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青山泰の裁判リポート 第4回 友人の10歳の娘に性的暴行を繰り返した男。卑劣すぎる犯行は、8年後にようやく発覚した。

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2023年4月10日、東京高裁720号法廷。
被告席に座ったのは、濃いグリーン色のセーターに白いシャツ姿の中年男性。被告の青田康司(54歳・仮名)は大柄で、眼鏡をかけたロマンスグレーの紳士のようにも見えた。

青田被告は、一審で懲役5年6月の判決を受けたが、判決に不服で控訴していた。罪名は強制性交等罪(※犯行時の罪名は強姦罪)で、被害者のA子さん(当時10歳・小学4年)に性的暴行を加えた容疑だ。

※2017年7月に施行された「強制性交等罪」は、それまでの「強姦罪」で適用外だった口腔性交(オーラルセックス)や肛門性交(アナルセックス)にも適用されることに。被害者が13歳未満の場合は、暴行や脅迫がなくても、罪が成立する。法定刑は5年以上の有期懲役刑。

青田被告は、「A子さんの将来を考えて、性交はしなかった」と主張し、事実誤認と量刑不当を理由に控訴していた。
青田はA子さんの父親の友人で、A子さん宅でよく一緒にお酒を飲む仲だった。A子さんの父親は酔うと寝入ってしまう体質で、青田はその間に犯行を繰り返していたという。A子さんが青田になついていて、その幼さと無垢(むく)さに乗じて、“悪行”を続けていたのだ――。

青田被告は「同じことを10回くらいやった」「性欲が抑えきれず、自分の欲求を満たすためにやった」と供述。
犯行の様子を携帯電話の動画や静止画で撮影し、ハードディスクに保存していた。

「お父さん、お母さんに言っちゃ
ダメだよ」と口止め

事件から8年後、青田の妻が偶然に画像を見つけたことで、犯行が発覚した。
夫を問い詰めたところ犯行を認めたため、A子さん家族に謝罪。犯行を初めて知ったA子さんの母親が、「許せない」と警察に相談したのだ。

警察が家宅捜索したとき、青田によってデータはすでに消去されていた。しかし警察が約50枚の画像を復元して、犯行の裏付けが可能になった。

事件が発覚した時、A子さんはすでに18歳になっていた。
「犯行当時は自分が何をされたのか、よくわかっていなかった」という。また「お父さん、お母さんには言っちゃあダメだよ」と青田に口止めされていた。

成長とともに自分がされたことが理解できるようになってきたが、「親にも相談できずに黙っていた」。自分が我慢して黙っていれば済むのではないか、と考えて、8年間もひとりで耐えていたのだ。

証拠の画像を見たA子さんは、「私が知らない私がいた」と供述。あまりにショッキングな出来事を経験して、記憶の一部が欠落していた。その後、A子さんは家から外出できなくなり、心身の不調で精神科を受診して、PTSDと診断された、という。

裁判官は「被告は弁解に終始し、
反省が認められない」

東京高裁の裁判官は、「一審の判決には不合理なところがなく、是認できる」と、被告側の主張を退け、控訴棄却の判決を言い渡した。

陰茎を膣内に挿入したか否かについては、「挿入したと認められる」。「被告は挿入するつもりがなかった」という主張には「あった」と認定。
鑑定人の「10歳の女児の膣口に力を込めれば、(陰茎は)入ると思う。ある程度の力で膣口に押し当てるなど、故意があった」という判断や、残された画像から、処女膜を通過したという客観的事実と、被告の故意を認めたのだ。
青田被告の弁護人の「A子さんが母親に『入らなかった』と話していた」との主張にも、「A子さんは10歳で性経験がなく、的確な判断ができなかった」と退けた。

裁判官は「被告は不合理な弁解に終始し、反省が認められない。犯行を謝罪し、弁償金800万円を支払って、示談が成立している。前科前歴がなく、妻が更生への監督を約束しているという被告人に有利な事情もあるが、量刑不当の主張は理由がない」と。
判決とその理由を聞いていた青田被告は、ずっと下を向いたままで、一度も顔を上げず、言葉も発しなかった――。

A子さんの両親に対するSNS上での中傷も

青田被告の非道な犯行は、多くの人々を傷つけた。
夫のパソコンから性的画像を発見したとき、青田の妻はどれほどの衝撃を受けただろうか。被告の妻が、A子さん家族に謝罪するという決断をしたからこそ、事件が発覚したのだ。

一方、被害者A子さんの両親は、インターネット上で中傷された。
「1回だけならともかく、10回とは。親は不用心すぎる」
「親も知ってたんじゃないか。弱みを握られてたんじゃないか」

確かに注意が足りなかった部分はあるかもしれない。しかしそれは、青田被告を信頼しきっていたという証(あかし)でもある。信頼していた友人に裏切られ、自分の娘に一生残るかもしれない心身両面の傷を負わせてしまったのだ。

A子さんは肉体的、精神的な苦痛が大きく、日常生活にも大きな影響がある、という。
法廷には、傍聴席からは見えないように大きな衝立があった。その向こう側には裁判を注視していたA子さんの家族がいたのだろうか。

事件が発覚するまでの8年間――。
多感な年ごろのA子さんは、誰にも相談できず、ひとりで悩んでいた。そして事件が発覚してからは、自分の心の奥底に封印していた“痛ましい過去”と、正面から向き合わざるを得なくなったのだ。

現在、成人となったA子さんの心情を慮(おもんぱか)ると、これからの“輝かしい未来”を願わずにはいられない。

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