見出し画像

【もの補助】400万円採択されて、福祉施設のDXをbubble×OpenAIのAPIで実現した話

株式会社パパゲーノでは、2023年9月に東京でIT系の福祉施設(就労継続支援B型)を立ち上げ、2023年11月にものづくり補助金400万円が採択されDXを推進してきた。具体的にはノーコード開発ツール「bubble」とOpenAIのAPIを活用した、面談音声の自動文字起こし&支援記録作成アプリを開発。2024年3月にはAI支援さんという名前でプロダクトをリリース。2024年5月に「もの補助」の266万円が無事着金した。

「ものづくり補助金(もの補助)」を使って、ソフトウェアやハードウェアを開発し自社の生産性を高めつつ、新規事業としてSaaS事業等を立ち上げるのはスタートアップにとって王道ルートの1つと言われている。実際にどのように「もの補助」を活用したのかを簡単にご紹介する。

想定読者
・福祉施設のDXを進めたいが予算がなくて困っている方
・スタートアップの起業家で資金調達に困っている方

ものづくり補助金とは?

もの補助は小さい会社だと「750万円」を上限に開発投資予算を「1/2」または「2/3」補填してもらえる補助金。「ものづくり」と言うと、機械への設備投資をイメージしがちだが設備投資であればソフトウェアも対象になる。

福祉施設で予算があまりない中で「支援記録システムの開発に数百万円投資したい!」という場合にもぴったりの補助金である。

機械の方が採択されやすいとも聞くが、しっかりと自社の生産性向上に寄与する形で申請書を作れば、採択率もそこまで低くない。ちなみに、福祉事業が「対象外」となる補助金・補助金も多いが「ものづくり補助金(もの補助)」は対象となる。

※ものづくり補助金の趣旨に合わない事業は採択されないorされても最終審査で通らない可能性があるので注意。
※詳細は必ず最新の公募要項を見て調べるようお願いします。

ソフトウェア開発に400万円投資

僕らは東京で福祉施設を運営しながら、福祉施設のDX支援事業を運営している。そのため、ものづくり補助金を使ってbubbleというノーコード開発ツールとOpenAI社が提供しているWhisper API(音声文字起こし)、ChatGPT API(LLM)を用いて、面談の音声を録音するだけで支援の記録を残せるソフトウェアの開発に合計400万円を投資した。2023年9月に福祉施設を自社で設立し、試行錯誤しながら事業所運営を何とかしている段階だった。早いスピードで立ち上げたかったSaaS事業のプロトタイプ(MVP)をもの補助を活用することで外注し同時並行で作り自社内で仮説検証をできればと考えていた。

パパゲーノの「ぐるぐるモデル」

ちなみに、内製でのシステム開発はものづくり補助金などの補助対象にはできない。必ず外注しなければならない。なぜか日本はDXを推進しようと言っておきながら、ITはベンダーに丸投げして無用のツールを量産することを前提に補助金の制度が作られているなと思う。

実際に手続きでにやったこと

補助金申請の手続きは、当たり前のことを愚直にやる感じだが、敷居の低い「小規模事業者等持続か補助金」などと比較すると難易度は高いと思う。ざっくりだが下記のようなことをしていた。

  • もの補助に詳しい専門家に助言いただく。もの補助はやや癖があり自分でゼロからやるのは困難。経験豊富な方に手伝ってもらった方がいい。

  • 「DX推進指標」自己診断というのをやって謎な認定を取得する。謎だったけど必要らしい。

  • なるべく定量的に設備投資の前後でどんな生産性の違いが出るかをわかりやすくまとめる。正直、審査員はドメイン知識も技術理解もないので分かりやすさをトコトン追求してシンプルに書く。

  • 相見積を5社ほどから取る。一定金額以上の外注は相見積が必須。

  • 現預金が足りなくなりそうだったので日本政策金融公庫から200万円の追加融資を2023年10月に受ける。補助金は着金が遅いので、それまでの資金繰りのため融資で足元の現金確保が必要。

  • もの補助は「外注」が前提だけど、当然DXは内製でやる気概がないと成功しないのでしっかりプロジェクトにコミットできる組織体制を作る。

手続きはほぼ電子化されている

公募要領には上記全ての手続きは100%電子化と書いてある。実際ほとんど電子化されているので、Jグランツから電子申請で完結する。手続き電子化の影響もあって、現地調査後に請求してから着金までは1,2日と早いスピード感になっている。

ただし、書類一式の印刷を現地調査(確定検査)の際に求められる。紙も保管しろと言われる。この点は本当にやめてほしい。

自社内での実証を踏まえSaaS開発

その後、自社内での実証を経て「AI支援さん」という名前で他社の事業所さんに使ってもらえるアプリの開発にも挑戦していくことに繋がった。もの補助で早いスピードでプロトタイプを作り、自社内での検証ができていなかったらリリース時期は半年〜1年ほど遅れていたと思う。

実際にプロトタイプの要件定義、開発を進めていく中で色々な課題に直面した。特に、音声データをどう処理するかについては想定の何倍も難しく躓いたが何とか動くものが完成し、実際の現場で活用できるレベルになった。

先日、渋谷の就労移行支援事業所「ワークフォー渋谷」さんにて、AI支援さんの体験会を開催したところ大好評だった。面談が見事に支援記録の形になる点に感動いただけてホッとした。

ワークフォー渋谷にて渋谷の相談支援事業所さん向けにAI支援さんの体験会を開催した時の様子

また、福祉施設のAI活用に関するオンラインセミナーも開催したところ100名近い申込みがありこちらも盛況だった。引き続きAIの支援現場への活用事例を生み出し、業界に広めていきたい。

創業直後の王道の資金調達パターン

最後に、もの補助を含めた創業直後の資金調達の王道パターンについて整理する。多くのスタートアップにとって、シード調達までの1番理想的な資本政策は以下の通りだと思う。

  • 資本金100〜500万円程度で創業する

  • 日本政策金融公庫から1000万円ほど創業融資を受ける(信用金庫か地銀の口座に着金)

  • 可能であれば、信用保証協会の保証付融資を追加で受ける

  • 社員を採用する場合はキャリアアップ助成金を申請する

  • ものづくり補助金で500万円ほど業務委託の開発予算を調達する

  • クラウドファンディングで応援してくれる人との繋がりを強めつつ売上を立てる

  • 小規模事業者等持続化補助金で200万円の広告予算を調達する(創業枠で50万円を200万円に増枠する)

  • 市場からの充分なフィードバックを踏まえて、他の調達手段を使い尽くした上で、VCや事業会社から株式で資金調達する(もしくは融資のみで走る)

ものづくり補助金は、少し癖があるものの金額が大きいためうまく活用できると事業を早いスピードで推進しやすい。自社にあいそうだったら、ぜひ挑戦してみてほしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?