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【詩】血と内臓とせかい

血と内臓がある
眼球がある
等しく世界を見ている

ならどうして

空間に位置している
特定の座標を占めている
身体は重力におさえられてここに
沈まない ここにいる

様々を認識している
五感と脳があるから
当たり前なのに
いっしょなのに

ならどうして

いやです 汚いです
決めないでください
空模様変わらないで ずっと晴れてて

鼻の奥 溜めこんだ涙
血と内臓 空間とわたし
歩いて笑ってしゃべる

たべる ねる うれう

起きて 素直で なんでも受け取れる
静かなあの時間

いかないでください

次々と 私が蓄積した
世界への 自分への 思い違いが構築され
夏の朝のように 騒がしくて

ノイズ 白黒の風
波に砕かれる砂利

消化不良の昨日
沢山の今日
遠ざかる今

曖昧と前後と不確かな連続性の自分
私は小さい頃の
あの金属時計の
夜中の音
目が覚めた
あの瞬間の
収縮する静けさ
擦れる布団
上がる体温
エアレーションのぶくぶく
判別不能の耳鳴り
澄んだ冬の幻聴

あの狭い一瞬のまどろみの中で
ずっと泳いでいたいだけの小さな金魚

血と内臓
認識する私
こぼれない涙

夜の海に浮かぶ巨大なコイの死骸
踵を返したあの日の
家の電灯は

妙に白く 輝いていた

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