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web3(ブロックチェーン)とシンボルグラウンディング問題

ブロックチェーンの利点が、改ざんできないデータを保管しておくことにあるとすると、世の中どう変わるか?

ブロックチェーンが力を発揮するための条件

ブロックチェーンが力を発揮するには、条件がある。それは、①世界のあらゆる事象についての②疑う必要がなく無思考で「真実」だと見做してよい事実を、③記録した超大量のシンボル(言語)データベースがある、ということだ。これがあってこそブロックチェーンが活きる。

1つずつ説明しよう。

①世界のあらゆる事象についての

「世界のあらゆる事象について」というのは、「東京都北区赤羽の駅前にサイゼリヤがある」「王子駅前のマックが満席だ」のような世界でおきている事態を描写したものだ。ここでは、言語(シンボル)データで捉えることを想定している。

②疑う必要がなく無思考で「真実」だと見做してよい事実を

次のポイントは、こうした世界の事態を描写した言語データが、真実であるということが担保されているということだ。実際これは、後述する通り、ブロックチェーンの技術では実現できない問題であるが、この点が満たされなければ、改ざんできないブロックチェーンというのは役に立たない。それどころか世の中を混乱させるかもしれない。

③記録した超大量のシンボル(言語)データベースができる

最後のポイントは、世界中のあらゆる時間、空間で起きている全ての認識可能な対象が言語化されるということ。そのデータ数は、まさに天文学的な数字になるだろうし、増え続けるだろう。

そしてこれらは言語(シンボル)データなのだ。動画や音声などの形式も考えられるが、最終的に人間の判断に利用されるのであれば、言語データで保管しておくのが効率的だろう。

ブロックチェーンで何ができるか

真実とされる世界を描写した言語データが利用可能であれば、何ができるか?

抽象的にいうと、様々な資源配分が最適化できる明るい未来が見える反面、究極の監視社会というディストピアになりうる可能性もある。

具体的に何ができるかは是非みなさんも考えてみてください。

記録するとはなにか?

そもそも、ブロックチェーンができる「記録」とは一体何か。

「記録」とは、何かしらの事態(状態)を事実として認定し、それを正確に言語化(シンボル化)するとうことだ。

今私がパソコンを前にしてキーボードを打っている。それが事態の描写である。

シンボルグラウンディング問題はどうするか?

しかし、ここで問題がおきる。

事実とは何か?

私が今主観で経験している「いま、ここ」の質的な体験を、言語化し、その両者の一致が担保されたものが「事実」である。

では、両者はどうやって一致するのか?

これはウィトゲンシュタインが放棄した問題である。

つまり、これはAI領域で言われているシンボルグラウンディング問題だ。

主観的なありありとした体験を完璧に言語化することはできない。

どんな体験でも、それを言葉にし、いくら語っても、語り尽くせない。

ブロックチェーンの弊害

ブロックチェーンの利点が改ざんできないのは良いことだが、その元データがそもそも事実でなければ意味がない。

意味がないどころか、間違っていて、それが確固たる事実としてみんなが信じて流通したら、それは社会を混乱させてしまう。

ブロックチェーンが扱える事実データは、保有している資産量、人の身体的な属性など、一義的に言語化できる領域に限定されるだろう。


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