第45回:政策提案の実現可能性を爆上げする政策のモメンタム
ビジネスでもなんでも、自分たちが目的に向かって最善の策をとることはもちろん大事ですが、時流やブームに乗るとマーケット自体が大きくなるので、うまくいきますよね。実は、それと同じようなことが政策の世界にもあるのです。
これを「政策のモメンタム」と呼ぶわけですが、民間から政策提案をするのであれば、これを活用しない手はありません。では、どのような時に政策のモメンタムは起こるのでしょうか。今回の記事を読むことで、きっと政策の世界の時流をつかめるようになると思います。
1.こども庁新設などの組織再編で政策は新フェーズに
こども家庭庁が2023年4月にたちあがります。現在は内閣官房に置かれたこども家庭庁設立準備室を中心に立ち上げ準備を行っているところです。
こども家庭庁は、厚労省や文科省などこども政策に関わる関係省庁とも連携する、まさにこども政策の指令塔です。
設立に合わせ、政策も大きく前に進みます。新規のものや、これまでの取組の強化なども数多く実施されます。
学校や保育施設で働くときに、わいせつなど性犯罪を行った経歴がないかの証明を求める仕組み(日本版DBS)、こどもの死亡を一元的に分析し、将来同じようなことが起きないような予防策を検討する仕組み(CDR)、困っているこども(やその親)が役所に来ないと支援を受けられない仕組みではなく、行政側からそのようなこどもに接触する仕組み(プッシュ型支援)のためのデジタル基盤整備などがその代表です。
最近の新組織立ち上げのもう一つの例として、厚労省の医薬品産業を振興する部局の再編もありました。医療政策を所管する医政局の中にある経済課と研究開発振興課は、それぞれ医薬産業振興・医療情報企画課と研究開発政策課になり、更に新しい担当審議官ポストが新設されています。また、医薬品産業政策を考えるための新しい省内会議も立ち上がろうとしています。
2.政策が加速するモメンタムを理解しよう。新組織設立はその一類型
今までテコでも動かなかった政策が大きく動く瞬間があります。政策が大きく動く兆しを「政策のモメンタムがある」と霞が関では呼んでいます。モメンタムというのは「勢い」という意味ですが、政策のモメンタムがあるときは、予算がついたり、新しい法律ができたり、社会を大きく変えるきっかけにもなります。
新組織の設立は、政策のモメンタムが高まるタイミングの一つです。新しい組織について「単なる看板の架け替えだ」、「やってるふりだ」などと、冷ややかな目で見る人も多いですが、決してそんなことはありません。新しい組織ができるということは、その組織が関係する政策を前に進めるという政権の意思表示です。予算増や法案提出に加えて、役所内の人員体制もあつくなります。政府の肝入りの政策を実現する組織なので、各省庁から優秀な人材が送りこまれます。新しい政府の会議が立ち上がることもあります。
新しい予算も人員もつくので、これまでだったら「良い案だけど、予算がないんだよね。。。」と言われてしまうようなものも認められる可能性が大きく高まります。つまり、民間サイドの提案がよいものであれば、受け入れられやすい状況となるのが新組織設立のタイミングです。
つまり、社会を変えたいなら、世論を盛り上げるなどして意図的に政策のモメンタムを起こすことも大事ですが、自ら仕掛けたものでなくても政策のモメンタムが生じていることを察知し、迅速に政策提案につなげることも有効な手段になるのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?