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ソングライティング・ワークブック 第158週:Cole Porter(8)

『Blow, Gabriel, Blow』について、続き。

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近頃は何でもありだね(Anything Goes)(7)

持続と展開

『Blow, Gabriel, Blow』のコーラスは、A(16小節)+A(16小節)+B(16小節)+B'(16小節)+A'(16小節)とでも言えるような構成になっている。Aセクションはそれだけで、小さな有節歌曲として成立する;

「scamp」は「いたずらっ子」ぐらいの意味。「trim one's lamp」は聖書のマタイ書(英訳版)にある言い回しで、「道を照らすために、罪を清め、常に神と御言葉を求める」という意味。

基本的にはこの16小節の小さな歌を5回繰り返して、ひとつのコーラスとする、そういう構成だ。ただし、B、B'とした部分では同じメロディを並行調(Cマイナー)で歌うことになる。B’はAに戻るために(Ebに対するドミナントで終わる)。ソナタ形式などで言うところの「展開部」のようになっていて、Aと違い、この16小節だけで有節歌曲のひとつの歌としては成立しない。

基本的にAセクションを並行短調にしたのがBセクションとなる。ただし、「when I got to Satan's door」のくだりはAセクションと同様Ebメジャーになっている。「I heard you blowin' on your horn」ではイントロで使われたラッパのモチーフが歌詞の内容を表すために使われている。
B'セクション(と敢えて呼ぶが)はむしろ展開部のようになっていて、調性も流動的になる。和声的リズムも構造も(サブドミナントからトニックへ、という動きを調を変えながら3回やる)A、Bとは違う。それでもB'と呼んだのは、Bの続きという感じが聴いているとするからだ。「fly higher and higher!」という飛翔を表す言葉で2拍3連のリズムになるのは、同じRenoが最初に歌う『I Got A Kick Out of You』でもやっていたので、面白い。「climb up the mountaintop」でメロディも上昇する。なお、brimstoneはsulfur(硫黄)の古い呼び方で、fireと対になって聖書(King Jamesなど英語版)で使われている。最後の4小節はEbに戻るための部分だが、A、B
セクションではそれぞれの後半の始まり(「I've been a sinner…」「But when I got to Satan’s door…」)で使われていたリズムがここで使われている。

付け加えて、この歌の面白いところは、この歌が歌われる場面や文脈を知らなければ、曲も歌詞も本当に教会でそのまま通用してしまいそうなところだ。

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