私とピアノの30年④:音楽漬けの高校生(中編)
だいぶ期間が空いてしまいましたが、入学して半年で早速「ピアノの担当講師を変えてくれなきゃ辞めてやる!」と豪語し、問題児認定をされた私。この後もどんどんやらかします。
音楽以外のことは何も知らないまま、嵐のように過ぎていった高校生編の中編です。
声楽のテストで1位になり、専攻変えを迫られる
藝大卒の優雅なマダム講師、M先生についてから半年。急に声楽の最初のテストで10位以内に入りました。
「まぁ、小学校から合唱とかで発声は鍛えられていたし、そういうこともあるよね」とまぐれ的にとらえていた私。
2学期のテスト後、先生に電話したら衝撃の展開に。
M先生門下はテスト終了後、先生から講評メモ(いつも可愛いネコちゃんのメモ帳に達筆で書かれてた)をもらい、その日のうちに個別に電話で点数・順位・講評の詳細を聞くことになっています。
「あなた今回は1位よ。おめでとう♪」と優雅に告げられ、頭が真っ白でその後の講評は全く耳に入ってこず。
その頃、ピアノは相性が悪い教員とのレッスンは継続していたのでモチベーションはだだ下がって成績も落ち、とりあえず1年乗り切ることしか考えていなかったので、見かねた担任から「来年もしピアノの担当講師が変わらなければ、主専攻を声楽に変える選択肢もあるよ。1位だし。」と提案が。
私はピアノをやりたくてこの高校に来たんだ!主専攻を変えてもピアノの担当講師が変わらないんじゃ根本解決にならない!
と反抗したものの、心中は複雑だったので、持ち帰って考えることに。
結局は「好きなことを貫く」は譲れなかったので「私はやっぱりピアノがやりたいし、専攻変えはしたくないけど、ピアノの先生はどうしても変えてほしい!」と主張を続けていました。
※学年が変わるタイミングで自分の専攻楽器の成績が振るわなかったり、副専攻でやっているピアノや声楽が楽しくなったりで、主専攻を変えるのは珍しいことではないです。特に専攻楽器→歌の転科はよくあります。
選択授業のオーケストラでヴァイオリンに触れる。
2学期はイベントがもうひとつ。選択授業です。ピアノ・声楽が主専攻の1年生は、このタイミングで合唱かオーケストラ(+主に弦楽器で何を副専攻にするか)を選べます。
オーケストラを選んだピアノ・声楽専攻生は主に弦楽器の中から自分が担当するパートを決め、吹奏楽経験者は楽器の人数配分の都合で管楽器や打楽器になることも。
私は中学生の頃に定期演奏会を聴いて、ピアノソロをしていた先輩がオーケストラでチェロを弾く姿を見て「ピアノも上位でチェロも弾いててかっこいい…!」と感動した、という単純な理由でオーケストラに即決。もちろんチェロ希望!
中学生の頃に発覚した小指の特異体質を差っ引いても、手が小さい私。
先生からも「う〜ん、無理があるな」と言われて、せっかくならメロディーラインを弾いてみたくて、第2希望の1stヴァイオリンを選択。
基本は学校の予備楽器を割り当てられて練習しますが、やはり音楽学校の持ち物なので、そこそこ良い楽器。
ルンルン気分で学校のヴァイオリンを持って帰ったら父が
「どうせやるなら、自分の楽器を持ちなさい」
と初心者用ヴァイオリンを買い与えてくれて、第2の相棒がヴァイオリンに。テレレッテッテッテー♪
勝手にコンクールに応募して、全国大会で入選。
1年生の3学期。放課後の練習ついでに音楽科の校舎をうろついていたら、とあるコンクールの案内に目が止まります。
学校や楽器店にはコンクールやマスタークラスの体験レッスン、OB/OGのコンサートチラシなどの案内物が常にずらっと置いてあります。
(コンクールは担当の先生から受けるものを指定されることが多いです。)
そこで私が見つけたのは『全日本ジュニアクラシック音楽コンクール』の募集要項。全国からコンテスタントを集めて、予選・本選が2日間で行われるコンクールで、他の楽器専攻の人と同じステージで競うので面白そうだな〜と軽い気持ちで勝手に応募。相性が悪いピアノの先生も、それなりの曲を渡すだろうとニンマリ。
※今はコンクールの規模が大きくなって地区予選・本選・全国大会と分かれていて、楽器別に部門も分かれています。
案の定「コンクールだからちょっとレベルの高いものを」と、ドビュッシーのピアノ曲集「版画」の雨の庭を渡されて、急なレベルアップに唖然。
人生初のフランス物。古典派やロマン派とは違って、楽譜通りに音を鳴らしても合っているかわからない微妙な和音やメロディー、コロコロ変わる曲の表情で譜読みで一瞬で白目をむいてノイローゼ気味に…
いざ本番。日暮里のサニーホールが会場だったのを今でも覚えています。控室では小学生部門でヴァイオリンを小学生とは思えない上手さで弾く子が現れたり、しっかりドレスアップして挑む同い年の子がいたり…
「私は楽しんで弾こうっと」と早々に戦意喪失して、気合いを入れすぎずに演奏したのが良かったのか、予選通過して本選を迎え、まさかの入選を果たして、ガラコンにまで出演しました。いえーい!
念願のピアノの先生変更。大師匠との出会い。
2年生に上がって最初に行われる新入生歓迎コンサートでソロを弾くことに。学内コンサートでソロをやることを目標にしていたので1年乗り切ったかいがありました。
学期末に発表されるドキドキの次年度の担当講師発表。願いが叶ってピアノ担当講師が変更されました。これが大師匠H先生との出会い。
H先生はめちゃくちゃ怖いことで学校中で有名。変更が決まったものの、不安しかなく。「君、来年は僕の門下だよ!よろしくね〜」とひょうひょうとした雰囲気で話しかけられたときにはびっくりしたけど、面白いおじさまで一安心しました。
新入生歓迎コンサートのリハーサルか何かで休日に学校へ行ったときにH先生が来ていて「空いてる練習室取ってちょっと弾いてみて!」と。
けちょんけちょんのボロクソに怒られるかも…震えていたら、30分くらいでサクサク的確に修正ポイントを教えてくれて、自分でも驚くほど良くなったのは今でも覚えています。
その翌日くらいにあった地元のO先生の発表会で演奏を聞いたO先生。
演奏後に「もしかして、先生変わった?とっても良くなってる!」と驚きを隠せない様子。
無事に先生が変わったこと、その変更後の先生が有名なH先生だったことを話すと、とても安心した表情をしていたO先生の様子はずっと忘れないと思います。
残りの2年間は楽しくピアノに集中できそうだとワクワクが止まりませんでした。
Aコース認定試験で、学校中を走りながら大号泣
後に私が大師匠と呼ぶH先生の門下になり、胸を躍らせながらスタートした2年生。
「さぁ、せっかくうちの門下に来たんだ!Aコース認定試験を受けよう!」
とH先生は最初から気合いが入ったご様子。
Aコースは、いわゆる「演奏家コース」的な立ち位置です。ピアノはA・B・Cコースに分かれていて、通常はBコースかCコースのいずれか。Aコースは指定の課題で認定試験を受けて、認定されないとなれない仕組み。この認定試験は1年生で1回、2年生で1回しかやらないので最後のチャンス。
試験制度の詳細はこちらの記事で説明しています!
まずぶち当たったのはハノンのNo.39、スケール全24調をミスなく弾けるようになること。更には指の基礎力を身につけるためハノンNo.1〜31をやり直し。
スケールは全調弾けたけどミスなく弾けるかどうかは「その日のコンディションと運による★」な適当さなので、もちろんゴリゴリやられました。
基礎テクニックはそこそこに課題曲でひたすら鍛えてきたゆえの結果です…
※良い子はマネしないでね。ちゃんと基礎練習しようね。
当時の合格ラインは課題曲全ての合計点数が80点以上が基準。合格者は平均的にクラスで2〜3名。
Aコースになるとテストの課題曲の数や難易度も上がりますが、3年生の演奏会(卒業試験的なやつ)でソロ演奏が確定します。
この認定試験の課題は↓でボリューミー。
私が与えられた課題曲はこちら。
・平均律1巻 6番
・モシュコフスキー 15の練習曲 5番
・ツェルニー 50番 1番
・ラヴェル ソナチネ 2〜3楽章
ラヴェル以外はとーーーーーーっても安全な選曲ですが、それゆえ完璧に弾きこなす必要があります。
スケールはくじ引きで引き当てたものを弾くルールで、大嫌いなes-moll(♭6つ)を引き当て。
「引き直していいですか?」と心の本音を吐露して先生たちを爆笑の渦に巻き込んだものの、もちろん引き直しは認められず。スケールでガチガチに緊張して失敗。
その他は持ち直したけど、この失敗が響いて不合格。合格して喜びのあまりに「走りたい!」と校内を走り出した友達と一緒に走りながら大号泣しました。
10年以上経った今でも「今はes-moll弾けるか?スケール失敗しなけりゃ受かってたんだぞ!」と大師匠からネタにされ続けています…ぴえん。
と、2年生はこんな感じで過ごしてきました。
高校生編も次で最後。後編をお楽しみに。
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