日常のいろんな瞬間に、その人だけのキャラクターがあらわれるもので、きっと事情や原因があるだろうなぁって考えるのが楽しい。つまり人間がそれなりに好きってこと。
○電車・内(朝)
座席に座って僕はぼんやりと車内を眺めていた。
電車が駅で止まり、人が乗りこんでくる。
(わりと人がでてるよな……まぁ、他人のことは言えないか)
それぞれに事情があるし、目くじらを立てるもんでもないと考えていたら……
僕「!」
(ま、マジか!?)
女子高生が僕の目の前の席に座ろうとすると、急に割り込んできたおじさんが強引に座った。
(どうしても端っこの席に座りたかったんだろうけど……)
席を取られた女子高生のほうは、特に表情を変えずに空いている席に座る。
(こっちのほうが大人。どうなんだろう?自分の子供ぐらいの人から席を奪う心境ってのは)
どんな人物かが気になり、僕は目の前に座ったおじさんを眺める。
スーツを着て、メガネをかけ、少し白髪まじりの普通の人。
特段悪い人には見えない。
むしろちょっと臆病で、日々を大人しく過ごしてそうな雰囲気。
(席を奪うようには見えないタイプだな)
おじさんは僕と目があうと、ばつが悪そうに目を逸らし、スマホに集中し始める。
(あー、ダサいことしたなって自覚はあるんだ)
だったら最初から席を奪うような振る舞いをしなければいいのにと僕は思う。
(歳を重ねると他人からどう見られるか気にならなくなってくるけど……恥ずかしくない人間でいたいもんだな)
一人でうんうんと頷き、座席にもたれかかる。
目の前のおじさんが女子高生から席を奪うほどの事情……。
それはなんだろうか?と考えながら、僕は電車でのひとときを過ごしていくのだった。
〈終わり〉
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