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イランによるイスラエル攻撃で考えた 中東危機に進むのか?

 2024年4月14日朝、目を覚まして、イランがイスラエルに向けて弾道ミサイルを撃ったというニュースを見て、唖然とした。とうとう、恐れていた中東危機が来たかと思ったが、PCを開いてニュースをチェックした中に、タイムズ・オブ・イスラエルに<Iran’s mission to UN says its ‘military action’ against Israel is ‘concluded,’ warns US to stay out>という見出しの記事を見た。「国連のイラン代表部はイスラエルに対する軍事行動は完了(concluded)した。 米国に関わるなと警告した」というもので、えっ? イランのイスラエル攻撃は終わった?ってどういうことと思った。

タイムズ・オフ・イスラエルのイランの攻撃について
国連のイラン代表部のXポストを紹介したニュース

 タイムズ・オブ・イスラエルの記事は国連イラン代表部のポスト内容を引用しているだけだが、基になっている国連イラン代表部のXの最新のポストを張っていた。読んでみると、<The matter can be deemed concluded. (問題は完了したものと考えることが出来る)>と、微妙な言い方ながら、「完了」としている。「問題」というのは、その前に、「合法的な防衛に関する国連憲章第51条に基づいて、イランの軍事行動はダマスカスの我々の外交使節に対するシオニスト政権(イスラエル)の攻撃に対応するものであった」というから、イスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃したことに対する自衛権行使の問題ということだろう。

イランのイスラエル攻撃についての国連のイラン代表部のXサイトのポスト

 つまり、イスラエルによるシリアにあるイラン大使館への攻撃という「侵略行為」に対する「自衛権の発動」の問題は、この日の軍事攻撃で完了した、と読むことができる。ただし、「終わったと考えることができる」と留保をつけるような書き方になっているのは、その後に、「 しかし、イスラエル政権が新たな間違いを犯せば、イランの対応はかなり深刻になるだろう」とあり、つまり、イスラエルがこれで終わりにしないで、新たな報復をすれば、<Iran’s response will be considerably more severe >(イランの対応はかなり厳しいものになるだろう)としているから、イスラエルの報復があれば、これで終わりにならない、という警告になっている。さらに、「これはイランと不正なイスラエルの間の対立であり、米国は離れておかねばならない」と米国に対してくぎを刺している。

 イスラエル軍は報復するとしているが、イラン本土への攻撃となれば、イスラエルは米国の了解や協力を得ないで、単独で行うことはできないだろう。しかし、米国バイデン政権がイスラエルにイラン本土への攻撃を認めたり、協力したりするだろうか。そうなれば本当の中東危機となるが、米国にとっての心配はペルシャ湾のホルムズ海峡がイランの革命防衛隊に脅かされ、石油価格が暴騰することだろう。すでに3、4日前からイランが近くイスラエルを攻撃するという推測が出てから石油価格が高騰し始めている。

 イランの攻撃の前日の13日に、革命防衛隊がホルムズ海峡の近くでイスラエルと関係のあるコンテナ船を拿捕したことを、国営イラン通信(IRNA)が報じたのは、14日の攻撃の前に、ホルムズ海峡の安全について世界の関心に目を向けさせる結果にもなった。

 今回、イスラエルが先に国際法違反のイランの大使館を攻撃したことを考え、イランが国連憲法に基づく「自衛権」を主張し、さらに、今回、イスラエルには大きな被害が出ていない攻撃で「問題は完了した」と言っていることからも、米国が中東危機を覚悟で、イスラエルにイラン本土攻撃を了承するとは考えにくい。

 タイムズ・オブ・イスラエルによる「バイデン大統領はネタニヤフ首相に米国はイスラエルによるイランへの報復攻撃を支援しないと伝えたと言った」という米国メディアを引用した記事も出ている。


タイムズ・オブ・イスラエルによる「バイデン大統領はネタニヤフ首相に米国はイスラエルによるイランへの報復攻撃を支援しないと伝えたと言った」という記事


 さらに、今回はイランの攻撃に呼応したヒズボラからイスラエル国内への大規模なミサイル攻撃はなかったが、今後、イスラエルの報復攻撃次第では、これまでガザ攻撃では自制していたヒズボラが、本格的に参戦することにもなりかねない。イスラエルによるガザ攻撃で、米国が最も恐れていたことが、イランや、その傘下にあるヒズボラの参加という危機の拡大だった。

 合理的に考えれば、イランも米国も、今回のことで全面危機には入りたくないようなので、イスラエルはイラン本土攻撃はできないだろう。しかし、中東では合理的に考えらた起こり得ないようなことが起こり、危機に向けて動き出したら、泥沼にはまるように動いてしまうこともある。油断はできない。

 米国がイスラエルの報復に協力しないことについてバイデン大統領の弱腰を批判するような世論が米国で出てくれば、米国の対応も分からなくなる。大統領選挙の年だということも、念頭に置かねばならない。ネタニヤフ首相はイランから弾道ミサイル攻撃を受けただけで報復しなければ、政治的な影響力の下落は避けられない。このまま黙っているとも思えない。

 今後、どのような展開になるかは、まだ予測がつかないというしかない。

※国連のイラン代表部のXポスト

<Permanent Mission of I.R.Iran to UN, NY:Conducted on the strength of Article 51 of the UN Charter pertaining to legitimate defense, Iran’s military action was in response to the Zionist regime’s aggression against our diplomatic premises in Damascus. The matter can be deemed concluded. However, should the Israeli regime make another mistake, Iran’s response will be considerably more severe. It is a conflict between Iran and the rogue Israeli regime, from which the U.S. MUST STAY AWAY! >



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