【ディスクガイド】コブクロ 全アルバムレビュー 1999-2024
久しぶりにnoteから投稿してみます。
ニューアルバム『QUARTER CENTURY』のリリースを記念して、コブクロがこれまでに発表した歴代のアルバム作品を一挙に振り返ってみたく存じます!
私見も多分に含まれますが、本記事を通じてコブクロのコアな部分まで掘り下げてみたいと思っていただける方がいらっしゃれば何よりも幸いです。
それでは早速まいりましょう!
1st Indies Mini『Saturday 8:PM』
コブクロ初の全国流通CD作品。インディーズレーベルからのリリースで、所属事務所の社長の縁で清水興氏をプロデュースに招いて制作された。
記念すべきインディーズ1作目ということで、始まりを告げる原点のような作品と位置づけてもいいかと思います。
とはいえ当時既に存在していた「桜」も未収録ですし、ほとんどの楽曲がアコースティックギターとカホンのみのシンプルな伴奏でレコーディングされているので、メジャーデビュー後の感覚からするとあまりにも素朴な印象を持つリスナーも多いかもしれません。
それゆえ “名刺代わりの1作” という期待は正直あまり推奨されませんが、シンプルゆえに響くものも確かにあり、すべての楽曲がコブクロらしさに溢れた良曲です。
ライブでの印象が強い「夢唄」や「ストリートのテーマ」をはじめ所信表明のようなメッセージソングが並ぶ中で、個人的には「虹の真下」が初めて聴いた時からずっと好きです。
私的満足度:★★☆☆☆
初心者向け:★★☆☆☆
2nd Indies Mini『Root of my mind』
インディーズからの2作目。前作よりも曲数が増え、弾き語り中心からバンドサウンドでレコーディングされた楽曲がメインとなった。
また後にシングル化された「轍」「DOOR」「桜」をはじめ、インディーズアルバム3作の中ではメジャーデビュー後にリメイクされた楽曲の数が最も多い(7曲中5曲)。そのためか、インディーズ時代のチャートイン記録は無いがセールス絶頂期の2007~08年に合計8週ランクインしており、記録上は今作がインディーズアルバム最高売上となる。
個人的な話になりますが、私やたろがコブクロファンになって作品を収集していく過程で初めて手に取ったインディーズアルバムが本作でした(2009年の春ごろ)。
動機としては「桜」「轍」「DOOR」「赤い糸」と既に知っていた楽曲が4曲も収まっているというもので、“昔のコブクロ” を知るための入り口には適していたのかなと。
ただバンドサウンドで録音されているとはいえ音の迫力がいまひとつなのは否めず、メジャーでリメイクされた音源に慣れている身からすると新鮮さはありつつも見劣りする印象も。
しかし今作でしか聴けない「LOVE」「Bye Bye Oh! Dear My Lover」は後年のコブクロにはみられない曲調とアレンジで、それらを聴けるだけでもお釣りがくるような満足度です。テンポの速い「桜」も今となっては貴重ですね…!
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★★☆☆☆
3rd Indies Mini『ANSWER』
インディーズからの3作目。リリース時には翌2001年のメジャーデビューが決定していたため、本作が最後のインディーズアルバムとなる。
またインディーズ時代唯一のセルフプロデュース作品となっているが、編曲は全楽曲を宇田川妙氏が手掛けている。
メジャーシーンへの進出が決まり、前2作に比べるとカラフルで多彩な印象をもたらす今作。
等身大のメッセージソングやラブソングをメインとした楽曲の世界観に大きな変化は無いですが、サックスに土岐英史氏を招いた「心に笑みを」や初めてストリングスを導入した「そばにいれるなら…」など、明らかに音数が増していてメジャーデビュー以後に通ずるような聴き応えを感じます。
70'sディスコファンク調の「Moon Light Party!!」は後年のコブクロにはみられないアレンジメントで新鮮ですし、初めてエレキギターを前面に押し出した「神風」のフックの強さもたまりません。
有名な曲は少ないですが、個人的にとても思い出深い作品であることと、それを差し引いても非常に完成度の高い1枚だなと改めて感じます。インディーズ最終作にして名盤。
私的満足度:★★★★☆
初心者向け:★★☆☆☆
1st『Roadmade』
メジャー1stアルバム。
インディーズでの活動を経て、笹路正徳氏によるプロデュースのもとで2001年3月22日にシングル『YELL~エール~/Bell』でメジャーデビュー。最高4位を記録した同作はいきなり20万枚を越えるスマッシュヒットとなる。
次作『轍-わだち-』のセールスがその5分の1程度に留まり、満を持してリリースされた本アルバムも『YELL~エール~/Bell』の半分ほどの売上となった。「Bell」は本作には未収録。
セールスにおいては「YELL~エール~」だけが飛び抜けてしまったものの、今作を聴く限りでは同曲がずば抜けているようなイメージは無く、全体を通して等身大で温かみに溢れた良曲揃いの1枚だと思います。
確かなメロディーの良さとアコースティックを基調としたバンドアレンジはとても聴き心地がよく、90年代末からの路上ブームにてブレイクしていた19やゆずと並んでネオフォークとカテゴライズされることも多かったようですが、いわゆる “フォークソング” 的なアプローチは今作にはほとんど無いように感じられます。
そればかりか、マイナーコードを多用した幻想的な「Ring」や、バンド感の強いロックチューン「コンパス」「memory」といった型破りな方向性の楽曲も随所で目立ち、それ以外の楽曲も含めて多様な曲調・アレンジに彩られた秀作といえます。
小渕さんのソングライティングと笹路さんのアレンジは次作『grapefruits』にてより確かな完成度を見せるのですが、ひとまず今作はその前哨戦といったところで。
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★★★☆☆
2nd『grapefruits』
メジャー2ndアルバム。シングル『YOU』『風』『願いの詩/太陽』を収録。
中でも『風』は初登場25位ながら16週チャートインするロングヒットを記録し、本アルバムのセールスも前作と同程度まで伸ばした。
「新しい場所」は小渕が渡辺美里に提供した「YOU~新しい場所~」の改題セルフカバー。
前作の時点でサウンドアプローチの多様さは顕著でしたが、今作ではその方向性を踏まえた上で1曲1曲により磨きがかかった印象を受けます。
全体的にビートルズを思わせるようなバンドの躍動感が強調されていて、とても瑞々しく勢いを感じられますが、そこに乗っかる小渕さんや黒田さんによるメロディーの切れ味も抜群。
「風」「願いの詩」といったシングル曲の有無を言わさぬ圧倒的名曲ぶりは刮目に値しますが、それに追随するアルバム曲もどれも素晴らしいのです。
エバーグリーンな名ポップス「新しい場所」を筆頭に、王道的でありながら明らかに格が違う「彼女」「光」などの良メロ、後にも先にも無いほどポップに弾けた「GRAPEFRUITS DAYS」、まさかのレゲエテイスト「小渕君の犬のうた」など総じて多彩な上に曲調のメリハリの付け方までも見事。ポップスアルバムの教本といっても差し支えないレベルです。
終盤に控える8分越えの超大作「翼よあれが巴里の灯だ」が輝きを放つのもアルバム構成の妙というか、この流れだからこそ間延びせずにグッと惹きつけられる感覚がありますね。
全体を通してとても聴きやすく、それでいて聴き応えも抜群で、笹路プロデュース時代の3部作ではダントツの大名盤だと個人的には思っています。
私的満足度:★★★★★
初心者向け:★★★★☆
3rd『STRAIGHT』
3rdアルバム。シングル『雪の降らない街』『宝島』『blue blue』を収録。
セールスは前作から大幅に減少し、TOP10ギリギリで累計枚数も2021年までの長きにわたって最低売上を記録していた。
なお笹路正徳氏のプロデュースによるアルバム作品は本作が最後となる。
躍動感に満ちた前作から一転して、全体的に落ち着いた雰囲気を纏った作風が特徴的なアルバムとなりました。
敢えてインパクトの強い曲を設けず、繰り返し何度も聴けるアルバムにしたいという狙いがあったようで、確かに前後のアルバムに比べるとメロディーはおろかアレンジ自体も意図的にかなり抑えたような印象を受けますね。
ロック色の強い曲ですら「真実の口」程度で、楽曲のクオリティは安定しつつも勢いでもって引っ張っていくような曲はほとんどありません。シングル3曲も強いインパクトというよりもどこか哀愁の漂うレトロな印象を残しますし。
とはいえどの曲も粒揃いで、決して地味だからイマイチという印象を聴き手に抱かせることなく、バリエーション豊かな良曲が並びます。
ファン人気の高い「手紙」は紛うことなき名曲ですし、童謡や唱歌さながらの真っ直ぐなメロディーを聴かせる「まーだだよ」、おもちゃ箱のような賑やかなアレンジが楽しい「INVISIBLE MAN」、黒田さんの青年期の実体験を基にした傑作「背番号1」、いにしえのアメリカンスタンダードを思わせるクリスマスソング「Holy Snowy Night」、珍しく苦悩や迷いを押し出したタイトルトラック「STRAIGHT」…これだけをピックアップしても充分すぎるほどに良いアルバムです。
全面的に笹路さんが携わった最後のアルバムという側面や翌年以降のセルフプロデュースへの移行、さらには大ブレイクしていくことを踏まえるとやや影の薄いポジションに置かれがちですが、“地味”の一言で片付けてしまうには勿体ない隠れた名盤だと思っています。
私的満足度:★★★★☆
初心者向け:★★★☆☆
4th『MUSIC MAN SHIP』
4thアルバム。シングル『DOOR』『永遠にともに/Million Films』を収録。
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は馬場俊英のカバー曲、「毎朝、ボクの横にいて。-Sweet drip mix-」は所ジョージと組んだトコブクロのシングルのC/Wに収録されていた別バージョン。
『DOOR』を最後にデビュー以来のプロデューサーであった笹路正徳を離れ、セルフプロデュースへと移行した。
『永遠にともに/Million Films』がシングルとしては1st『YELL~エール~/Bell』以来のTOP10ヒット&ロングセラーを記録し、本アルバムも長きにわたるチャートインを果たした末にここまでの最高売上を達成した。
コブクロにとって重要な転機となった、初のセルフプロデュース作品。
かなり落ち着いた雰囲気で統一された前作とは打って変わって、力強いバンドサウンドを主体とした勢いのあるロックアルバムが誕生しました。
ライブツアーのバンドメンバーとともにレコーディングを行ったことも影響し、かなりエネルギッシュで熱量のこもった作風はコブクロの中でも随一。
アルバム曲を中心にいつになくアップテンポの楽曲が多いのも特徴的ですが、「永遠にともに」や「エピローグ」といった珠玉のバラードも筆舌に尽くし難く、何より再ブレイクに至ったのも納得といえるようなグッドメロディーだらけの名曲揃いです。
次回作以降で顕著となっていくスケール感を強調したバラード路線はコブクロの大きな持ち味となるわけですが、今作に準ずるロックテイスト強めのアルバムって他には意外と無く、貴重な方向性であることを再認識させられます。
いずれにせよ、今作がコブクロ全盛期の幕開けを飾る大名盤であることに疑いの余地はありません。
私的満足度:★★★★★
初心者向け:★★★★☆
5th『NAMELESS WORLD』
5thアルバム。シングル『ここにしか咲かない花』『桜』を収録。
前作時点で再ブレイク途上にあったが、初のドラマ書き下ろしを手掛けた『ここにしか咲かない花』で一気に自己最高売上を更新し、続いてコブクロ結成のきっかけとなった『桜』をシングル化したところ更なる大ヒットを記録。その勢いのままに本アルバムも難なく最大ヒットを更新した。
前作のロック路線とは趣を変え、今作では一旦原点回帰をテーマに据えたコンセプトアルバムのような仕上がりに。
文字通りコブクロの原点である「桜」も収められ、他にもストリート時代やこれまでの音楽人生をテーマにした楽曲が多い印象です。
シングル曲でみせたようなスケールの大きなバラードが比較的多く収められており、1曲目「Flag」と最終曲「同じ窓から見てた空」は7~8分台という規格外の長さに圧倒されるさまはまるで中島みゆきのアルバムのよう。
トータルでも12曲で70分を越える長尺となっており、前作までからすると一気にヘビーになったイメージもありますが、各楽曲は相変わらずバラエティ豊かな音楽性でとても引き込まれます。
華やかなモータウンビートの「待夢磨心-タイムマシン-」、60'sのロックンロールをオマージュしたような「Pierrot」、本格的なジャズバラード「Saturday」、三線を用いた黒田曲屈指の名作「大樹の影」、古いアメリカンポップスを思わせる多幸感に涙が出そうになる「NOTE」、激しいハードロック「LOVER'S SURF」、馬場俊英からの影響を感じさせるストーリーテラー的な超大作「同じ窓から見てた空」…振り返れば2nd, 3rdに比肩するレベルでバリエーション豊富ですね。
改めて深く聴き込むと、ヘビーな収録内容ではあるものの王道J-POP的なバラード一辺倒ではないことや1曲1曲の圧倒的な名曲ぶりが際立っており、やはり素晴らしいアルバムだなと感じます。
前作に比べると一発で刺さるような勢いは減退したようでいて、ベクトルの異なった深みのある名盤という印象が強まりますね。
アコースティックなコブクロをじっくりと堪能したい方はぜひこのアルバムから!
私的満足度:★★★★★
初心者向け:★★★★☆
Best『ALL SINGLES BEST』
初のベストアルバム。1st『YELL〜エール〜/Bell』から13th『君という名の翼』までの全シングル表題曲に加え、C/W曲「あなたへと続く道」、トコブクロ名義で発表された「毎朝、ボクの横にいて。」のコブクロバージョン(-Sweet drip mix-)、新曲「未来への帰り道」を収録。「轍」と「DOOR」は本作のためにリメイクした新バージョン。
大ブレイク後のタイミングでリリースされたこともあり、合計284週チャートインするロングセラーで最終的に300万枚を突破する自身最大のヒット作となった。なお日本国内で累計200万枚越えのアルバム作品はこれが最新となる。
楽曲の収録範囲はデビューからの5年間のため、「蕾」「流星」「未来」といった後年の大ヒットシングルは入っていないものの、現在でも手軽にコブクロの旨味を味わいたい人には最適な入門盤だと思います。
個人的にも2008年ごろ、親がレンタルしてきた今作を聴いたことがコブクロのディープなファンになるきっかけだったため、極めて思い入れが強くアルバムごとスタンダードと化しています。
曲順は楽曲が誕生した順に最新作から過去へと遡り、DISC-2のラストトラックが新曲「未来への帰り道」となるストーリー性のある流れがとても秀逸ですね。
「轍」「DOOR」はよりパワーアップしたリテイクでの収録ですし、機械的にシングルを放り込んだだけではない構成はベストアルバムの理想だなと。
アルバム曲やC/Wで見せているロックな側面や実験要素は今作では皆無なので、あくまでも表面的な部分をおさらいする形ではありますが、どれも文句なしの名曲揃いです。
2018年のコンプリートベスト『ALL TIME BEST 1998-2018』とは大半の曲が重複する形となり決定盤ベストとしての役目を終えた印象もありますが、CHAGE and ASKA『SUPER BEST Ⅱ』やGLAY『REVIEW -BEST OF GLAY』などと同様に上昇気流の只中でしか感じられないミュージシャンとしての勢いが詰まっているため、現在でも侮れない名作ベストではないかと。
私的満足度:★★★★★
初心者向け:★★★★★
6th『5296』
6thアルバム。シングル『君という名の翼』『蕾』『蒼く 優しく』を収録。
初のセルフタイトルを冠した作品で、これはメンバーが昭和52年生まれ、発売年(2007年)が結成9年目、本作が6枚目のオリジナルアルバムであることに由来している。
300万枚を売り上げた前年のベストアルバムの勢いのままに、『蕾』ではシングル最高売上と日本レコード大賞の受賞を果たし、本作もオリジナルアルバム最大ヒットとなるミリオンセラーを達成した。
またしても個人的な話で恐縮ですが、私やたろが小学3年生の時、初めて聴いたコブクロのアルバムが今作でして。
2008年の年明けに親がレンタルしてきたCDをカーステレオで何度も繰り返し聴いているうちに、とても印象的な作品となりました。
この時点からコブクロファンになるまでには数ヶ月のタイムラグがあったのですが、初めて知る “アルバム” という概念を通じて既に彼らの世界観に大いに惹かれていたのは確かです。
そんな思い入れの深い今作ですが、ズバリ断言してしまうと、文句なしにコブクロの最高傑作です。
個人的にはこれまでに聴いてきたこの世のあらゆるポピュラー音楽のスタジオアルバムの中でも最も好きな作品となります。
果てしないスケール拡大の末に一つの頂点に達したコブクロの勢いと、楽曲のクオリティやバリエーションが見事に噛み合った奇跡の名作…という印象さえ抱きますね。
トータル73分の超大作でありながら、間延びすることなく退屈な感覚を与えない1曲1曲のインパクトの強さが素晴らしいです。
大ブレイクの影響か、前作までにいくつもあったような日常の風景が浮かんでくる楽曲は少なく、遊び心や軽やかさという意味ではだいぶ減退したようにも感じられ、とにかく重厚で内省的な世界観が特徴づけられるアルバムでもあります。
先行シングルの「蕾」や「蒼く 優しく」に代表される、内に秘めたパーソナルな心象風景を描いた歌詞が多く、その重たさを強いメロディーやサウンド面のバラエティ感でもってバランスを取っているかのような。
アナログ盤で例えるところのA面(前半部)は割とイメージ通りのパワーバラードや爽やかな曲、フォークタッチの音像が多いのですが、B面にあたる7曲目以降がとてもバラエティ豊かです。
HR/HMっぽい強烈なサウンドの「水面の蝶」、50~60'sのアメリカンカントリーをモチーフにしたような「風の中を」、歴代の黒田曲において最もアップテンポな「月光」、集大成のような壮大ロックバラード「Fragile mind」など、多種多様な曲調で聴き手を飽きさせません。
主に前半部の王道的な名曲群も含め、まるでベストアルバムを聴いているかのような満足感が得られます。これぞコブクロ。
ただ一方でこれがとても綺麗な形である種の到達点となり、コブクロサウンドにおける一つの完成形に達してしまったのも事実かなと。
おそらく本人たちもそれを実感していたからこそ、次回作以降での試行錯誤に繋がったり、2011年の活動休止の際には限界のような感覚があったことを後に述べられたのではないかと思います。
とにもかくにも非の打ち所のない名盤ですので、コブクロを聴くならまずは今作からどうぞ!
私的満足度:★★★★★ × ∞
初心者向け:★★★★★
7th『CALLING』
7thアルバム。シングル『時の足音』『虹』『STAY』を収録。
累計枚数は前作から100万枚近く減少したものの、2009年の年間アルバムチャートでは10位に食い込むヒットとなった。
前作である種の限界に近いところにまで行き着いた影響なのか、今作では少し肩の力を抜いてサラッと聴き通せるようなカジュアルな作風へと転換したように感じられます。
1曲目を飾る「サヨナラ HERO」がいきなり激しいロックチューンであることや、中盤に佇むカントリーテイストの「FREEDOM TRAIN」、サンバ調の「Summer rain」、エレガントで洒落た音作りの「Sunday kitchen」といういつになく軽やかな並びも影響していますが、歌詞も珍しくラブソング攻めだったりと随所で新たなコブクロの世界観を感じさせますね。
正直どの曲も尺が長めなことや、リリース時に感じた既出シングルの多さから、どうにも前作までの圧倒的なインパクトには欠ける印象も否めないですが、イメージ通りのバラードやアッパーな曲も健在で概ねコブクロらしい1作だと思います。
ここで特筆すべきは、レコーディングとツアーのレギュラーメンバーにパーカッションが加わったこと。
サザンオールスターズなどでもそうですが、この音があるだけでサウンドの厚みやカラフルさ、もっと言うと楽曲のドラマティックさにも寄与するほど全体の印象がガラッと変わります。
少しオシャレにリニューアルしたコブクロサウンドの良さも存分に出た今作、本質的な魅力を実感するのにはやや時間を要しましたが、相変わらず手が込んでいて聴きどころの多い好盤です。
個人的にも初めて自分の小遣いで購入したアルバムであり、この年のツアーには家族で参加もしているので非常に思い出深い時期ですね~。
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★★★☆☆
Cover『ALL COVERS BEST』
初のカバーアルバム。ワーナーミュージックジャパンの創業40周年に因み、40万枚限定生産。
邦楽・洋楽を問わず、コブクロ自らがセレクトした25曲を新録音源で収録しており、アルバムタイトルやジャケットデザインは『ALL SINGLES BEST』を踏襲したものとなっている。
初週で売り上げた29万枚は当時カバーアルバムでは歴代1位の記録であり、瞬く間に完売したが中古市場では広く出回っているほか、「奇跡の地球」以外の24曲は現在でも配信サイトやストリーミングサービスにてラインナップに加わっている。
確か2010年の年明けに『CDTV』の特番にて「今年は二千自由年です!」との宣言があり、そこからの上半期は表立った活動も少なくずっとレコーディングに時間を費やしていたような覚えもあるのですが、カバーアルバムがリリースされるとの報せには当時とても驚きましたね~。
ただ先入観無しに実際に聴いてみると、ものすごく作り込まれていて聴き応えのある力作だなと感じた次第です。
2枚組の超大作ではありますが、普段のスタジオアルバムと基本的な構成はさほど変わらないというか、バラードはもちろんポップやロック、その他のさまざまな音楽性を包含した色彩豊かな仕上がりなので、オリジナル作品からの流れでも安心して聴くことができました。
Eaglesの珠玉の名バラード「DESPERADO」がレゲエテイストにアレンジされたのは当時から衝撃でしたが、基本的にはアレンジャーとしてのコブクロの魅力を存分に堪能できるかと思います。
その一方で選曲がかなりマニアックなのも特徴的で、メンバーそれぞれの嗜好や思い入れを重要視したセレクトなだけあって制作へのこだわりの強さが感じられます。
今となればT-BOLANもBryan AdamsもTHE BOOMも、おおよそ一般に知られている代表曲には程遠いチョイスだなと思うのですが、小6だったリリース当時は収録曲の大半を知らなかったこともあり、これらの曲が起点となって後々さまざまなミュージシャンの作品にハマるきっかけを与えてくれました。
コブクロだけに留まらない現在の音楽嗜好にも多大な影響を及ぼした1作ということで、私やたろの音楽歴の中でもこのアルバムはかなり重要なポジションにあります。
オリジナル曲だけでは飽き足りない、もしくはコブクロのルーツを深く知りたいというリスナーにはうってつけの良作ですね。
私的満足度:★★★★☆
初心者向け:★★☆☆☆
Limited Best『FAN'S MADE BEST』
初のファンサイト会員限定ベストアルバム。現在は販売されていない。
いわゆる“裏ベスト”的な位置付けで、2011~12年にかけてのコブクロの活動休止期間中に行われた公式ファンサイトでの投票企画を基に実現したものとなる。
活動再開後に新録音された「ココロの羽」「夜空」「光の粒」「そばにいれるなら」「向かい風」「Happy Birthday」はインディーズ時代からのレパートリーで、そのほとんどが本アルバムのみの収録となり現在では入手困難な音源である。
2011年8月の全国ツアー最終日をもって活動休止に入り、ファンサイト内の各コンテンツ以外では長い沈黙を貫いていた中で復帰第一弾としてリリースが発表された作品…という印象が未だにあります。
選曲はファンサイトでの投票結果を反映したものとなっており、制約はシングル表題曲以外という条件のみだったように記憶しているため、かなり集中的にメジャーデビュー前の未音源化作品に票が集まったのだと思います。
そのため、隠れた名曲がピックアップされるのみならずレアな新録音源が目白押しという大変貴重なアルバムになった…のはいいのですが、期間限定での販売だったためこれらのレアな音源を正規のルートで入手する手段が無い現状はかなり惜しいなと。
現在も新規のファンからの需要が高い作品と見受けられるため、こちらのディスクガイドでも紹介させていただきました。
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★☆☆☆☆
Best『ALL SINGLES BEST 2』
2ndベストアルバム。2006年『ALL SINGLES BEST』の続編。
ファンサイト会員限定ベスト『FAN'S MADE BEST』との同時発売で、活動再開後初の作品リリースとなった。
活動再開後、『FAN'S MADE BEST』のリリース告知から少し遅れて今作の発売が決定したのを記憶しているのですが、この時点でオリジナルアルバムも3年以上出ていなかったので、リリースにあたっては6年前の『ALL SINGLES BEST』とは異なりコブクロ側というよりもレコード会社主導のような印象を受けます。
2枚組でリリースするにはシングル表題曲が少なすぎるため、タイアップのついたC/W曲や新録音源を加えて何とか形にしたかのような。
「蕾」「赤い糸」「流星」を筆頭に前ベスト以降のヒット曲や知名度の高いナンバーを一挙に押さえられるため、非常に便利な作品ではあったのですが、2018年にコンプリートベスト『ALL TIME BEST 1998-2018』が出た以上はベストアルバムとしての役目は終えたのかなと思います。
DISC-2の流れはもし2011年末に当初の予定通りオリジナルアルバムが出ていたとしたら…?というようなラインナップになっているので、個人的にはそれを妄想するためだけに今作を聴く機会も時折あります。
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★★★☆☆
8th『One Song From Two Hearts』
8thアルバム。シングル『流星』『Blue Bird』『あの太陽が、この世界を照らし続けるように。』『蜜蜂』『紙飛行機』『One Song From Two Hearts/ダイヤモンド』を収録。
活動休止を挟んで4年4ヶ月振りのオリジナルアルバム。
翌2014年2月には「今、咲き誇る花たちよ」がリカットされ、シングル曲が過去最多のオリジナルアルバムとなった。
前作『CALLING』以来、待ちに待ったオリジナルアルバムということで心から楽しみにしていたのですが、まさかベスト収録済みのシングル4曲まで再び入れてくるとは思わず、少し驚いた記憶があります。
そのせいで決して期待値が高いとは言い難いところもありましたが、いざしっかり聴いてみると想像以上に素晴らしかったんです。
曲数は多いですが1曲1曲がコンパクトにまとまっていることや、最終曲「今、咲き誇る花たちよ」が壮大なバラードではなくフォルクローレ調の軽やかなアレンジという潔さも相まって、全体的に重厚さが軽減して聴きやすいアルバムだなと感じました。
ベスト収録済みのシングル群も今作の流れに見事に溶け込んでいて、違和感なく聴くことができます。
その一方で活動休止を挟んだ影響なのか、歌詞は『5296』以上に内省的な心象風景を綴ったものも多く、新曲にアッパーなロックチューンが無いこともあってかなりメロウな作風というのも今作の特徴ですね。
当時から久々に満足感の高い新譜という印象がありましたが、改めて聴き返しても名盤です。
私的満足度:★★★★☆
初心者向け:★★★★☆
9th『TIMELESS WORLD』
9thアルバム。シングル『陽だまりの道』『42.195km』『Twilight』『奇跡』『hana』『未来』『SNIFF OUT!』を収録。
アルバムタイトルとジャケットデザインは5th『NAMELESS WORLD』を踏まえた仕様になっている。
最高順位は『MUSIC MAN SHIP』以来12年振りに1位を逃したものの、先行シングル『未来』の大ヒットもあって前作を上回るセールスを記録した。
前作より曲数が増え、トータル75分という過去最長の超大作となりましたが、前作の反動もあって外に向いた広がりを見せる開放感に溢れたアルバムです。
制作にあたってヒントにしたという10年前の『NAMELESS WORLD』はアコースティックでどっしりとした佇まいが感じられましたが、今作は見事なまでに対照的。
タイアップ曲の多さに反して多様な曲調、攻めまくったサウンドアプローチが印象に残り、長さを感じることなく飽きずに聴き通せる好盤です。
ロカビリーテイストの「SNIFF OUT!」、打ち込みを駆使したデジタルロック「サイ(レ)ン」、EDMやファンク色を押し出した「Tearless」、布袋寅泰に作曲を依頼したロックナンバー「NO PAIN, NO GAIN」などといった新境地的な楽曲は今聴いても刺激的でどれも素晴らしいなと感じられますね。
私的満足度:★★★★☆
初心者向け:★★★★☆
Complete Best『ALL TIME BEST 1998-2018』
初のコンプリートベストアルバム。
過去の『ALL SINGLES BEST』シリーズの続編ではなく、1998年の結成起点での20周年を記念したオールタイムベストである。
2018年までにリリースされた全シングル表題曲に加え、代表的なアルバム曲やC/W、他アーティストとのコラボレーションシングルからも厳選して収録されている。
デビュー以降の全シングル表題曲が完全網羅され、更には人気の高いアルバム曲やC/Wまで惜しげもなく投入された今作は、全58曲というとてつもなく膨大な作品集となりました。
過去の『ALL SINGLES BEST』シリーズの持ち味を一挙に集約させたという意味でも決定盤といえるベストアルバムになったのではないかと思います。
とはいえそう気軽に聴ける曲数ではなく、もはや歴史書と呼んでも差し支えない資料集ですが、時間を置きながらじっくり聴いていくことで20年間の重みを存分に味わうことができます。
1曲1曲への思い入れの深さは改めて語るまでもありませんが、アルバム曲やC/Wからの選曲が必ずしも自分好みかというとそうとも限らないため、コアファンは黙ってストリーミングでプレイリストを組んで聴くのが最も適しているのかもしれません。
とはいえ、現状ではコブクロを知る上でこれ以上ない究極の1作であることは間違いないため、何から聴いたらよいか分からない新規リスナーはまず今作を手に取ってみてください!
私的満足度:★★★★☆
初心者向け:★★★★★
10th『Star Made』
10thアルバム。シングル『心』『ONE TIMES ONE』『晴々』『風をみつめて』『大阪SOUL』『卒業』『灯ル祈リ』『両忘』を収録。
オリジナルアルバムとしては前作から5年振りという過去最長のインターバルでのリリースとなった。
ベストを経ての久しぶりのオリジナルアルバムということで、『ALL SINGLES BEST 2』から『One Song From Two Hearts』へのプロセスと同様に既発のシングル群を再び大量収録したため、今作での未発表新曲はわずか4曲。
これが要因となってセールスの激減に繋がった可能性も否定できないところはありますが、収録曲自体はどれも名曲揃いという点においてさすがコブクロと思わざるを得ません。
前作の揺り戻しで再びソフトで優しい雰囲気に回帰したというのもありますが、全体的にバラードが多く刺激の少ない作風からアルバムを通して聴くのがややしんどい側面もありました。
新曲4曲、とりわけ「Star Song」や「Always (laughing with you.)」は文句なしの名曲ですし、直近のシングル曲である「灯ル祈リ」「両忘」がどちらも攻めたサウンドアレンジであることから、ベスト以後の楽曲に絞る形で『Roadmade』に倣った10曲入りのコンパクトな構成でも充分に素晴らしいアルバムになったようにも感じますね。
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★★★★☆
Best『ALL SEASONS BEST』
4thベストアルバム。
2023年にストリーミング限定で配信された季節ごとのコンピレーション『Seasons Selection』4作品を一纏めにし、それぞれに収録曲を新たに追加した企画作品。
ジャケットには “1998-2024” という表記があるものの、収録範囲は2021年の『Star Made』までとなっており、リリース時点で次のオリジナルアルバムを制作している旨が予告されていた。
2023〜24年は結成25周年のメモリアルイヤーということで、オリジナルアルバムの制作が予告されているほか、多くのトピックスが控える中で今作も同時に企画されたものと思われます。
2018年に決定盤『ALL TIME BEST 1998-2018』が出ている以上はもうどのようなベストアルバムがリリースされても越えようのないところはあり、今やストリーミングで自分好みのプレイリストを組める時代でもあるため、ベストアルバムの存在意義すらも揺らいでいるのが音楽シーン全体の現状といえます。
そんな中でリリースされた今作ですが、個人的に意外な感動ポイントがありました。
それはここ数年のライブにおけるリアレンジ展開を経たからこそ、オリジナルアレンジの魅力を再認識できたというもので、しばらく聴いていない音源も多かったためか逆に新鮮な印象さえ抱いたのです。
季節別というコンセプトはあれど4枚組という大ボリュームで相変わらず聴き通すのは大変ですが、それこそストリーミングのプレイリスト感覚で気軽に流し聴きするというのも新たな楽しみ方の一つなのではないかと感じましたね。
私的満足度:★★★☆☆
初心者向け:★★★☆☆