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世界の中の日本でコロナ禍を生きる、考える

世界を襲う驚異の伝染病

当時アフリカや南米を旅していた僕は、街行く現地の人々から"Hey, Chinese"を枕詞に"Corona virus"と声をかけられる。昨年12月に、中国武漢市で発生したことに端を発し、世界中にその猛威を奮っている新型コロナウイルス COVID-19のことだ。

「いや、自分は中国人じゃなくて日本人であって、日本ではまだ全然コロナは流行ってないし、そもそも7ヶ月くらい日本にいないし…」

といった考えをぐっと胸に閉じ込めて、さも何も気にしていないかのような毅然とした態度を取り繕い、胸を張って笑顔を振りまいて歩みを進めるのだ。彼らから見たら珍しい東洋人の一人としてグルーピングしてるにすぎないんだろうなと思いながら。

しばらくった2020年3月、予定通りに世界一蹴の旅を終え日本に帰国した。すると、事態は深刻な状況に陥り始めていった。
帰国して1週間もしないうちに、アメリカでの感染者が爆発的に増加し、ロックダウンを断行。その後、日本でも感染者が増大するようになり、首相から緊急事態宣言が発令されるまでに多くの時間は要さなかった。

それから、僕たちはこれまでとは違った”新しい生活様式”を始めることを余儀なくされた。このウイルスの恐ろしいところは、死に至らせさえするその症状の重さと、驚異的なまでの感染力だ。それにより、僕らは感染を抑えることを第一とした行動を取らざるを得なくなり、多くの社会的な活動が停滞し、甚大な経済的損失も被っている。

宣言発令後まもなく、パソコンの前にいながらして大学の講義を受けられる仕組みが整い、”新しい授業様式”を経験した。非常に物足りなかった。もちろん移動を伴わずどこでも授業を受けられるスタイルというのは便利で効率的ではあるのだが、これじゃなかった。

Nice to e-meet you しかしたことのなかった新入生の大学同期と「大学生活楽しみにしてたのにね」と愚痴をこぼしあったりもした。

これまでの日常にあった何気ない人との関わりや些細な娯楽や外出がどれだけ人生に彩りを与えるものだったかを思い知った。

Jリーグやプロ野球の中止、各種イベントの中止など、多くの楽しみが失われていった。5月半ばには夏の甲子園の中止も決まった。この舞台のためにかけて戦ってきた球児たちに想いを馳せて心を痛めたりもした。そんな心配とは裏腹に、メディアから伝えられてくる甲子園球児たちの前向きで力強い言葉には、なんとも形容し難いエネルギーをもらっていたのだが。YOUTUBEで配信された好きなミュージシャンのライブ映像もまた素晴らしくエネルギーに満ち溢れたものだった。

そして緊急事態宣言が解除された今、少しづつ日常が取り戻され”with コロナ”の時代へと歩み出そうとしている。
そんな中、遠く離れた地球の別の部分、アフリカではどのような状況に置かれているのか、共有させてもらいたい。


アフリカとコロナ

僕がアフリカにいたのは去年の11月から今年の1月までの3ヶ月弱だ。ケニアとルワンダでSOLTILO AFRICA DREAM SOCCER TOURという本田圭佑選手主催のサッカーボランティアの手伝いをさせてもらっていた。

そこで一人のケニア人と出会った。アフリカ最大のスラムと言われるキベラスラムに住んでいる人物だった。サッカーコーチである彼は見ず知らずの僕にもとても親切に関わってくれ、彼の家にも招いてくれスラムのあれやこれまで丁寧に教えてくれた。

そんな彼とは、ケニアを発った後にも定期的に連絡を取り合っており、今でも週に数回電話をするほどの仲である。

日本での事態も深刻化してきた4月の頃、彼と電話をしていた時に、コロナの状況を尋ねてみた。
彼の住むスラムの衛生環境は優れたものとは言えず、多くの人々が密集して暮らしている。一度ウイルスの魔の手にかかれば、たちまちその影響が広がっていくだろうということが容易に想像できていた。

そんな彼から返ってきた言葉がこれだった。

「俺たちは病には殺されないが、飢えに殺される」

当時、ケニアではそれほど多くの感染者は確認されていなかった。これは政府が早い段階で打った感染拡大防止策が功を奏したからであった。
しかし、それに伴う副作用もあった。それはロックダウンがスラムに住む人々から職を奪うということだ。こうした地域に住む人たちは定職についておらず、その日暮らしの生活を行っていることが多い。そんな彼らにとってロックダウンは致命的。経済活動の停止を余儀なくされて、政府からの補助も期待できず、収入源を完全に失った彼らは生きる道を失おうとしていた。

そんな人々のために、友人はマスクや生活物資の配給活動をしていた。サッカーコーチである彼は同時にAgape hope for KiberaというNGOの団体にも関わっており、スラムに住んでいながらも、コミュニティのために日々勤しんでいた。

日本からは想像もつかないような環境や経済状況の中で苦しんでいる人々の存在を知り衝撃を受けた。
僕の友人やそうした人々のために何かできることはないか、と考えながら過ごすようになった。その数日思いもよらぬ話が舞い込んできた。A-GOAL Projectという支援プロジェクトの話だ。

https://a-goal.org/

プロジェクトの詳しい概要はリンクから確認してもらいたいが、簡潔にまとめると、「コロナ禍で困っている人たちと、その力になりたい日本の人たちを、地元のスポーツクラブが結びつける」といった活動だ。地域に強いコネクションを持ったスポーツクラブが、日本からの支援物資を中継して、支援を本当に必要としている人たちに届けるという“ハブ”の役割を果たすことからLOCAL SPORTS HUB PROJECTとも呼んでいる。

渡りに船だった。話を聞いてすぐに「このプロジェクトと友人のサッカーチームを結びつけたい」と思い、5月末からプロジェクトの一員として関わらせてもらうこととなった。

そしてこの前の水曜日、ついにプロジェクトと僕の友人のチームを結びつけた支援を実施することができた。

今回、僕の友人のチームに渡った5万円分の支援物資は50の家庭に届き、2週間ほどの生活を可能にしてくれるとのこと。


おわりに

僕たちの生活から多くの”当たり前”を奪っていった新型コロナウイルス。

その影響下に生きる僕たちは、多くのことを考えさせられている。最近はあまり見かけなくなったが、ついこの前まではさまざまなところで#Black lives matterというタグが紐づけられた投稿が見られていた。
この二度と起きてはならない残忍な事件と、それに伴ったデモを始めとした世界全体の大きなムーブメントもまたコロナ禍の一つなのでしょうか。

人種差別問題については、あれこれ意見できるほど学も器量もないと思っていたので、SNS上に流れるさまざまな言説を横目に沈黙を貫いていた。けれど、せっかくの機会なので昨年の世界一周を通して感じていたことを一つだけ。

それは、「人種観というのは、自分が思っている以上に深く植え付けられている」ということ。
人は時に大きな主語に自分を結びつけることで自分の存在を確認し、安らぎを得ようとする。
島国日本にいては、こうして人種を意識することは少ないかもしれない。けれど、昨年初めて国外で生活した僕は、あらゆる場面で自分の中に潜んでいた無自覚の人種観に気付かされた。

ある特定の集団に対する劣等感を抱いたことで、別のある特定の集団に対してとっていた傲慢な態度に気づかされた。恐ろしいのは、こうした優劣観は意図して抱くものではなく、気付かぬうちに染み付いているものだということだ。その原因は実に色んなところに、そして身近なところに潜んでいるようにも思える。

なので敢えて言い切る。
「人種観を取り払うことは不可能だ」と。

けれど、それを自覚した上で
「差別をなくし共生することはできる」
ということもまた強調しておきたい。

無自覚な人種観を自覚することが、差別問題をなくすことの第一歩になるように思える。意識的な差別は言語道断だが、無意識の、無知による差別もまた恐ろしい。
異国の地に生きる”外国人”はそれだけセンシティブになるものだとも思います。


だから僕は、「みんな同じ人間だから」というロジックよりも、「みんな違う人間だから」というロジックの方を好みます。


「みんな違う」けど、同じ地球に住む人間だから歩み寄って助け合っていきたい。


それが遠く離れたケニアの人だって良いし、もっと身近な人でも良いです。

手の届く範囲の人のために自分ができることをする。去年ある人に教わってとても大切にしている考え方です。



この支援プロジェクトは単発的なもので終わらせるのではなく、地域のスポーツクラブとより強固な関係性を築き上げると共に、さらなる支援先へと拡大していく予定です。


まだまだ未熟な自分ですが、国際協力の場に長く携わる方々や、海外でのビジネス経験が豊富な方々など多くの方々と共に活動させていただいている中で、たくさんのことを勉強させてもらいながら活動しています。

本プロジェクトには総勢70名ほど、高校一年生までもがプロジェクトメンバーとして参加しています。まだまだメンバーを募集していますので、もし興味がある方がいましたら是非ご連絡ください。


また、これまでに多くの方からのご協力をいただき、クラウドファンディングを合わせて60万円ほどの資金をいただいております。けれど、生活に困窮している人々の手助けをするには、まだまだ多くの資金が必要になります。

こちらのクラウドファンディングも、残すところ15日。目標金額まで残り35万円となっています。

僕としては日本とは違った状況でこのコロナ禍を生きる人たちの様子を知ってもらえるだけでも嬉しい限りです。よければこのプロジェクトをより多くの人に知ってもらえるよう、宣伝、呼びかけなどご協力いただきたいです。

どうぞよろしくお願いします。


最後までご覧いただきありがとうございました!