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改正民法で敷金のルールが明確化 修繕、原状回復、賃貸人の地位移転についても

こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。

【質問】
先日、借りていた部屋を引き払ったのですが、(契約書をよく見なかった私も悪いのですが)、無条件で家賃の一か月分を敷金から引くという条項がありました。
そこは諦めていたのですが、通知を見たらそれとは別に部屋の原状回復費としてさらに一か月分も引かれ、合計家賃の2か月分が敷金から引かれました。
許されるのでしょうか?

改正民法が2020年4月に施行されました

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法務省より http://www.moj.go.jp/content/001289628.pdf

賃貸借に関する今回の民法改正のポイントは3つです。
1 賃貸借継続中のルール
 ◦ 賃借物の修繕に関する要件の見直し
 ◦ 賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化
2 賃貸借終了時のルール
 ◦ 賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化
 ◦ 敷金に関するルールの明確化
3 賃貸借契約から生ずる債務の保証に関するルール

従来、敷金については民法に規定がなかったのですが、今回の改正で規定が追加されました。

民法
第六百二十二条の二 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
(以下略)

また、借主の原状回復についても明示的なルールが定められました。

(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

従来の判例や学説を踏襲していますが、まとめると、

〇 通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗や賃借物の経年変化は敷金から引いてはいけない
〇 賃借人の責めに帰することができない事由による損傷の修理費も敷金から引いてはいけない

ということになります。

敷引特約は有効か

修繕とは関係なく、予め敷金の償却を定めておく、いわゆる敷引特約については最高裁の判例があります。

消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り(中略)消費者契約法10条により無効となる
最高裁判所平成23年3月24日判決

まず、大前提としてこの判例は個人の居住用建物が目的物なので、事業用不動産の場合とは事案が異なります。

消費者契約法が適用される個人の場合で、かつ、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合は敷引特約が無効になる可能性があります。
立証責任の関係上、貸主が特段の事情の存在を主張・立証できた場合は、逆の結論(敷引特約は有効)になりえます。

本件は?

平成23年最高裁の考え方によると、敷引特約の有効性については通常損耗等の補修費用も含めて考えるべきことになります。

敷引特約が有効であると判断される場合、ある程度の補修費用は敷引金から賄われることが前提ですが、それ以上に原状回復費を要求できるのは、通常損耗を超える損傷で、かつ借主の責めに帰すべき損傷の部分を補修するのに費用がかかった場合ということになります。

印象としてはかなり高額ですが、事業用でしょうか?という気もしますが、納得できなければ弁護士に相談されることをお勧めします。

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