スナフキンのサンダルを捧ぐ!① 〜 プロローグ 〜
「明日から廃部になります」
突然、上司に告げられた。川崎市の某社会人陸上部に所属していた僕は唖然となった。
しかし、会社は早期退職制度なるものを用意し、まだ3年目の僕に、退職金200万円を提示してきた。
さらに辞めてから1年間は、会社の寮に残ってもいいという。
まだ、20歳だった僕は、迷わずその条件に飛びついた。世間知らずの田舎者で、当時は、あまり、お金を使うことがなく、
「200万円もあれば、一生暮らせるんちゃうかな」
と、勘違いしているアホであった。1999年人類が滅亡するという、ノストラダムスの大予言を信じていた僕は、何も起きなかった事に安堵しながら、2001年を迎えようとしていた。
退職して2、3日後、先輩がいる鶴見寮へ遊びに行った。一緒に辞めた先輩の佐藤さんを訪ねて行ったのだが、同じ職場で働いていた同期の西畑君と出くわした。
彼は夜勤明けでたった今、寮に帰ってきたところだという。先輩の佐藤さんを誘い、
「ビール片手に風呂でも入ろう」
と朝から自動販売機で缶ビールを買った。この鶴見寮には温泉旅館のような大浴場があり、けっこう広い。
そこで湯船につかりながら、ビールを飲んでいると先輩が、
「海外に興味あんねんな〜、俺と一緒に行かへん?」
と僕に話しかけてきた。すると会社を辞めていない西畑君が興味をしめして
「僕も一緒に行きたいです」
と言い出した。先輩は少し困惑ぎみに
「1ヶ月ぐらい行くねんで」
と彼を牽制する。しかし西畑君は余程行きたいのか、
「ん〜、有休を全部使ってなんとかします」
と真剣に考えていた。そんな彼の横顔を見ていたら、海外旅行に少しだけ興味がわいてきて、
「とりあえず、2週間ぐらいなら、行ってもいいっす」
と3人で行けば、絶対楽しい旅行になると、その場はおおいに盛り上がった。
続
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