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かつてない衝撃を受けた映画「関心領域」

「関心領域」のような衝撃的な映画はいまだかつて観たことがない。
全員が同じ映画を観ているにもかかわらず、
アウシュビッツに関心が薄い人にとっては家族の日常ドラマを描いた退屈な映画に映るが、アウシュビッツに関心がある人にとっては見続けるのが辛いくらいの恐怖映画に映るのだ。

観る人の関心度によってまったく違う評価になるということまで作者の狙いだったのではと思えてくる。

遠く壁の向こうからかすかに聞こえてくる叫び声や子供の泣き声、発砲音、焼却炉の作動音の中でごく普通の日常会話を交わしている家族をずっと観ていると、自分の方が頭がおかしくなったのではないかという錯覚に陥る。

そういう意味ではどんなホラー映画よりも怖ろしい映画だ。

タイトルになっている関心領域(The Zone of Interest)とは、ポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュヴィッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するためにナチス親衛隊が使っていた言葉だそうだが、同時に主人公や家族の関心領域であり、観客である私達自身の関心領域のことなのではと思った。

そして、かつてアウシュビッツで起きていたことは、形を変えて今現在も自分たちの関心領域外で起きているのだということを強く感じさせられた。

オープニングのインパクトといい、この映画は絶対に映画館で観るべきだと思った。

私は53歳の今まで映画館で同じ映画を2度以上観るということはしたことがなかったが、行くことにした。
今度はできるだけのことを知った上で。
それが、この監督の問いへの答えのひとつなのではと思っている。







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