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ソングライティング・ワークブック 第97週:光と陰(オモテとウラ)でパターンを作る(3)

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おまけ(着想のためのヒント)

陰陽

2つの要素(流れ、線)が互いにスペースを埋め合う。2つの要素はそれぞれどちらもメロディであることもあるし、メロディと伴奏ということもあるし、あるいは、どちらも伴奏ということもあるだろう。

2つのメロディがスペースを埋め合う

このうち、メロディと伴奏について。歌を書く人たちは、一般的に、伴奏は途切れない一連の音の流れで、メロディはその上に乗っかるものだと考えていることが多いと思う。それは構わない。特にポップスだと伴奏はダンス音楽起源のことが多いから、伴奏の役割はグルーヴを生み出すこととされている。これはもっと古い、ポルカやワルツであってもそうだ。また、芸術歌曲でダンスとは関係ない場合も描写を含む場合(嵐の中を子供抱えて馬が走るとか、川の流れとか)、そのような途切れない流れが伴奏として使われることが多い。

あるいは、古典派のソナチネを模して何か書いてみなさい、と言われれば、とりあえず「ドソミソ」とやる人が多いかもしれない。

ダンス音楽ほどではないにしても、こういう伴奏には「推進力」としての役割が求められていることになる。それでは下の例はどうだろう?

この場合、伴奏は「推進力」としての枠割を維持していると言える。強拍を打たないから、左手はグルーヴとしては自己完結していない。試しにこうやって弾いてみて印象はどう変わるか?

Beethovenが指定したダイナミクスに注意してほしい。p(ピアノ)になっている。Allegroで、やや厚く書かれているけれど、すっ、と入らなければならない(ダイナミクスを読まない人がいきなりバーンと弾いてしまう)。伴奏が強拍を打たないのはそれと関係がある。この後少しして、こういう風になる;

フォルテの時に伴奏も強拍を打つ。

同じ作曲家のEメジャーのピアノソナタだけど、これはもっと後のもの;

右手と左手がスペースを互いに埋め合う。

4分の2拍子だけど、2拍目から入っている。この曲もまるで何かの続きみたいに、気が付いたらいつの間にか入っているかのような弾き始め方を要求しているのだろうか。Beethovenのアウフタクトはいつもトリッキーだ。

右手のフレーズの終わりと左手の伴奏フレーズの始まりとが重なっているけれど、あとはスペースを互いに埋め合うようになっている。

1本の線で前景と背景を作る

音階を恣意的に上ったり下りたりしながら、これまた恣意的なタイミングでフォルティシモとピアノ・ピアニシモを書き加える。何となく近景と遠景が見て取れるようになる。エコーのようなものも現れる。

Luciano Berioの小品『Six Encores』の中の『erdenklavier: pastrale』は、もっと考えて書かれた例;


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