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顧客にこそ悩みは話したほうが良い

プロジェクトにおけるステークホルダー対応は、重要な管理要素の一つだ。特にクライアントワークにおいては、成功の可否を決める要素にもなる。実際PMBOKでもステークホルダーマネジメントとして知識エリアの1つに取り上げられているぐらいである。ただPMの中にはこの対応は正直ちょっと気が重いという人も多いはずだ。

顧客社内における情報シス部門やユーザー部門各々の関係は会社によって大きく違う。時に社内の政治的力関係にも巻き込まれることもあり、一筋縄ではいかない。他人様の会社の中のことなので、なおさら慎重かつ億劫になる理由もよく分かる。

とにかく注意したいのは、巻き込むタイミングである。最初から巻き込んでおかないと後から問題になった時に動いてくれないことがある。時間だけは巻き戻せないので、立ち上げの段階で慎重な検討が必要である。

非常に難易度の高いステークホルダー対応だが、一つ自分なりのアプローチを紹介したい。それは思い切って顧客の胸を借りるという方法だ。

カーネギーの「人を動かす」では「人を動かすための三要素」として以下を挙げているが、これはステークホルダー対応で必要なポイントが凝縮されていると思っている。

1 盗人にも五分の理を認める
2 重要感を持たせる
3 人の立場に身を置く

3の人の立場に身を置くというのはあらゆる対人コミュニケーションで必要であり、このステークホルダー対応でも欠かせない視点だ。一方的な要求や正当性の主張は余計な反発を生んでしまう。ここは十分考慮する前提で今回紹介したいのは、重要感を持たせるという点だ。ずばり「頼る」ことでそれを行おうという話である。特に先方が年配者であったりリーダーシップのある方であるほど効果的である。

例えば、よくベンターPMが部下のチームリーダーが顧客とのミーティングをうまくリードできないと言った課題に悩んでいるとする。「こんなテーマは自分たちの社内の問題だからお客さんに話すわけにはいかない」とそのPMは頭を抱えているわけだが、私はお客様のPMや担当上長に素直に相談することを勧めたい。

顧客もある一定の以上の役職の方は、マネジメントとして多くのことを経験されていることがほとんどだ。そういう方々は外部ベンダーの使い方も心得ていて、一方的な受注者-発注者の上下関係では上手くいかないことを理解されている方も多い。先の例だとファシリテートのうまい顧客担当者を同席させてくれるなどの提案をしてくれるかもしれない。「PMはPJの進行と部下の育成を両方やらないといけないから、大変だよね。自分も昔は・・・」などその方の過去の話などを聞けるきっかけを掴めたらもう合格点だ。

もちろん受託側としてやるべきことをしっかりやっていることが大前提だし、自社内で問題解決できるのであれば即座にすべきではある。具体的な問題解決を100%その相談に頼るのではなく、解決に向けた相談という事柄ですら、ステークホルダーと距離を縮めるためのきっかけにするというしたたかさが必要だと思っている。

こう言うとエンジニア出身のPMで、人を扱う仕事がそんなに得意でない人もいてハードルが上がるかもしれないが、うまくいっていることもいってないことも両方、顧客のPMと話せるような関係になれると、色々仕事がやりやすくなることは知っておきたい。他人からの評価や過剰な責任感から自由になることで、もっと楽にコトを運べるようになることは多い。

言うは易し、行うは難しではある。いづれにしても、相手に弱みは見せてはならないという態度こそが、ステークホルダー対策の最大の障害であることは理解したい。悩みを共有して彼らも一緒に解決にあたる当事者にしてしまうことがステークホルダー対応の最高のパターンなのだ。

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