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第58回:改革の流れを読み、今後に備える‐薬剤師によるOTC医薬品販売規制緩和の事例-

1)資格による参入障壁がもろくなってきた

「資格を持っていれば仕事に困ることはない」と親や先生に言われてきた人も多いのではないでしょうか。

そんな風に言われてきた理由は、その資格を持っている人にだけ許される業務が存在することにあります。安全・安心の観点から特定の作業や仕事を行う職場には、資格者をおかなければいけない決まりがあることも、資格者の希少性を高める要因になってきました。

医療者の資格取得者はその恩恵を最も受けてきたといってもいいでしょう。
資格者にのみ許された独占業務で有名なものは診療です。これは医師免許を持っている人にだけ許される行為で、ブラックジャックのように無免許で医療行為を行うことは医師法違反の犯罪となります。

医師や薬剤師の配置がなければ、営業や販売ができない業態も多くあります。ドラッグストアなど医薬品を販売する店舗は、薬剤師などの有資格者が実地で一般用医薬品の管理をすることになっています。

例えば、第一類医薬品については、そのドラッグストアで働いている薬剤師が購入者の対応をすることが決められています。第一類医薬品というのは、医師の処方箋なしに購入することができる一般用医薬品のうち、もっともリスクの高い医薬品のことです。ガスター10やロキソニンSなどが該当します。一般用医薬品には、他に第二類医薬品、第三類医薬品があります。

「現在薬剤師が不在のためこの医薬品は販売できません」という札が医薬品の棚にかけられているのを見たことがある人もいるかもしれません。これは、その店舗で働く薬剤師がそのドラッグストアにいないために、医薬品があったとしても、利用者はその医薬品を買うことができないという状況を意味しています。

■医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
(店舗の管理)
第二十八条 店舗販売業者は、その店舗を、自ら実地に管理し、又はその指定する者に実地に管理させなければならない。
2 前項の規定により店舗を実地に管理する者(以下「店舗管理者」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、薬剤師又は登録販売者でなければならない。
(一般用医薬品の販売に従事する者)
第三十六条の九 薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、厚生労働省令で定めるところにより、一般用医薬品につき、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者に販売させ、又は授与させなければならない。
一 第一類医薬品 薬剤師
二 第二類医薬品及び第三類医薬品 薬剤師又は登録販売者
(一般用医薬品に関する情報提供等)
第三十六条の十 薬局開設者又は店舗販売業者は、第一類医薬品の適正な使用のため、第一類医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
■医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)
(一般用医薬品に係る情報提供の方法等)
第百五十九条の十五 薬局開設者又は店舗販売業者は、法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供を、次に掲げる方法により、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に行わせなければならない。
一 当該薬局又は店舗内の情報の提供を行う場所(薬局等構造設備規則第一条第一項第十三号若しくは第二条第十二号に規定する情報を提供するための設備がある場所若しくは同令第一条第一項第五号若しくは第二条第五号に規定する医薬品を通常陳列し、若しくは交付する場所又は特定販売を行う場合にあつては、当該薬局若しくは店舗内の場所をいう。次条において同じ。)において行わせること。

これらの規定は、医薬品の副作用や相互作用のリスクの即時の情報提供の観点のほか、ドラッグストアなどにおける医薬品の適正管理の責任を有資格者に求める目的がありましたが、2022年12月のデジタル臨調(デジタル臨時行政調査会)の会議資料で2024年6月までにこの規定の見直しについて「検討し、結論を得る」ことが明らかにされました。

■デジタル原則を踏まえた工程表の確定とデジタル規制改革推進のための一括法案について
●一般用医薬品の販売等を行う店舗における薬剤師等の常駐:2024年6月まで
(参考)店舗販売業の施設数:約3万施設(2020年度末時点)
店舗販売業の許可要件として、有資格者等の設置を求めている現行制度について、デジタル技術の利用によって、販売店舗と設備及び有資格者がそれぞれ異なる場所に所在することを可能とする制度設計の是非について、消費者の安全確保や医薬品へのアクセスの円滑化の観点から、検討し、結論を得る。

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c43e8643-e807-41f3-b929-94fb7054377e/573e5c21/20221221_meeting_administrative_research_outline_01.pdf

デジタル臨調全体のトーンは、デジタルの活用を前提としていないアナログな規制を一括で変えていく方向となっています。デジタル改革は菅政権からの官邸の関心事項でもありますし、何も変わらないことはないでしょうが、制度の設計によっては、様々なパターンが考えられそうです。

規制改革側の人は、政府が方針を示したことで安心しているかもしれませんし、反対の立場の人は気落ちしているかもしれませんが、大切なのはこれからどのような制度設計がされるかです。この政策に少しでも関係する人は、ありうる政策の方向性と論点を先取りして、自身があるべきと考える政策が実現されるようなロジックを作っていかなければいけません。
今回は過去の政府会議における議論を踏まえながら、ありうる政策の方向性と、その論点を明らかにしていきます。

(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)
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2)規制改革側が想定している制度の仕組みはこれだ

実はこのテーマは、12月のデジタル臨調で取り上げられる前から、議論の俎上に上がっていました。規制改革会議のWG(ワーキンググループ)です。

2022年3月のWGでコンビニチェーンのローソンが提案した内容は、事前に販売許可がある店舗(A社)で薬剤師などと相談の上購入し、受け渡しは薬剤師などが介在しないコンビニなどの別の店舗(B社)がA社の委託を受けて行うという制度改正です。A社が医薬品の管理に責任を負うとする提案です。

実はローソンは2020年にも同様の提案をしていましたが、その時の内容と比べると、医薬品の管理の責任を薬剤師が在籍するA社に負わせ、医薬品の品質管理をデジタルで行うことを明確化するなど、2022年3月はより踏み込んだ提案内容となっています。

この提案内容については2022年6月に閣議決定された規制改革実施計画の中で、2022年度中に検討を開始することが明記されました。
デジタル臨調の資料の内容は、この規制改革実施計画の記載と大きく変わるものではなく、むしろ、2024年6月までに結論を得る、というデッドラインが決められたことに意義があるといえそうです。

■2022年規制改革実施計画
厚生労働省は、医薬品医療機器等法における店舗販売業の許可要件として、特定の場所に位置する店舗に陳列設備、貯蔵設備などの構造設備と、登録販売者などの有資格者の設置を求めている現行制度について、デジタル技術の利用によって、販売店舗と設備及び有資格者がそれぞれ異なる場所に所在することを可能とする制度設計の是非について、消費者の安全確保や医薬品へのアクセスの円滑化の観点から、検討し、結論を得る。
(令和4年度検討開始)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/220607/01_program.pdf

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