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口腔内スキャナー、どれにしようかな?

こんにちは、Miyabiです

みなさんは口腔内スキャナー、お使いでしょうか?

患者さんの負担は少ない、印象材もいらない、石膏もいらない、院外技工士へ渡す必要がない、などの利点は分かるけど…

結局、精度ってどうなの??

そのヒントになるであろう、論文をご紹介いたします

Finish line distinctness and accuracy in 7 intraoral scanners versus conventional impression. An in vitro descriptive comparison.
BMC Oral Health. 2018 Feb 23;18(1):27. doi: 10.1186/s12903-018-0489-3.

【Introduction】

・口腔内スキャナー(IOS)は30年以上前から活用が始まり、ここ10年ほどで急速に商業利用が進んでいる

結構歴史が深いんですね

・技術のシフトと思われるが、いくつかのIOSは、コーティングの有無にかかわらず、モノクロ画像からカラー画像が取得できるようにシステムが移行している

・いくつかのこれまでの研究はISOに従った用語を用いている

 ・accuracy(正確さ)は「正確な値と合致する測定ができる能力のこと」
 を指し、ISOでは”trueness”(真度)と表現される(注1)
・precision(精密さ)は「一貫して再現される測定ができる能力のこと」
 を指し、ISOでは”precision”(精度)と表現される(注2)(注3)

注1)”trueness”(真度)とは、多数の測定結果の平均と真の値、または参照値との一致の程度、つまりは測定値のかたよりを示すものである
注2)”precision”(精度)とは、測定結果の間の一致の程度、つまりは測定値のばらつきを示すものである
注3)なお、ISOでは、”trueness”(真度)と”precision”(精度)の2つの概念を合わせて”accuracy”(精確さ)と表現している

こういった工学の用語に通じている必要があるのですね
うーん、正直難しいですわ…

・これまでの研究では、歯型表面全体の評価はしていたが、特定部分の評価はされてこなかった
・いくつかの研究では、マージンの適合性を評価していた。
 不適合の度合いは、IOSでは63.3μm(95% CI: 50.5-76.0μm)、
 通常の印象採得(IMPR)では58.9μm(95% CI: 41.1-76.7μm)
 と有意差は認められなかった。

口腔内スキャナーと、これまでの印象材を用いた印象採得では差がないようです

・しかし、歯肉縁下や出血している場合にはスキャニングが難しい

ここですよね、心配なのは

・この研究の目的は歯肉縁上および歯肉縁下の形成における、IOSとIMPRのフィニッシュラインの明瞭さと精確さの違いがあるのかを明らかにすることである
・フィニッシュラインの明瞭さは、参照スキャンと比較した視覚的明瞭さと識別可能性の程度として定義した
・フィニッシュラインの精確さは、参照スキャンの実測値との一致する能力として定義した

フィニッシュラインの”明瞭さ”と”精確さ”が研究対象です

補綴物のマージンフィットを見ているわけではありませんからご注意ください

【Methods】

・模型を使用した
・フィニッシュラインはDB(遠心頬側)とMP(近心口蓋側)は歯肉縁下に設定、それ以外は歯肉縁上に設定した

歯肉縁上と縁下、両方評価対象にしています

・使用したIOSは以下の7つ
 3M トゥルー デフィニション スキャナー(3M)
 CS3500(ケアストリーム:日本未発売?)
 CS3600(ケアストリーム)
 Dentalwings Intraoral scanner(data design:日本未発売?)
 CEREC Omnicam(Sirona; デンツプライシロナ)
 Planscan(Planmeca; GC)
 Trios(3Shape; 松風、モリタ)スキャナチップ取替え可能

日本でも販売しているものがありますね
特に下3つあたりが良く見られるでしょうか?

Triosはスキャナチップ(口腔内に挿入される部分)が取り外し可能で、滅菌もできるようになっています
それ以外はどうなのでしょうか?
(情報をお持ちの方いらっしゃいましたらお願いします)

・IOSによる模型のスキャンはそれぞれ10回、製造元指定のプロトコルに従った

・IMPRは模型のスクリューが緩む可能性があるため1回だけ、シリコン印象材を用いて行った
・石膏模型を3Shape D1000(3Shape)を用いてスキャンした

【Results】

図2
 産業用スキャナー、口腔内スキャナー、印象採得によって得られた画像である

”明瞭さ”を見ています
まずは全体からです

・産業用スキャナーは50000トライアングル(画像の細かさの数値)
Trios          23,500 
    IMPR         18,000
    DWIO        14,500
    OMNI        12,000
    CS3500    11,000
    3M              9,000
    CS3600     8,500
    PLAN          7,500  であった

・Triosが他の口腔内スキャナーより1.6~3.1倍、トライアングルが大きかった

Triosが最も、明瞭さにおいては優れた口腔内スキャナーだとわかりました
IMPRが二番手につけています


図3
 DBだけ拡大した画像である

歯肉縁下だけ、だと”明瞭さ”はどうでしょうか?

最もフィニッシュラインの明瞭さがあったのはTriosであった

・OMNIには一貫したフィニッシュラインの明瞭さが認められたが、
 丸みを帯びた部分があり、Triosよりも明瞭さが低かった

・フィニッシュラインの明瞭さが最も低かったのは3Mであった

ここでもTriosが最も優秀ですね


図4
 産業用スキャナーによる画像とIOSおよびIMPRの3次元の比較分析の結果である

 ”精確さ”を見ていますね
 図4の左上が産業用スキャナー、それとの差を色で示しています
 緑が一致度が±25μm、赤や青に近づくほど差があります

産業用スキャナーとの差がもっとも小さかったのはTRIOSとCS3600であった

・3MとDWIO、OMNIは歯肉縁下において差が多く認められた

ここでもTriosですね
CS3600は”明瞭さ”は低かったですが、”精確さ”は高いようです


図5
 DBとMPだけを拡大した3次元の比較分析の結果である

歯肉縁下に限定、精確さを見てみましょう

産業用スキャナーとの差がもっとも小さかったのはTRIOSとCS3600であり、差は±25μm未満であった

・IMPRは±50μm未満におさまったが、30~50μmの差が認められた

・CS3500は105μm、DWIOは192μm、OMNIは228μm、3Mは348μm、PLANは680μmの差が認められた

Trios、CS3600は変わらず優秀
IMPRはまずます、のようです
それ以外は…(CEREC...)

【Discussion】

・本研究の結果は、IOSとIMPRによって得られたフィニッシュラインの明瞭さと 精確さに違いがあるのでは、という仮説を支持するものではない

・本研究はvitroで行われ、歯肉溝浸出液や出血、圧排糸などの精度に不利な影響がない最適な環境で行われたものである

・よって臨床現場での研究が必要である

in vitro研究ですから、この結果をそのまま鵜呑みにして臨床応用してはいけない、と言っています

・Triosがもっとも高いトライアングル値であり、またCS3600とともにもっとも高いフィニッシュラインの明瞭さを持ち、IMPRとともにもっとも高いフィニッシュラインの精確さを有していた。

・DWIOとPLANはすべての項目で劣っていた

Triosが最も良い結果を出していますね(著者は関係者なのか??)

・IOSの精度の差は、その後の削り出しの精度とともに補綴物の適合に影響を与えるため、最終的にはその全体の精度が問題となる

【まとめ】

vitro研究なので、特に歯肉縁下の印象にはまだ不安がありますが、歯肉縁上ならいいのかな、と思います

でも歯肉縁上だけ、っていう状況は、(私は)アンレーじゃなければCRで修復しているので、あまり活用する場がないかもしれません…

咬合面の磨耗を経時的に見ていく、などの使い方もできるけど…

皆さんのご意見をいただければ嬉しいです

スキ、コメントお願いいたします!

ありがとうございました!

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