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清原 達郎『わが投資術 市場は誰に微笑むか』 でおすすめ投資3領域

サラリーマンで長者番付1位で年収100億円のニュースは今でも鮮明に覚えている。

いつのことか?と思ったが、調べるとそのニュースは2005年なので自分が18歳で大学に入学した歳のようだ。
(もっと前のような気がする。おそらく1位ではなく100億円というニュースはもっと前だったのではないか)

さて、その話題となったサラリーマン投資家の清原達郎氏の本を出た。
記事や動画なども見たことがなく、今回が処女作のようなので、ほとんどメディアに出ない人なのだろう。

自分も大学生の頃から投資に興味があり、今でもいちおうやっているので、本が出て速攻購入し読んでみた。

実は、清原氏には興味はずっとあったが、調べても名前も出ないので謎に包まれていた。

今回、読んでみて大変おもしろい内容だった。

まず、経歴も知らなかったので意外にど真ん中のエリートでびっくりした。本書によると、1981年東大教養学部(国際関係論)を卒業し、野村證券に入り、スタンフォードMBA、ゴールドマン・サックス証券、などなど。おそらく1958年生まれなので、今66歳くらいで宮台真司の1個上という世代。(1951年生まれの北尾吉孝氏(73)が先輩として本書に出てくる)

もっと岡三証券とかで泥臭く下から這い上がってきた実力系の人かと思っていたら華々しい経歴の持ち主であった。

いくつかの記憶に残ったポイントを書いて学びにしたいと思う。


小型株は個人が勝ちやすい

これは、いちおう投資をしている自分にも励みになる内容であった。
また、株の選び方の本質はどれも正直自分の考えと共通するところがあったので安心。

低PER、フリーキャッシュフロー、バリエーションの梯子を上っていく可能性の高いものなど、具体的な分析方法は専門的なのでついていけないところもあった。

でも、いろいろ批判的に考察して本質的なところに集中しているのはよくわかった。社長が優秀で、意思をともにする優秀な部下がいる、など経営に置いて当たり前のことが重視されている。

取引ボリュームの多い大型株は、何が折り込まれているか誰も分からないが、小型株はある程度読める。

野村證券はクソ

これ、最初の方でも述べられているが、本書の締めにも使われているくらいなので、本書でもかなり重要なポイントに思えたw

結局、顧客が損しても自分だけ取引手数料で儲ければよいと考える証券会社への反抗が、清原氏の中心にあったのだろう。

自分が理解できる範囲でしか投資できない

この考え方も斬新であったが、考えてみればそりゃそうだ、となる。

清原氏は、自分を100とすると70−130くらいの器の人にしか投資できない、それ以上については理解できないし、それ以下のバカには投資したくない、と書いている。

ESG投資についても、そんな環境問題のカオスを理解できないのに何を馬鹿なことを言っているのか?と一蹴している。

投資対象も、シンプルなことにブレイクダンスして自分が理解できるレベルじゃないとだめなんだ。

日本の未来について

至極シンプルかつ無難な将来の見通しを氏ている。
ここ10年、
実質経済成長率はほぼゼロ、
人口は半永久的に減り続ける、
為替は120円くらいの円高に
インフレ率は0−2%の間、

というような具体的な私見を出している。

ただ、日本の未来については悲観的ではなく、むしろ人口減って環境問題の解決になるし、ニュージーランドと同じような規模になればそれでいいというようなスタンス。

本当、その通りだと思う。

投資チャンス3領域

ただ、そうなると、国内市場を中心にビジネスをする企業の利益を減っていくだろう。

そんな中、成長が期待できる分野はどこか?
海外で稼げればいいが、そこまで競争力のある企業は現状少ない。

では何か?

消費者余剰という開拓地

1つ目は、消費者余剰という開拓地だという。ここの30−40兆円の市場を見ているようだ。
消費者余剰とは、一物一価ではなく、人によって同じ原価のもに対して多く支払ってもらうような仕組みであり、投げ銭などがわかりやすい例。
この形式を応用できる素地を持つ会社に伸びしろがある。

経営統合・寡占

海外比率の高い中小企業などを統合化し、経営効率を高めれば、寡占化し少ない企業の利益は高まる。
ニデックやファナックなどが主導すべし、と提言している。

英語教育領域

これは、清原氏が直接は推奨していないが、結局日本人が海外にでいくことが一番手っ取り早い可能性となる。清原氏も自身の英語力は大したことはないと謙遜しているが、それがなかったらヘッジファンドなんてできていなかったと回顧している。
プログリット、レアジョブなど、もっと評価されてもいいだろう。

小林秀雄を一蹴

最後に、私が個人的に一番共感した箇所。

それは、「最悪なのが小林秀雄とかいう評論家の文章でした」と小林秀雄を一蹴していたところw

私自身、小林秀雄は結局何の軸があったのか全くわからず批判的であったが、同じようにばっさり切り捨ててくれたことに感謝。
ベルクソン哲学はたしかに意義があるが、それをだらだら文学的な表現で大して本質に迫らず言葉遊びをしていただけに感じる。

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以上、久しぶりに読みごたえのある本であった。投資術のところは繰り返し読まないと理解できなそうなのでまた読みたいと思う。
今は話すことはできなくなってしまったようだが、もしできるなら過去のものでも清原氏が話している姿を見てみたい、とも思った。


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