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在廊中にどうしているか。往復書簡#29

画家・タシロサトミさんとの往復書簡29回目です。
前回はこちら、タシロさんの作品タイトルつけ方のお話でした。

タシロさんは私と違ってシリーズでタイトルづけをされてるのでその理由と、シリーズ名を変えるときはなぜそうするのか興味あったので今回聞けてよかったです。
シリーズでつけてる方ってずーーっと変えない方も多いので。

ある程度の枚数を描くとタイトルを変えたくなるのは、言葉のもつ乱暴さに我慢ができなくなってくるからなんですよ。自分の制作スタイルって描きたいものは明らかなので、イメージを自由に膨らませるというよりは、どちらかというと何度も繰り返し濾過して純度をあげていくような、丁寧に検証しながら雑味を取り除く作業が主なのです。
作品タイトルの件、タシロの場合 往復書簡28 より

そういう感覚すごく面白い。
私は言葉でも風景でも元々のものから膨らんで変化してゆくことで制作をしているのですが、タシロさんはその逆なんですね。
タイトルが制作より先にあるのは、タシロさんが元々は図書館司書で言葉を大切に学んだ方だからかもしれないですね。コンセプトも明確ですし、私より現代美術的な作品を制作される方だな〜と思っております。
私は現代美術家…..と言うより絵画を制作している、絵描きという方がしっくりきます。これは自分の肌感覚なので、外からみたら現代美術だろうが抽象画家だろうが同じだとは思いますが。

ということで、今回のお題。

さてさて、ふたりそろって言語化の壁にぶつかっていることが明らかになりましけど、この問題はタイトルをつける時だけでなく、在廊時などの受け答えにおいても発生しますよね。
小河さんは個展会場によく在廊されている印象があります。頻繁に聞かれる質問や印象的なやりとり、気をつけていること、お客様がとぎれた時間帯の過ごし方など、在廊時のお話をぜひ伺いたいです。
往復書簡28より

私、個展会場には大体います。
自分が見たいものを描いているというのがありまして、自分の絵を見るの好きなんですよね(笑)。それに自分の家だと作品だけをゆっくり見ることできないので、ギャラリーの白い壁に飾られてる状態で見れるなんて、こんな幸せなことってない。次の展開を考えたり、お客さまがいらっしゃれば、反応を見れたり。会場にどれだけいても飽きないんですよね。

お客さまとのやりとりでは、個展の場合はSNSを見て来てくださる方がほとんどなので、私が書いてたことに対する質問や作品の制作過程について聞かれることが多く、初めから突っ込んだやりとりができるので会話もしやすいです。
反対に百貨店のグループ展だと抽象絵画に興味のないお客様もいらっしゃるので、なぜこのような作品(抽象)を描いているの?と聞かれることも多い。この質問、「抽象絵画って何?」という素朴な疑問から「具体的に描けないから抽象で誤魔化してるんんじゃないの?」というニュアンスのものまで含まれます。どうお話して作品に興味を持ってもらえるようにするか……そういう時に以下のような昔描いたデッサンなどを見せると安心した顔をされる方も多い。そこから具象絵画から抽象絵画への流れを絵画史を含めて自分がなぜ抽象絵画を描いているのか、表現したいものは何かなどをお話しします。

武蔵美1年の時の木炭デッサン 左から 『ニケ」「馬頭」「人物ヌード」
下段 今年2022年に描いた犬のスケッチ

お客様と繰り返しお話しする中で、より自分のコンセプトがはっきりすることがも多いですし、自分が思ってなかったことを気づかされることもあって学びになります。
それに制作しているときは1人ですが、出来上がったものは時間を超えてより多くの他者と繋がることができます。在廊してお客様とお話しするとそれを実感できて、次に向かってゆくエネルギーにもなるので在廊が好きなのかもしれません。

お客様が途絶えたときは事務仕事をしています。作品画像を撮ってSNSにあげたり、ご購入が決まった作品の最終チェックをしたり、お礼状を書いたり作品リストを更新したり、充実した時間を過ごしています。

タシロさんは在廊中どうしていますか? いろんな方が来られるとは思いますが。

そして次の質問ですが、タシロさんは制作に行き詰まった時、どうしてますか?
今日はダメだな〜って時もあると思うんですよ。そういう時の区切りの付け方や回復方法などありましたら教えてください。

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