ソングライティング・ワークブック 第164週:Cole Porter(14)
暗くなったり明るくなったり
On your smile so sweet, so tender, when at my first kiss you decline
今年91歳になるアルトサックス奏者渡辺貞夫が今も演奏する『I Concentrate on You』は、もともと1940年の『Broadway Melody of 1940』という映画でFred AstaireとEleanor Powellのダンスの背後でDouglas MacPhailが歌う歌として書かれた(すでに紹介した『Begin the Beguine』も使われている映画だ)。一部映像がYouTubeに上がっている。
A (16)+A'(16)+B (16)+C (16)という構成で、Bセクションは展開部のようになっていて、その終わりの盛り上がりを受け継ぐようにCセクションへ行く。だから通常のこの時代の歌にあるように、Aに戻るようにはなっていない。ただし、Cの終わりはAの終わりと同じフレーズ(と歌詞)が使われている。こういう、簡単に戻ってくるのではないところが『Begin the Beguine』と似ている。
この歌はビバップのような、和声進行をもとにしたインプロをするのに向いていると言える。冒頭のトニックのままメジャー7音を使いながら長調から短調へ揺れるのが特徴的で、E♭またはB♭で演奏されることが多いようだが、わかりやすさのためにCでメロディラインと大体の和声を示す。このキーだと、45小節目からGマイナーへの終止形で最後にGメジャー(属調)に終止するのが印象的だ。
韻はAセクションとCセクションで「brew」「you」「through」「true」、それから「strong」「song」「wrong」と踏まれ、Bセクションで「tender」「surrender」、それから「decline」「intertwine」と踏まれている。「I concentrate on you」はこの文脈なら「君だけを想う」みたいな感じか。若い恋への固執についての歌だ。
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