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ソングライティング・ワークブック 第165週 Cole Porter(15)

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Every love but true love(本当の愛以外の愛なら何でも取り揃えてます) (1)

The New Yorkers (1930)

『The Cole Porter Song Collection』の解説によると、Porter自身がもっとも気に入っていた自身の作は、1930年に初演された『Love for Sale』ということだ。彼はこの後たくさんのヒット曲を1950年代終わりごろまで書き続けるのだから、比較的早い時期の作品と言っていい。実際前に紹介した大ヒットミュージカル『Anything Goes』よりも早い、まだ禁酒法(Prohibition in the United States、1920-33)が施行されていた時代で、また、大恐慌時代(Great Depression, 1929-39)は始まったばかりで、その衝撃も新しかった。

『Love for Sale』はミュージカル『The New Yorkers』のために書かれた。富豪の令嬢とナイトクラブオーナーで密造酒屋の男との恋を描くというよりは、彼らが警察から逃げるのを描くことで、ニューヨークに住む富裕層からマフィアや売春婦まで、いろいろなタイプの人々を描くことに主眼がおかれているようだ。

2017年にリバイバル上演されえていたようで、その宣伝のための動画がYouTubeにあがっている。

これはミュージカルのための歌唱ではないが、1931年にレコードとして発売するためにLibby Holmanによって録音されたもの。

実際の舞台では当初、白人のKathryn Crawfordによって歌われた。Mayという名の売春婦を演じた。そのときの舞台設定はニューヨークではミッドタウンと呼ばれる、皆がニューヨークといえば思い浮かべるようなあの繁華街の、とある人気レストランの前でこの歌を歌うというものだった。これが公演初日に「悪趣味」だと批判を招き、次の公演にはPorterは設定を変え、今度は黒人のElisabeth Welchが、アップタウン、ハーレムのコットンクラブの前で歌うという設定になった(すぐに変更ができたのは、Porterが最初からそういう批判があることを想定していて、Plan Bを最初から用意していたということだろうか?)。売春婦を黒人が演じるのならいい、というのは、まだそういう時代だった、ということだ。


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