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文学・詩歌

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2023年1月の記事一覧

なぜ和歌は57韻律なのか・長短律の機能に関する考察

 こんばんは。Sagishiです。  今回は、和歌の57韻律(長短律)について考察をしていきます。 1 なぜ和歌は57韻律なのか 以前、わたしは「和歌が57韻律なのは漢詩の影響ではなく、日本語の特性に由来すると考えたほうが妥当だ」という主張の記事を書きました。  わたしは、これまで繰り返されてきた「神学論」的な議論からは早く卒業しないといけないと思っています。ゆえに、何かを主張するさいにはその根拠を明示して、議論を生産的にしたいと思っています。  「漢詩影響仮説」が正

詩歌:女官

 給仕するために柱廊にいた  忘却した帽子を  ひろいにホーフガルテンの  休止されない運搬に、  近づいて、休拍の呼吸を聽く  歩み、彼は厨房にぶどうを運ぶ  輝きの去る星座の海  こぼれた房が床にはね、  猫の眼が壁から覗く  愛を、  泡沫に消える、裾を赤く汚して  夜に衣  甘いむつみ  知るべくもない顔 「明日は濃い霧がたちこめた……」 「昨日は波が静かになりつつある」  灯台もない  この  だれも寄り付かない暗さに  充溢している  女官が小路を歩き  カツンカ

詩歌:優しい朝

 まどろみを抱いた、鈴鹿山脈を  靴をはいて散歩する  雲は高く冠をして  子どもたちを見つめる (空気の高まりと、逡巡をいっしんに受け)  大垣をぬけると米原が近づく  うたた寝の気流に川が流れる  ゆっくりと腰をあげると  黄色い生命の花はかかる  苦しみから綿を遠ざけているだけでは  聖歌は迎えてはくれない  伊吹おろしを感ずると、  トンネルのさきに赤い光が見えた  きっと、誰かが笑った朝の  おぼろげな水脈だ

詩歌:白鳥の卵

白き翼を陽に広げ 水をはじきて川にふる いづこより君は来たりやと 問へど束の間、北へゆく 青を仰ぎてよろめきぬ 絹絲の如く柔らかなる 翼のたわめき、温かなる 冬の陽射しに輝きて 卵を見しためしにあらず 君の言の葉もえ聞かで 何百何千、渡りゆく 雪降る季節のらうたさぞ 小夜ふけるころ夢見つつ 着水の音のまぼろしに 驚きて川辺見回すほどに 君のすがたをまたゆかし

詩歌論:詩と歌詞はどう違うか

 こんばんは。Sagishiです。  今回も文学に関する思っていることをつらつら書いていこうと思います。  詩と歌詞ってどう違うのか。よくある疑問かと思います。  まぁわたしからすると全然ちがいますね。歌詞にはメロディや譜割りがあるというのもありますが、最大のちがいは詩には詩のロジックがあることです。  本当に色々な書き方があるので、まじめなひとは「詩は自由です」と答えると思いますが、わたしは自由ではないと思っています。詩には歴史的な積み重ねがあり、それなしで読解する