見出し画像

イムズはおわってもイズムはつづく

博多の天神にあるイムズ内の三菱地所アルティアムは、
三菱地所の文化支援事業として1989年に開館した。
アルティアムには、アートを楽しむことのできる
スタジアムの意味が込められている。しかし昨年、
イムズの閉館と共に惜しまれつつも歴史に幕を閉じた。


画像1

昨年に訪れたアルティアムでの
アンリアレイジ展覧会「AとZ」
アンリアレイジはデザイナー森永邦彦
によって設立されたブランドである。
日常のA REAL と非日常の UN REAL に、
時代の AGE がくわえられた造語である。


「非日常とは、非現実的なことではなく、日常の中
で見落とされてしまった些細なこと」と語る森永氏。
アンリアレイジの制作は、形や素材、色ではなく、
言葉を決めるところから始まる。ファッションは
日常を変える装置として捉えられ、常識を疑い、
深く考え抜かれた思考の先に作品は生み出される。

画像2
画像3
画像4
画像5

アンリアレイジ 公式HPより参照

上の作品は、家を服、服を家に。テーマはHOME。
服がテントのようになり体全体をすっぽり覆う。
頭につけているものも小さな建築物と捉え、
建築家の隈研吾と共同でデザインされたとのこと。
外せばランプシェードとしてインテリアにもなる。
素材も抗ウイルス加工された機能的なものである。

普段は服として機能し、骨組みにかぶせることで、
家のように人を完全に包み込む空間をつくりだす。
日差しもきついし、このあたりで服を家にして休憩
しようなど、そんな光景も想像できなくもない。


また、アンリアレイジといえば昨年、竜とそばかすの姫
とのコラボーレーションが心に残る。素敵な関係である。

アンリアレイジ 公式HPより参照



そして、最後の展覧会が2021年7月に開かれた。

「絶望を覆すことができない恋を正義とせよ
きみが死んでも残る花。」
最果タヒさんによる詩がタイトルとなっている。

画像6


展覧会の挨拶文に以下の記載がある。
「芸術作品には、様々な解釈を可能にする
豊かさがあります。個人的体験である鑑賞が、
深い内省を伴う時、私たちの世界観は
広がります。視野が広がり、着眼点が増え、
言葉にならない感覚や考えを認識する機会
にもなります。」

心をフラットにして、対象と向かい合うことで
過去の価値観にとらわれない視点に出会う。
その積み重ねは、人生を豊かにすると感じる。


画像8
画像9
画像10
画像12
画像12
画像12

イムズには最後の日を迎えるまで、粋な広告が
設置された。左から順に大丸、三越、岩田屋、
パルコ、ソラリアへのメッセージ。イムズと共に
天神を盛り上げてきた商業施設へのエールである。


イムズはおわる。出会ったばかりで残念だが、
この展覧会やイムズの最後に立ち会えたこと、
色鮮やかな歴史に触れられたことを嬉しく思う。
愛されたイムズを思い、続くイズムを見守ろう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?