災害被災地における感染症対策の取り組み私案

梅雨に入り、新型コロナウイルス感染症のリスクがある状況での災害対応という頭のいたい状況がいつ生まれるとも分からない。もし地元で災害が発生したら、どういう方針に沿って物事を検討すれば良いのか、大雑把な目指すべき姿とそのためにやっておきたいことを自分なりにイメージができてきたので備忘録かねてこちらに記録
メモ代わりなので箇条書きっぽいのはご容赦を

目指すべき姿(被災地における感染症対策の方向性)

(現状認識)
・各世帯独立した自宅で生活する日常でも感染症の拡大を完全に阻止するのは難しい
・設備や装備がそろい知識を持った人達が取り組んでいる病院内ですらクラスターは発生することがある
・災害により世帯毎に安心できる生活空間が奪われ、感染予防に必要な設備や装備などが不足する被災地内で一時的な共同生活(避難所など)に移行せざるを得ないのが災害
・さらに、被災の衝撃や生活環境の変化により心身共に体調が不安定になりがちになり、抵抗力が落ちるのが被災者

(目指すべき姿 私案)
つまり「被災地で感染症を発生させない」は<目指したいけど無理だろう>
無理な目標を立てても達成できないだけ。では、達成できそうな目標はなにか?

「被災地で感染症が発生しても【広げない】」

ならどうだろう?

【広げない】とは具体的にどういうことか?

・感染疑い者(発熱者)がでたら速やかに医療体制にアクセスし、適切な診断(PCR検査)と治療を受けられることにより新型コロナ感染の有無を確定し、濃厚接触者の範囲をできるだけ狭く留めること

・1人の感染者が出ることは被災地にとって大きなインパクトはないが、その1人の感染者により何百人もの濃厚接触者が出てしまうことや、数十人の感染疑い者(発熱者)が出てしまうこと、クラスターが生まれてしまうことは、即、被災地の医療体制の崩壊に繋がりかねない

・感染確定者(PCR陽性者)が複数人いても同室で治療が可能だが、感染疑い者が複数人でてしまうと、(症状の有無問わず)陰性判断ができるまで全員を個室管理する必要が生じ、一気に被災地内の医療体制への負荷が上がる

・そうなると被災地内の医療崩壊が生じて新型コロナ以外の治療も不十分になり、災害関連死を誘発する可能性が高まる

つまり、【広げない】とは、万一被災地内に感染者が出ても
【濃厚接触者と判定される人を極力減らす】
【濃厚接触者を速やかに特定して本人に伝え、(症状の有無にかかわらず)自己隔離型の避難生活を送ってもらう】

こと

濃厚接触者と判定される人を減らすには

新型コロナウイルス感染症では、発症前後がもっとも感染力を持つ。症状のない段階でも感染力がある。
飛沫感染(会話)と接触感染(同じものを触る行為)が主たる感染ルートだが、糞便からウイルスが検出された事例もあるのでトイレや嘔吐物もリスクと考えておくべき

そういう感染リスクから、濃厚接触者の定義は以下のようになっている

『濃厚接触者の定義』
患者(確定例)の感染可能期間(症状を呈した2日前から隔離開始までの期間)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者
①患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等)があった者
②適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
③患者(確定例)の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
④その他:手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策無しで、患者(確定例)と15分以上の接触があった者
(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)

・濃厚接触者の定義に当てはまる人が少なくなる様な避難生活を目指す

具体的には被災者一人ひとりが「同居あるいは長時間の接触」と見なせるひとをできるだけ絞り込んだ避難生活を送るにはどうしたら良いか?

避難様式の分散化(多様な避難の呼びかけと把握)および避難所の小規模化

避難生活集団単位を小規模化することで、万が一感染者が出ても濃厚接触者数が減る
・大規模避難所ではなく、家族のみによる在宅避難/自家用車を使った車中避難/顔見知った少数世帯で寄り集まった小規模(自主)避難所/個室対応が可能なホテルや旅館を利用した避難所/親戚宅などを頼る疎開型避難など、避難様式を多様化/細分化することが有効
公設避難所はできるだけ短期間(可能なら命を守るための緊急避難時のみ)で切り上げ、可及的速やかに見なし仮設など世帯単位の避難生活様式に移行することを目指す
(集団生活の日数が長くなればなるほど避難所内で感染者が出るリスクが高くなり、一気に被災地内の医療を逼迫させる状況が生まれる可能性が高まっていく)
・ただし、細分化により被災者の把握/支援は難しくなるので、新しい被災者把握方法/支援方法を想定していくことが大切

(行政や自治会だけでは取りこぼれてしまう被災者たちと行政を始めとした支援者をつなぐこの取り組みの中でボランティアやNPOの活躍できる余地が新たに生まれるかもしれない)

・以前より避難所だけでなく在宅/車中避難者をどうやって支援するのか? という課題に取り組んでいる三重県では避難所を「避難支援拠点」と考えて地域の被災者全体を支援しようとしていたので、それを更に拡張して考える

なお、避難所での3密回避や感染症予防の取り組みは、特に換気と手を触れる場所の数時間おきのこまめな消毒、洗面/トイレの対応が鍵になると思われる

濃厚接触者を速やかに特定して本人に伝えるには

・災害現場の中でマンパワーで濃厚接触者調査を実施するのは非現実的(保健所職員の業務量も激増している中で人手を割けない)
・厚労省が出した「濃厚接触アプリ」を被災者全員に登録してもらうよう呼びかけるなど、ITを活用した通知方法を活用できないか?
・避難所などの自主運営を促すことで、自分たちで名簿作成(避難所内の生活位置情報も含む)を行うことで、避難所内で感染者が出た場合の濃厚接触者洗い出し(というより、非濃厚接触者の除外による健康観察隔離者数の絞り込み)ができるか?
・避難所内での感染者や疑い者、濃厚接触者に対する偏見や差別を予防する措置も今から考えておく必要がある

自己隔離型避難生活の送り方

・三重県内であれば多くの地域では車中避難により、ある程度の自己隔離は可能か?
・その場合、避難所併設のグラウンドなどを使うなら専用の手洗い場やトイレの確保が必要になる
・避難所内で隔離部屋を作る場合、グリーンゾーンとレッドゾーンの区画分けは専門家のアドバイス必要
・感染疑い者は一人ずつ個室隔離必要だが、実現可能か?
・自宅に戻れるなら隔離生活はできるが、衣食のサポートや医療支援をどう実施するか準備が必要

まとめ withコロナ時代の新しい避難・復旧様式を生み出そう

様々なところで避難所内での感染予防の取り組みは始まっているが、そもそも今までのような大規模避難所で集団生活を送りながら支援を集中投下して復旧に取り組むという避難・復旧様式では、1人も感染者を出さないのは現実的ではないと感じる

「感染者を出さない」ではなく、【感染者が出ても広げない】【感染者が出ても被災地医療を崩壊させない】ための取り組みを、より一歩引いた、大きな視野から準備しておく方が、より安心して避難生活を送ることができる(被災地内での散発的な感染者がでることは容認するが、一気に広げない)

鍵はおそらく避難・復旧生活を「小規模化」「分散化」すること

実現させるには
・避難所運営マニュアルで想定している「避難支援拠点」の考えを拡張すること
可及的速やかに見なし仮設などに生活の場を移行してもらえるよう災害初期(災害前)から準備すること
・そういった細分化された被災者達を支援できる体制を災害前から想定して作り始め、発災初期から立ち上げること

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