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出し入れ

向こうでいつものアラームが鳴っている。
 月曜から金曜まで、朝の4時にアラームが鳴るようにiPhoneをセットしている。そのあと5時にも鳴る。枕元にiPhoneを置いておくとアラームで眼を覚ましてもそれを止めてまたすぐに寝てしまう。なのでiPhoneは寝室と一続きになったリビングのソファの上に置いて寝るようにしている。
 だいたいは4時のアラームで起きたら二度寝はしないでそのまま起きているので5時のアラームは予備としてなのだが、昨夜は妻と久々に出し入れをして夜更かしをしたのでまだ眠かった。アラームを止めたらすぐにまた寝ようと立ち上がってから裸のまま寝ていたことに気付いた。出し入れ直後はまだ身体が火照っていたのでそのまま寝てしまったのだ。
 4月の朝は肌寒かった。素早くiPhoneのアラームを解除してベッドに戻った。寝る時には一緒に裸のままで寝たはずの妻もいつの間にか下着を着けていた。寝る時にした腕枕も眼覚めた時には多少の体勢の変更こそあれ続行されていたというのにいつの間に着たのだろう。下着を着るのも億劫だったので妻の背中に抱きついてもう一眠りしようと思ったが下着の妻は冷えていた。
やはり下着だけでも身につけようと探し始めたが、パンツだけが見つからなかった。布団に潜り、妻の身体を左右にずらしたら妻は吐息を漏らしたが、どこにもパンツは見当たらなかった。しばらく探した末に、隣に並んでいる娘のベッドの枕の上で見つけた。パンツは娘の枕の上に丁寧に広げて置かれていた。その大きさが娘の枕とほぼ同じサイズなので、しばらくそれはただの枕カバーに映っていた。娘は上下逆さまに寝ていた。枕を避けるように左右に脚を広げている娘に申し訳なく思いながら、パンツを枕の端からゆっくりと剥がした。娘も妻も動かない。寝息すらも聞こえてこない。パンツを履いて眠った。
アラームが鳴った。5時のやつだ。わたしは布団から出てソファのiPhoneのアラームを切った。裸で震えながら布団に戻った。

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