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よい景色がもたらす「効果」

みなさんは、無性に海を見に行きたくなることはありませんか。私はしょっちゅうあります。

特に今年のようなコロナ禍では、旅行自体が難しかったですよね。

せめて近場の海を眺めに行った。川や橋を見に行った。流れる雲を見つめた。高台から街を見下ろした。

眺望のよいところは、特になにもしなくても、気持ち良いものですよね。

でもよく考えると、どうして多くの人は、景色の良いところに出かけたくなるのでしょうか。

様々な理由があると考えられますが、一つには、トラウマ処理など、心の整理を行っているのではないか、と考えられます。

ショッキングな体験は、体に記憶されている、と言われています。恐ろしくて身が縮む、怒りに震えた体験がよみがえって心臓がバクバクする、逃げ出そうにも体がすくんで逃げられない、、、など体に反応がでることは、多くの人が体験していますよね。

事故、災害、喪失、嫌がらせ、いじめ、暴力、ハラスメント…それはあなたの体に、戦え、逃げ出せ、といった、命を守る反射として体に記憶されている側面があるのです。

自分の記憶からは消えたようでも、体が記憶しているので、同じような場面に出くわすと、思いもよらないような怒りや、パニックになったりします。電車に乗れない、緊張して話せない、声を聴いただけで嫌な気分になる、特定の人の電話に出られない、、、これらは反射のようなものなので、コントロールが難しく、皆さんが望むような落ち着いた行動ができないことがあるわけです。

心理療法では、このようなショッキングな体験…「トラウマ」を、ブレインスポッティングといった、身体感覚にフォーカスする心理療法で処理することがあります。

ブレインスポッティングは、「思い悩んでいるときに、ふと、一点を見つめて、何を考えるでもなく、ぼーっとしている。」を、治療的に再現するような技術です。フォーカストマインドフルネスと呼ばれる、トラウマ処理です。

頭を空っぽにして、自分の呼吸や、身体感覚に注意を向ける。このこと自体が非常に治療的です。

また、人間は毎日夢を見ていると言われています。意識と無意識との境界があいまいな中で見るイメージは、積み重なる日々の体験や、情緒的な「心的集合(コンプレックス)」のバランスをとるためである、とも言われます。

夢の中で見るものは、それぞれが単にそのものではなく、多義的な象徴だと考えられています。例えば海のような多量の水は、無意識の象徴と考えられています。同様に太陽は…山は…それぞれに、何かを象徴していると考えられるのです。

このように、日々の生活から離れて、頭を空っぽにして、雄大なイメージをぼんやり眺めることは、非常に心理療法的です。

現代社会に生きる私たちは、仕事や家事に追われて、ぼーっとする時間がほとんどありません。景色の良いところに出かけることは、私たちが現代的に行っている、心理的な自己治療の側面があると、私は考えています。

カウンセリングでは、ただ話しているようでも、「フォーカストマインドフルネス」が治療的に起こるように、カウンセラーは様々な技術を使っています。

もしあなたが「生活に疲れた」「やる気が起きない」、、、といったことでお困りの時は、カウンセリングがお役に立てるかもしれません。

ともかく、また旅に出かけることができる日が、一日も早く回復されるといいですね!

(矢田の丘相談室 田中 剛)




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