の斜面が見える。そこは欣浄寺(ごんじょうじ)の境内。愛知県岡崎市本宿町にある浄土宗西山深草派のお寺を継いだばかりの43歳、祖父江義典住職は、多くの方にお寺へ足を運んでほしいと考えている。毎月の法話会、春と秋の彼岸会、模擬葬儀など……。花に埋まる寺の裏山も、そんな想いを込めて汗を流して整えている。


徳川家康の思いと同じ

――院号は「厭離院」、寺名には「欣求浄土」の中にある文字が入っています。「厭離穢土 欣求浄土(おんりえど ごんぐじょうど)」を旗印とした徳川家康と関係が深いのでしょうか。
「旗印と同じ『厭離穢土 欣求浄土』という、極楽往生を願うという大切な教えから取られた名前です。ですから、家康と同じ思いで、この欣浄寺という名前が付けられたのではないかと思います。
近くに同じ浄土宗西山深草派の法蔵寺というお寺があり、三河地方への西山深草派伝播の礎となったお寺です。その法蔵寺の8代目住職が1579年に隠居するために建てられたお寺が、欣浄寺の始まりです。法蔵寺には、家康が竹千代という名の幼少のころ、 学問に励んだ際に落書きをしてしまったという机がありますよ」

欣浄寺の祖父江義典住職

――欣浄寺はそれからずっと同じ場所にあるんですか。
「法蔵寺の本堂を真正面に眺められる、隠居生活には絶好の、閑静な山中に建てられたのですが、東海道が開かれた後の1722年、街道沿いの現在地に移転しました。
欣浄寺に祀られている千手観音像は、開山以前から集落を守っていたと伝わっています。寺子屋を開いた場所が今の本宿小学校につながる歴史があって、古くから地域とつながっているお寺です」

大好きなお寺を離れるのは寂しくて

――こちらのお寺がご実家ですか。
「寺の次男です。2歳上の兄が学校を卒業して県外の会社に入って、『お寺のことは任せた』『あとは頼む』と言われまして。私は文章を書くことが好きで、学生時代には、ホームページやブログを書いたりしていたので、出版の仕事をしてみたい気持ちもありました。
でも、自分が継がなかったら、父が教員をしながら守ってきたこのお寺から出ていかないといけない状況になった。そう考えると、それは寂しい、やれるところまでやってみようと、継ぐことを決めました。このお寺が本当に好きなんですよ。
中学生の時に僧の資格も取ってあって、父の手伝いもしていましたので、副住職となり、昨年の春には父から住職を引き継ぎました」

秘仏の千手観音像(欣浄寺提供)と、本堂内にある抱き地蔵

――矢田石材店がお寺の本堂でのお葬式をサポートする「お寺でおみおくり」の賛同寺院になりました。
「本堂を建て替えて10年ほどになりますが、新しい本堂を冷暖房完備にしたのは、お寺でのお葬式や法要をしやすくするためでもあります。ミニキッチンもつくり、トイレもきれいにしました。お葬式は仏様の前でしていただくのが一番いいと思っています。ですので、矢田石材店からお話をうかがい、コンセプトや思いの方向性が同じで、共感を得て、ご一緒したいと思いました」

死に向き合い、生きること考える

――以前からお寺でのお葬式をすべきと思っていらっしゃったんですね。
「 お寺の本堂の中は極楽浄土のミニチュア版です。お葬式では、亡くなられた方はこういうところへ行くんだな、という感覚で参列していただくのがいいと思います。そういう気持ちで見送っていただき、いつかは自分もいく時が来る、と肌で感じられる大切な機会です。なかなか自分が死ぬことっていうのは考えないじゃないですか。でも、自分の死を考えると、自分が生きることを考えることにつながってきます。だから、お寺でお葬式をしていただくのが一番いいなぁと思っています」

本堂内で語る祖父江住職

――模擬葬儀も開催されました。
「浄土宗西山深草派の宗旨にのっとった葬儀をさせていただきましたが、どんな宗派の方でも、別の宗派のお葬式はどんな感じでやるのかな、見てみたい、というご興味でもどうぞ、というスタンスでやってみました。
実際のお葬式に出て、これは何をやっているのか、何のためにやっているのか分からないと感じられる方も多いと思います。なので、模擬葬儀ではそうしたことが分かるように説明や質問の時間も用意しました。実際のお葬式の場でいろいろ聞くことはなかなかしにくいので、こういう機会を利用していただければいいかと思います。
お葬式は、みなさんとお寺との関係がつながっていく上での、ひとつの大切な儀式だと考えています。お参りという目的でお寺に来てくださるのがいいんですけど、それって少しハードルが高いので、お寺に気兼ねなく来ていただける第一歩、足を運んでいただけるきっかけがあるといいなあと考えています」

花見のついでにちょっとお寺へ

――なにかいいきっかけありますか。
「毎月18日に勤めている月例法要はその一つです。みなさんに喜んで来てもらえるように、というのと同時に、自分自身の勉強や研鑽のために法話をさせていただいています。
欣浄寺の裏には桜山があります。私が子供のころはスギやヒノキの鬱蒼とした裏山で、自分の遊び場でした。このスギやヒノキは、先代が一大事業として行った本堂再建の時に、伐採して建設資材の一部になり、伐採された跡に檀家さまたちによって約200本の桜が植樹されたんです。春には見事に咲いて、高架になっている名鉄の本宿駅からも見ていただけるようになりました。

春、桜の咲いた寺の裏山から名鉄本宿駅を眺めた風景(欣浄寺提供)

秋にはモミジなどの紅葉も楽しんでいただけますし、そこに今、妻や子どもたちに手伝ってもらってアジサイを植えています。毎年100本。斜面の通路づくりとかを、自分でツルハシ振りかざして作業しています。今はこれが趣味みたいになっています。いずれは山全体をアジサイでうめたいという気持ちでやっています。
なんということもない所なんだけど、遠くから見て、散歩するのに気持ちよさそうだと来ていただいて、ついでにちょっとお寺にも寄っていこうか、という方が増えていただけるといいかなと考えています」

本堂前に立つ祖父江住職

寺名:林光山 厭離院 欣浄寺
宗派:浄土宗西山深草派
住所:愛知県岡崎市本宿町字東木竹16


永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
毎月の第2、第4月曜日に更新する予定です。


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