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chatGPTが語学業界・先生に与える影響は?英語・中国語

語学業界にchatGPTはどんな影響を与えるだろうか?

現時点:会話パートナー

優秀な会話パートナー

現時点で、chatGPTに音声認識と音声合成技術を組み合わせれば、すでにすごい能力の「会話パートナー」が誕生する。APIが公開されているので、英語ではすでに利用可能なものも多いだろう。

日本語のやり取りで、表現や文法的正確性では、ほぼ問題がない。内容に関しては、領域が限定されるが、正確なものは多い。

なので、普通に、会話パートナーとなり、格安オンライン英会話とか、中国語会話とかの代替をするだろう。

ただ、これは純粋に会話パートナーという点においてのみである。

先生はまだ無理か

例えば、読解問題の解釈とか、勉強法についての質問、翻訳の仕方など、そういうことについて、完全に満足行く回答はまだ難しい。実際私も使ってみたが、まだ微妙なところもある。

これは、今後精度がもっと上がっても中々難しい。

というのも、人は往々にして、ある回答の正しさ、信頼できる度合いを、誰が言ったか?で決めているからだ。

英語ならTOEFL満点とか、ハーバード大卒業とか、そういう属性で8割くらい決まっているだろう。コミュニケーションの中で、相手を試して信頼度を測る学習者は稀だろう。それができないとAIに全面的な信頼を寄せることはできない。

ただ、広く信頼され有名な先生が「この範囲のことならGPTに聞けば99%正確だよ」とお墨付きを与えれば、一気に広がるかもしれない。

物語のないAIと生身の人間の違い

われわれ学習者がネイティブと会話するときは、一人の来歴を持ったその国の母語話者としての人間と対峙している。生まれてから様々な生い立ちの物語があるはずだし、国は違えど世界を共有してきた。さらに、本気で会おうと思えば会える可能性もある。

そういう実在する人間としてのリアリティが、chatGPTにはない。

だから、生身の人間と接するワクワク感がなく、それに伴うモチベーションの向上もない。

一方で、その生身感がないから良い、というような考え方もできる。

また、chatGPTは現状、文脈をせいぜい過去2万字くらいしか記憶で保てないので、何回の往復の会話くらいしか精度を保ってできない。

毎日話していて、友好関係を築くことができない。

5年以内:テストとスケジュール管理

普通の語学コーチは追い抜かれる

もう少し、性能が上がれば、スケジュール管理などはできるようになるだろう。

語学の習得理論を学ばせ、それに沿った形で、テストやスケジュール管理をすることは可能になる。

こうなれば、現行の「語学コーチング」のサポートの大半がすごい精度かつ、ミスなく提供できる。

生身の人間の目と同等になるか?

ただ、これも先の論点と同じで、相手がAIだとなると、どこまでその対象にコミットできるか?という問題が生じる。

習得理論に基づき指導してくれる対象が、AIだと、その対象に感情は芽生えるだろうか?

先生と生徒という関係の本質は、どれだけ裏切れない関係性を作るか?にある。

ただ同然で利用できるコモディティ化したAIに対して、見られれているという目線をわれわれはどこまで感じるか?

10年以内:実践としての友達

2,3割の人間はAIに人間性を見出す


といいつつも、その生身の人間の目までも統計的に再現できてしまう可能性も高い。

映画herの主人公のように、相手がAIとわかった上で恋に落ちる人もいるかもしれない。

そうなれば、もう語学コーチというレベルを超えて、語学の実践をする相手としての存在価値も生まれていくる。

ただ、この時点では、まだ統計的な処理にすぎず、シンボルグラウンディング(以下の記事参照)もしていないし、身体を持ち欲望もない。だから、音声や文字ベースだけのコミュニケーションに満足する人は人工の2,3割なのではないか。

マルチモーダルで、身体を持ち、何かしらのベクトルを持った存在になれば、ほぼ100%の人間が、AIに共感し、人格を見出すだろう。ただ、これは10年以内ではおきないと思う。

やはり、人間が相手に本当に共感するのは、自己保存を目的に持つ存在なのかもしれない。

人間の先生はどうするか

物語を持つ人間として、共感を持ってもらうしかない。あなたと同じ生身の人間として、ここまで語学を身に着けたから色々わかるよ!とか、くらいか?愛嬌だったら、下手したらAIに負けるかもしれない。

あと、ここまでくれば、通訳もほぼAI化しているだろうから、直接外国語を話せることの価値に理解のある人しか語学はしないだろう。

多くの人が人格を見出しうるAIが登場したら、そもそも語学とか通訳とかそういう異文化とのコミュニケーションの意義自体が大きく変わるので、語学教師自体があるのかはわからない。

最後に:大量のインプットが大事

最後に、上記の議論とは直接は関係ないが、これだけすごいパフォーマンスを出すchatGPTなどの大規模言語モデルの仕組みから、外国語学習者は一つの大きな学びがある。

それは、徹底したインプットだ。

GPTは、演繹的に文法や単語を覚えているわけではない。

実際の莫大な量の言語使用に触れることで、特徴を見出し、正しいものを掴んでいく。

われわれがたくさん、中国語の本を読めば、なんとなく、あれ?これはおかしいと直観的にわかるようになるようなものだ。

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