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人は出会うべくして、出会う

映画「糸」を観てきました。

ネタバレなしで、映画の総評をすることは難しいので控えますが、個人的には凄く良い作品だったのではないかと思います。

音楽、映画、アートの良し悪しは主観が入ってしまうため、私が観て動かされた感情が、必ずしも一致するわけではないので、その点はご理解いただければと思います。

何が良かったのかというと、まずは「糸」という名曲の世界観にインスピレーションを得た物語を作ってくれたということ。

そして、この「糸」は様々な人に歌われて、歌う人によって、聴く人によって、さまざまな出来事を想起させてくれる曲ということ。

テーマはひとつではありません。それは映画も同じで観る人によって感情移入されるポイントをいたるところに散りばめているようなストーリーでした。

その中で、自分の人生と重ねてしまったシーンがありました。ちょっと映画の話から少し逸れてしまいます。

本当はこういうこと書きたくないし、心に留めておきたいんだけど、なんか無性に書きたくなったので。消すかもしれませんが……。

「人は出会うべくして、出会う」

というセリフが映画のワンシーンであるんですが、全く同じことをチームのメンバーに言われたことがあります。

実は、そのメンバーは2019年7月14日に亡くなりました。

2018年9月に大腸に癌が見つかり、その日から彼女の闘病生活がはじまりました。私はちょくちょくお見舞いに行って、彼女が好きな小説を買って病院へ足を運んだり、「がん封じ」で有名な唐泉寺へ足を運んで参拝したり、彼女が元気になるのであれば何でも....という気持ちで行動しました。

毎日の辛い闘病生活の中で、たびたびメールでもコミュニケーションを取っていたんですが、あれは忘れもしない2018年12月30日にいただいたメールです。

今でもそのメールは保存していますが、一年の感謝の中に綴られた文章の中に先ほどのセリフと同じことが書かれてました。

「原田さんには感謝の気持ちでいっぱいです。人は出会うべくして出会うという言葉を、私はひしひしと感じています。」

言葉になりませんでした。こんなこと、人生で言われたことがなかったので、嗚咽と涙が止まりませんでした。

その年の思い出フラッシュバックです。

「原田さんに大事な話があるんです……」と言われ、仕事の帰り道での病気の告白です。

歩きながら話してたんですが、今後のことを話そうかと、立ち寄ったスタバで泣いていたのは私の方で、彼女は笑顔で「まずは5年生きます」と言ってて、なんて強い子なんだろうと思いました。

私自身、その時は病気の社員対応に関する知見を持っていなかったので、必死で学んで、今使える有給休暇日数の確認、傷病休暇やその他使える制度など知見をためていきました。

病院にお見舞いに行くたびに変わっていく姿...一時は「今は会えません」と言われることもあったり、そんな状態でも前のめりの姿勢を見せて、「原田さん、なんとか仕事できないですか?」と言ってきて、なんて強い人なんだなと。

なんとか環境を整えてあげることはできないか?与えられる業務はないのか?を部長と一緒に考えて、自宅療養になれば在宅勤務という形で仕事をしても良いということになりました。

2019年6月頃は体調も良かったということもあって、人事と面談をした上で業務を任せても問題ないという判定をいただければ、仕事ができるということで彼女も張り切っていました。

しかし、7月1日に私はお見舞いに行った時、いつもの元気な姿ではなく、起き上がることもできないほど体は弱っていました。

ちょうどお見舞いの翌日に人事面談をする日でしたが、本人にこの状態を人事に見られると、業務できる状態ではないと判断されると思い、翌日の面談は回避するようにお伝えしました。

その日から2週間後です。ご家族から私宛に電話がありました。

7月に一度回復したものの、2019年7月14日の早朝に息を引き取りました。彼女と出会ったのは2018年1月....そこから1年7か月、とても濃い経験でした。

「なぜ、生きていくのか?」という答えを教えてくれました。闘病生活の中で彼女は一度も私の前で弱音を吐きませんでした。

本当に強い心を持った人でした。

本当に残念であり、無念でもありますが、彼女の生き様、言動、勇気に対し、改めて心から敬意を表したいです。

私をひとつもふたつも成長させてくれたのは、間違いなく彼女です。彼女と出会わなければ、今の自分はありません。

「人は出会うべくして、出会う」

彼女があの時、私に送ってくれた言葉は彼女にまんま送り、改めて感謝の気持ちを伝えたいです。

出会ってくれてありがとう。もちろん、自分の中ではまだ一緒にやってる気持ちだし、もちろんもう存在しないんだけど、気持ちの中では今でもメンバーなんだよね。

出会うべくして出会って別れて、それによってまた出会いがあるわけで……

そういうもの全て含めて、人とつながっている「糸」って、ほつれたり切れちゃったり、でもその切れた糸がまたどこかで繋がっているんだろうなと、この映画を見て思いました。

自分のこれまでの人生の登場人物に想いを馳せ、感謝し、今を大切に生きていきます。

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