演奏は一種のインスタレーションだと思う

前から「演奏は空間と演奏者と観客が創るもの」と思ってはいるのだけど。
最近特に思うのは、演奏の場ってインスタレーションと似ているなと。
思考をアウトプットするのにnoteを開いてみました。


インスタレーションってなんなのよ

「インスタレーション」で検索をかけて、最初に出てくる結果がこれ。

据え付け、取付け、設置の意味から転じて、展示空間を含めて作品とみなす手法を指す。 彫刻の延長として捉えられたり、音や光といった物体に依拠しない素材を活かした作品や、観客を内部に取り込むタイプの作品などに適用される。

現代美術用語辞典

つまり、ひとつひとつの展示作品だけではなく、空間全てを作品と捉えて全てに意味を持たせた表現手法、だと私は捉えています。
最近よく見聞きする、没入型の展示とかチームラボ的なやつも、その類になるのかな。
残念ながら、アートのことは全然詳しくないのだけど。

私が捉えた「インスタレーション」とやらいうものは、演奏の場にも通じることがたくさんあるんです。

衣装選びは立派な演奏のひとつ

まず、衣装はインスタレーションのエッセンスになりうる。演奏者がステージに立った最初の一瞬で空間を作る重要な要素
演奏時はドレスや役に合わせた衣装を身にまとって演奏をするけど、計算ミスが起こったら適切な表現が伝わらないと思っています。

実はコンクールや試験によって「ドレス審査」があることも。
衣装の質ではなく、曲と合っているか(もちろん、演奏者に合っているかも含めて)を見られます。

明らかにおかしいよね?というのが分かりやすい例をいくつかあげてみます。

まず、「ハバネラ」が有名な、ビゼーが作曲したオペラ「カルメン」。
主人公のカルメンをイメージしてみて。
カルメンの役柄は自由奔放で恋多きセクシーなジプシー女性
真っ赤なドレスやセクシーなドレスを着た女性をイメージする人が多いと思います。(なぜか実際に赤ドレスが多いのです)

そんなカルメンが、パステルカラー・フリフリ・花柄のドレスを着て、ステージに出てきたら、セクシーからは遠くかけ離れてしまう。

私が今回弾いていて、他の記事でも触れている「死の舞踏」。
死神とガイコツがモチーフになっている激しい曲なのに、目のやり場に困るようなセクシー衣装だったら…サルサでも踊るんか?とツッコミたくなる。

こんな違和感があったら、自分が役や曲に入り込むことも、観客を引き込むこともできないですよね。

もちろん、演奏する会場やシーンでも衣装選びは重要。
大きな会場であれば、華やかなドレス。小さな会場であれば、衣擦れの音で演奏の邪魔にならない素材のもの。
ライブハウスやカフェでのBGM演奏だったら、その場所に溶け込めるような色味やデザインのもの。とか。

ヘアメイクも大事な演奏を魅せる要素

表情は雰囲気を作るための要素で、その雰囲気を引き立てるのがヘアメイクだと私は思います。
役柄や演奏する曲、ドレスに合わせてメイクもちゃんと計算しないといけません。
そしてステージでの難点はスポットライトで表情が見えにくくなること。

ここでもいくつか例をあげてみます。

モーツァルトのオペラ「魔笛」に出てくる夜の女王。
高音が連続する「夜の女王のアリア」が有名ですね。
夜の女王が真っ黒なドレスを着て、高い王冠を被っている印象が強いと思います。
目が合っただけで人々がひれ伏すようなメイクじゃないと、女王の威厳は表せない。

リストの愛の夢や献呈のような、ロマンティックな曲を弾く場合。
ちょっと上気したチークにピンクのリップに合わせて、きれいにヘアセットされたつやつやの髪だと、ロマンティックな雰囲気が一気にアップする。

メイクも実は会場によって変えないと大変なことになります。
スポットライトがガンガン当たる場合は眉もアイラインもリップもしっかり強調して、つけまつげをつけるくらいじゃないと、顔がのぺーーーっとしちゃいます。

逆に観客に近い位置で演奏するときにそんなメイクをしたら、お客さんがみんな引いちゃいます。

会場の雰囲気も演奏に

全く同じ会場とピアノで同じ曲を弾いても、絶対に同じにはならないのが、演奏の面白いところ。

会場の大きさや響き、ピアノの大きさや音質、置かれている位置、照明の位置や明るさはもちろん演奏の場では非常に大切な要素。
でも、それだけではなくて、演奏を聴きに来ていただいているお客さまのみなさんも演奏会を成り立たせる重要な役割

どこに座るのかで音の聴こえ方、演奏者の見え方、会場の感じ方がガラッと変わります。
ピアノの演奏会であれば、
・手の動きなどを見たいときは、鍵盤が見える位置
・表情を見たいときは、客席から見て右側のピアノの蓋から表情が見える位置
・音をしっかり聴きたいときは、ピアノの蓋の前くらいの位置
などなど。

自分が演奏する立場のときだけではなく、他の演奏家のコンサートを聴きに行っても、マナー良く楽しんで聴いてくれるお客さまが多ければ多いほど、良い演奏会が多いです。
「この人が出演する演奏会は雰囲気が良いからまた行こう」と思えます。

ジョイントコンサートなどでたまに目にするが、自分のお目当ての演奏家の出番以外は興味がないお客さま。
ひどいときには、開演時間にご来場されているのに、席を確保してその方の出番までロビーで時間を潰している…なんてことも。

あまりに続くと主催者側からお声がかからなくなったり、他のお客さまが減ってしまったり、その方の演奏活動に支障が出かねません。
ぜひ、お目当ての演奏家の方を引き立てて、良い演奏会にするためにも、マナー良く鑑賞していただきたいなと思っています。


少し小言混じりになってしまいましたが、どうでしょう?
アートとは全然違いますが、芸術という大きなくくりで見てみると、様々な要素で成り立っている演奏会って、インスタレーションだと捉えても良いのではないでしょうか?

ちゃんと考えをまとめられていないけど、私が演奏会に感じているインスタレーションはこんな感じです。というお話でした。




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