見出し画像

スポーツをすること

僕が彼と出会ったのは、東京オリンピックを半年後に控えた2021年3月。
横田さんが前橋に行ったときの記事を何気なく読んだ僕は衝撃を受けました。

「スポーツで母国が平和になる。」

わかってはいたけど、そういう国は本当にある。
そんな彼がオリンピックをきっかけに今、会いに行ける場所にいる。

すぐに横田さんに連絡してこの練習が実現しました。

実際に会ってみると僕と何も変わらない1人のアスリートでした。
笑顔が可愛い、純粋に速くなりたい若者。
コーチングに全力で向き合い、僕との練習を楽しんでくれていました。

そのときに2ヶ月後のミドルディスタンスチャレンジ1500mで
僕がアブラハムの自己ベストをアシストする約束をしました。

最初の約束

2ヶ月後、アブラハムと再開。

TWOLAPSが開催するミドルディスタンスチャレンジに約束どおりきてくれました。

ミドルディスタンスチャレンジ男子1500m第2位。
記録は 南スーダン新記録。

やってくれた。

ペースメーカーをしながら彼の息遣い・迫力を感じ、想いの強さがどれだけ力になるのかを学びました。
前橋にきて1年。彼の努力は報われていました。

その時も僕たちは、「オリンピックの舞台で再開する」という約束かわしました。

出会いから南スーダン記録を更新するまでのことをGet naviさんが漫画にして描いてくれています。


2個目の約束

その直後僕は数週間に及ぶ故障に悩まされ、シーズンインが大幅に遅れてしまいました。
時を同じく、アブラハムはコロナウイルスによる影響でレースが制限されると同時に故障をしてしまっていました。
互いに連絡を取りしっかりと約束を果たすべく復帰に向けて全力で取り組む日々、辛かったけど前を向くことができていたと思います。

一足先に僕の1ヶ月遅れたシーズンイン、なんとかモチベーションを保ったままトラックに帰ってくることができました。
そしてそこからさらに1ヶ月後、アブラハムの復帰レース、トレーニングを詰めている状況の走りではありませんでした。まだ足痛いのかな?治療はできているのかな?そんな連絡も取りました。

迎えた日本選手権。僕がアブラハムとの約束を果たす最後のチャンスがやってきました。

結果は6位、かすりもせず、2個目の約束を果たすことはできませんでした。
勝負の世界。そんな綺麗にはいきません。史上最高レベルの決着は日本から3名の代表選手を輩出する結果で幕を下ろしました。

「同じ経験をできたら、あの舞台に立てたら今見えないものが何か見えるんだろうか?」

僕はここまでなのか、人生をかけた分。心の余裕は正直ありませんでした。

最後の約束

東京オリンピック男子1500m予選。
「南スーダン」母国の旗を胸にオリンピックを駆けるアスリートとして
アブラハムの姿がありました。
ここまで国を背負った1人の少年が、1年半の日本での生活を経て、
南スーダンだけでなく日本人の期待を胸にスタートを切りました。

3分40秒68 ここでもまた大幅な自己ベスト。
2ヶ月前の姿からは想像できない、大一番で会心の走りだったと思います。

「同じ経験をできたら、あの舞台に立てたら今見えないものが何か見えるだろうか?」

オリンピックにはチャンスがある。スポーツは世界を一つにする。

彼を通じて僕は自分だけでは気づくことのできなかったかもしれないスポーツの価値を知ることができました。

日本の人達にも、南スーダンの人達にも。世界に向けても。
彼が気がつかせてくれたチャンスを、ここで終わらせるわけにはいかない。

南スーダンの少年が、東京オリンピックを通じてチャンスを掴み、家族を守り国を救う存在になること。

みんなと同じように、スポーツをすること

たったそれだけのことで、世界中の子供達がスポーツの価値を感じ、争い傷つけ合うのではなくそのチャンスに向かって人生を賭けてスポーツを楽しんでくれる。そんなきっかけになると思うんです。

僕たちは東京オリンピックが終わった夏、最後の約束をしました。

「アブラハムをSHARKSの一員として迎え入れ、
彼を通じ世界が少し幸せになる取り組みをする。」

この約束をスタートラインに、僕たちの第二章が始まります。

画像1

P.S.
この挑戦を初める瞬間をTWOLAPS YouTube 横田さんとの焚き火トークで切り取ってくれています。
このチャンネルはその時の心境や表情をリアルに切り取ってくれていて、本当にいいチャンネルだなあと、つくづく思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?