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暴力のサインに気づき、対応する

ひきこもりや依存症が長期化すると、時に、ご本人からの暴力を伴う場合があります。

こうなったのはお前たちのせいだ

などという場合があります。これは暴力の前兆のサインの一つです。このようなセリフがご本人から出てくる前には、典型パターンとして、以下のような経過が考えられます。

家族相談に行ってみたり、医者に連れて行ったり、いろんな支援につなげようとした。でも、関係性は悪くなるばかりだった
また暴れたらどうしよう
こんなこと思うといけないと思うけど、何か言うのが怖い。
言う通りにしておいた方が、波風たたない。私さえ我慢すればいいんだ。私たちがいなくなるまで…

ご家族の努力とは裏腹に、希望とは逆方向に進んでいるみたいです。どうしてこんな経過になったのでしょうか。

要因の一つに、ご家族に、暴力による「傷つき」があるから、と思われます。例えば、

壁に穴が開いた。その前は包丁を持ち出した。あんな思いはもうごめんだ

こんな傷付きです。暴力は「もうあんな思いはしたくない」と、あなたの体に恐怖を染み込ませます。頭では、これじゃダメだとわかっていても、回避する反応を本能のように、自動的にしてしまうのです。例えば、

これは怒り出しそうだから、秘密にしておこう。あなたも、言わないで。

といった風に、ときにほかのひとも巻き込みトラブルを先回りして、防止しようとします。これは人間の生き延びる本能のようなもので、ご家族のせいではありません。怖い事態を避けた方が、ながく生存できる、人類の知恵でしょう。

でも困ったことに、今日的な人間社会では、この生存のための回避反応がさらなる暴力関係を固定化させてしまうのです。

なだめたり、いいなりになったりして、トラブルにならないようコントロールしようとした。でもそれは、頼んでもいないのに長年お節介し続けた、と本人の目には映っています。だから「お前たちのせいだ」となるわけです。良かれと思ってやってきたのに、暴力の下地になってしまったのです。でもこれは、家族のトラウマ反射のためですからご家族のせいではありません。ご本人にも、ご家族にも、悲しいことだと思います。

さて、原因が推測できたら、今までやったことと逆方向に向いてみましょう。具体的には

①家族の恐怖感(トラウマ)を、カウンセリングや家族会でケアし、言いたいことを伝えられる元気を取り戻す。

②言いたいことは、提案型で安全に伝える。(アイメッセージの項目を参考にしてください)

③暴力がおこったら、毅然としてNOという姿勢を示す。例えば、警察官通報を行う、生活安全課に相談しておく、地域包括支援センターに相談する、など。(言いなりにならないことで支配を逃れる

④大切なものをまとめておく、いざという時に逃げる先のホテルや友人の家などを準備しておく。いつでも逃げられるようにする。(逃げていいと考えることが、適切な距離感を生む)

⑤暴力のきっかけ(トリガー)をカウンセラーなど専門家と分析し、コミュニケーションを整える。(一人で抱え込ないことで、密室的な暴力関係に風穴があく)

一人で抱え込まず、相談することから、始めてください。ご家族がご自身の安全を第一に考えることで、ご本人にとっても、よい結果がついてくる可能性が高まります。

(矢田の丘相談室 田中 剛)

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