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私とピアノの30年:③色々と必死な中学生編(後編)

思い返したら、めちゃくちゃボリューミーで3部作になった中学生編。最終章はいちばんのボリュームです!
3年生ではありがたいことに、普通の中学生活じゃできないような経験も盛りだくさん。

特異体質の発覚と悲しい宣告

練習後に指のストレッチをしていたら、なんとなく両手小指の第2関節が腫れている気がする…でも痛みもない、熱を持ったりもしてない。これはなんだ…?
また骨折した時にお世話になった整形外科へ。

レントゲンを撮った結果、特に異常があるわけではないものの、1万人に1人くらいの特異体質が発覚。
平均的に手が小さい人でも小指の長さが薬指の第1関節まであるのが、私の場合は小指の第2関節の骨が短くて全然届いていない。
第2関節の腫れっぽいのは単純に節が太くなっただけ…
もともと手が小さくて困ってはいたけど、まさか特異体質だったとは。

先生からは悲しい宣告が。

今後、ピアノを続けていけたとしても、確実にハンデになる。
無理すると他の指に支障が出るかもしれない。
高い技術を更に磨いても、選曲面で差が出てくる。
ピアニストの素質は十分あるのに残念だけど、諦めることも選択肢に入れた方が…
僕もピアノを諦めた身だから、諦めたくない気持ちはよく分かるけど…

少し悩んだものの、
「小6でリスト弾けたし、成長して手が少し大きくなるかもしれないし、そしたら小指のハンデもそこまでじゃなくし…諦めるにはまだ早い気がする」
と、立ち向かうことを決意。

先生からは高校卒業までの成長期の間、
・とにかく指や手首に負担をかけない!重いもの持つの厳禁!
・指に力が入る(握る系)スポーツは厳禁。部活も引退まで適度に!
とアドバイス(制約?)を受けました。

残念なことに結果的に成長しなかった、今の私の手がこちら。
全体的に小さい上に小指が短いのが分かるかと。
オクターブはギリギリ届く、和音になると届かないところも出てくる…って感じです。

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夏休み、オーストラリアで演奏する

私の住んでいた高畠町は、オーストラリアのシングルトン市と姉妹都市。
毎年夏休みに中学3年+高校生20名くらいのクルーでオーストラリアへ行き、約10日間ホームステイして、学校に行ったり観光したりする研修旅行があります。

シングルトンはニューサウスウェールズ州のシドニーから車で2時間超の緑豊かなカントリータウン。ワイナリーなどで有名です。
どのへんにあるかというと、わりと端っこ。

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クルーの募集が始まったのを聞きつけて、即応募。
行ってる間はピアノ弾けないのに…と両親を始めとした周りの心配をよそに、すんなり書類審査も面接も通り、シングルトン行きが確定。
出発までの約2ヶ月間は講習を受けたり、出し物の練習をしたりとレッスン以外も大忙し。

もうすぐ出発の日…というタイミングで、引率担当のALTのG先生から、

学校のMusic classと帰る前のFarewell Partyで演奏しない?曲の説明も英語でやると勉強になるよ!

と提案が。もちろん、即OK。

その頃、受験曲選び+勉強のためにベートーヴェンのソナタを3曲弾いているなかで、いちばん自信のある&有名な悲愴をチョイス。
英語で曲解説のスピーチも準備して、いざオーストラリアへ。

ホームステイ&学校は本当に楽しくて、わりとすぐに馴染めました。
でも初日から90%英語の生活に脳みそが常にフル回転の状態。
練習もできないし、落ち着いてスピーチ&演奏できるのか…?とソワソワしていたら、あっという間にMusic Classでの演奏の日が。
興味津々な生徒たちとG先生が保護者のごとくビデオカメラを構える前で、緊張しながらスピーチをして、演奏。
我ながら良い演奏ができて、胸をなでおろしながら席に戻ろうとしたら、先生に呼び止められ。

みんな!ピアノの周りに集まって!
もう一度、第1主題(テンポが速くなるとこ)から弾いてくれる?

至近距離でみんなからまじまじと見つめられながら弾いたら、今度はみんなに向けて手を見せろと。そして先生が一言。

見て、彼女の手はとても小さいのに、この難しい曲の速い部分も難なく弾いているように見える。
これはハノン・ツェルニーを中心にした指のトレーニングを相当な量やってきている証拠。
技術で手の小ささをカバーして、この歳でここまで素晴らしい演奏をしているのよ!

褒められた!✿゚❀.(*´▽`*)❀.゚✿パァァァ

数日後のFarewell Partyでは、みんなとの別れが悲しくて泣きすぎて、まさに気持ちが悲愴で、何度も弾いたなかでいちばん良く弾けてた気がする…w

海外の学校で演奏する貴重な経験もできて、英語もだいぶ話せるようになって、海外の友達もできて、ほくほくして日本に。
悲愴とはしばしお別れをして、課題曲の山と向き合う練習の日々に。

中学最後の学園祭でソロ演奏

楽しかった夏休みも終わり、とうとう最後の学園祭シーズン。
学園祭は2日間。1日目は学校の体育館で各学年の出し物、2日目は町のホールで合唱コンクール。

毎年伴奏していた合唱コンクールもこれで最後。絶対にクラスで金賞を取って、優秀伴奏者賞3連覇狙うぞ…!と意気込みたっぷり。
学年合唱&課題曲はおなじみの『大地讃頌』、クラス合唱の自由曲は『親知らず子知らず』…と、手の小さい私にはヘビー級。
特に自由曲がオクターブ連打やトリルが多くて大人でも苦労する難しさ…

どんな伴奏か気になる方はこちらのYouTubeをどうぞ。
どれだけ激しい伴奏なのかは、伴奏のみの動画を観ると分かりやすいかもしれません。笑

そんな矢先、合唱コンクールの審査の間に行われる個人演奏枠に私のピアノソロをねじ込んでくれた学年主任…(嬉しいけどさすがにしんどい!!)
オーストラリアでお別れと思っていたけど、問答無用で弾きなれた悲愴を選択。

学園祭当日はアガリ症なのにめずらしく、演劇も伴奏もソロ演奏もまったく緊張せず、落ち着いてほぼノーミス。
合唱コンクールでは学校賞は逃したもののクラスで金賞を取ってみんなで大号泣、目標だった優秀伴奏者賞も3連覇。
最後の学園祭はまさに有終の美を飾って幕を閉じます。

推薦入試の受験まであと3ヶ月ちょっと…今度こそ悲愴とはひとまずお別れ。
受験準備のラストスパート…!

2回目のスランプ…冬休みの合宿へ

毎日練習を頑張っているものの、学園祭が終わって燃え尽き症候群になったのか調子が悪い。
暗譜も終わったのにどんなに弾いてもダメになっていく…ミスも多い…ときたまランダムに暗譜が飛ぶ…
ピアノ人生2度目のスランプ突入。

1ヶ月近く、ピアノを前にすると異常な緊張感に襲われ、
ピアノの前に座る→緊張しすぎて練習開始して1時間程度で弾けなくなる→続行してもミス連発…の繰り返し。
そんな調子なのでレッスンも上手くいかず、先生にも怒られるばかり。

どうしたら良いか分からず、焦りに焦って行き着いた先は音楽の大先輩、お兄ちゃん。
環境が変わったら弾けるようになるかもというお兄ちゃんの提案で、冬休みの1週間、東京のお兄ちゃんの家でピアノ合宿をすることに。

ほぼ毎日大学に連れて行ってもらい、大学ツアー兼レッスン。
夜はご飯を食べた後はほぼ夜中まで楽典&冬休みの宿題。
朝は早々に文字通り叩き起され、何かしらの音源を聴かされたり、お兄ちゃんの練習を聴いたりした後、ソルフェージュ。
そしてまた大学へ行ってレッスン…の繰り返し。
まさに鬼教官の超絶厳しい訓練さながら。今思い返しても、楽しかったけどあのレッスンと勉強量は地獄。

大学のレッスンでは大きな部屋で当日の予行演習。(早いw)
ステージに出る→お辞儀する→ピアノの前に座る…の一連の流れを、OKが出るまで何度もやり直し。
演奏はテーマを2つに分けてレッスン。

①下手でも間違っても止まってもなんでもいいから通して弾きなさい
②演奏中に止まったり、ミスして声出したら最初から弾き直しなさい

「弾かなきゃ終わらない」と植え付けて克服する作戦。
(かなりの荒療治なので良い子はマネしないでね)
お兄ちゃんのおかげでスランプはあっという間に抜け出し、ついでに細かいところもたくさん直されて楽譜は真っ黒、楽典の教科書は追加の書き込み満載。
最後は頑張ったご褒美に109に連れて行ってもらいましたw

その後、練習の虫になったのは良いものの、3学期に入った途端に何度かズル休みをかまして、家で1日中練習する…という癖が生まれました。

とうとうやってきた推薦入試

一般高校や大学と同様に私が受験した山形北高の音楽科も推薦入試と一般入試があります。
普通は一般入試だけですが、出席日数・成績・素行などの基準をクリアした、いわゆる優等生が学校推薦を受けられます。

私はというと…2年生まで成績だけが良い、いわゆる『表向き優等生』。
入院含めしょっちゅう体調を崩して休むわ、提出物はほぼ毎回出さない、部活も顧問の目が届かないところでサボる、授業中も寝ていたり友達と手紙のやり取りをしたり、こっそり携帯を学校に持ち込んでみんなで写真撮ったり…裏面はTHE 問題児。

当然、これじゃ推薦出せないと言われ、滑り止めで私立高校も受けろと薦められたものの、行きたい私立高校がなく一本に絞ることを選択。
3年生で必死に頑張り、全ての条件をクリアして推薦をもらいました。
多分、人生でいちばん頭が良かったし、いちばん頑張った時期。

推薦入試当日。引率で来てくれた担任の先生が目の前で雪で滑ってコケて、幸先が悪い朝。
(先生は「あんたの厄払いになった」って豪語してたけどw)

練習室では周りの練習している音に、叩き上げの私は周りのレベルが高いと思い込み、弱気に。
控室で他校の子と話していたら「8歳からピアノ始めたのに、よくここ受験しに来たね」とマウンティングされ、更に弱気に。

クヨクヨせずに気合いを入れて頑張ったものの、手応えはあまりなく、予想通り不合格。
学校のみんなは「先生がコケたから落ちたんだ!あんなに頑張ってたのに落ちるはずない!」と慰めてくれたけど、私は悔しさでいっぱいでみんなに抱きついて大号泣。

更に学校を休む頻度を増やして、一般入試に向けて残りの1ヶ月ひたすら練習するのでした。

最後のチャンス、一般入試

最後のチャンス、一般入試の日。音楽科の一般入試は1日目が一般教科、2日目が実技試験の2日間。
本当に私立高校を受けなかった私はこれで落ちたら、1年の足踏みが確定する大惨事になりかねません。

一般教科は3年生で勉強を頑張ってきた甲斐があって、サクサク全教科を回答。
実技試験は推薦入試で雰囲気もつかめていたし、同じく推薦で不合格だったメンバーもいたので、心細さもなく控室でも和気あいあい。
ソルフェージュはひとつひとつの課題に落ち着いて対応。
演奏も1ヶ月必死でブラッシュアップしたので、緊張しながらも落ち着いて演奏。
面接も推薦入試の時とはちょっと回答を変えて、自分なりに精一杯アピール。
できることは全部やった!今回は絶対に大丈夫!と確信を持って、受験終了。

そして、受験終了報告で学校に電話。
学年主任「おつかれ。話があるから今から学校に戻ってこい」
卒業1週間前に話って何…?怖いんだけど…と思いながら、学校へ。

私「しつれいしまーす!話ってなんですか?」
学年主任「おー、受験お疲れ。はい、これ卒業式まで譜読みよろしく」
私「えっ…1週間でこれ全部!?」
学年主任「高校行ったらそのくらいは普通だぞ、多分」

渡されたのは3曲の伴奏譜。
更に学年主任の追撃の一言。
「あと校歌と大地讃頌と〜〜〜も。明日合わせだから、よろしく!あと帰って練習していいぞ^^」

冗談キツイぜ( ᐛ👐)パァ

受験直後で疲れているのに、必死に譜読みとさらい直し。
次の日の合わせは当然ボロボロ。

学年主任「はっはっは!昨日楽譜渡したばかりだからなw来週の卒業式までには仕上がってるから!」
みんな うわぁ…( ゚д゚)ポカーン

学年主任にサプライズを仕掛けた卒業式

いよいよ、中学生活最後のイベント、卒業式。
どっさり渡された伴奏も譜読みが終わって、なんとか間に合って一安心。
前日(だったと思う)、各クラスの指揮者と伴奏合わせの最終調整中のこと。

私「ねぇ、学年主任に最後指揮してほしくない…?」
指揮者A「それいいね!音楽の先生だし、指揮してほしい!」
指揮者B「どうする?最後、大地讃頌だよね?」
指揮者C「俺が大地讃頌の担当だから、先生連れてくる?」
私「サプライズにしない?Cが壇上行ったら先生ー!最後に指揮してくださーい!って叫ぶとか?www」
指揮者B「うわ、それいい!!Cやれよ!」
指揮者C「やるやる!先生泣くかな!?」
指揮者A「明日の朝、俺らからみんなに伝えようぜ!」

卒業式当日、みんなにコソコソと朝から伝言ゲーム。
ついでに指揮者Cが叫んだら、みんなバラバラでいいから先生呼んで!とお願いw

卒業式は淡々と進み、学年合唱へ。
ボリュームたっぷりな3年間を思い出し、感極まって泣きながら伴奏する私。
いよいよ…最後の大地讃頌。

指揮者C「〇〇先生ー!最後に!俺たちの!指揮!してください!」

作戦は大成功。
学年主任が照れながら、周りにお辞儀をして登場。怖くて優しい学年主任を泣かせられなかったけど、最後は学年主任の指揮で歌う(伴奏する)大地讃頌で卒業式を締めくくった私たち。

卒業式のあとは後輩たちにリボンやボタンやジャージやらカバンをぶんどられ、思い出たくさんの中学校を後にしました。

最後に:伴奏した曲リスト

高校受験の準備の傍ら、小学校&中学時代はめちゃくちゃ伴奏していたのでリストアップしてみました。
懐かしい曲と一緒に、みなさんも中学時代に想いを馳せてみてください!
(いつ弾いたかまで覚えてないので、順番は適当ですw)

・マイバラード
・Believe
・心の瞳
・この星に生まれて
・おてもやんパラフレーズ
・モルダウ
・翼をください
・夢の世界を
・涙をこえて
・巣立ちの歌
・旅立ちの日に
・Let's search for tomorrow
・時の旅人
・ハレルヤ
・遠い日の歌
・流浪の民
・青葉の歌
・大地讃頌
・親知らず子知らず
・樹氷の街

多分思い出せないだけでまだある…
ぜひYouTubeで聴いてみてください!!

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出会い編からクスッとしながら読んでくれたら嬉しいです。


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