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コミュニティ戦略で組織横断のシナジーを実現する

どうも、ヌーラボの原田(@yasuhirox)です。

私はマーケティング部を率いていますが、実際にはマーケティング、セールス、カスタマーサクセス、そしてマーケティングオペレーションの4つの組織を見ています。

一見、これらの組織が一体となって機能することは少ないように思えますが、実際にはそれぞれが特化した組織として成り立っています。

ただし、これらの中には役割と組織名が一致しないユニットも存在します。今回、議論の対象としたいのが「コミュニティ」の位置づけです。

そして、そのコミュニティの位置と関連して重要になってくるのが、組織の横のつながりです。

先日、組織の連携について上記のようなポストをしているので、この点を深く掘りながらも、コミュニティの位置付けについて、私なりにまとめてみようと思います。

コミュニティを活用したマーケティング戦略

まずは、コミュニティの位置付けについてです。そこでひとつ挙げなければいけないことが、現代のマーケティングの現場では、企業のメッセージがお客様に届きづらくなっているという課題です。

この状況を打破するために、コミュニティマーケティングの重要性を強調し、特にコミュニティをマーケティングの中核的な組織、ユニットとして位置づけるべきだと僕は考えています。

この考えは、コミュニティマーケティングの第一人者である小島さんの理論「コミュニティを通して売る(Sell through the community)」にあります。僕自身、一番近くで学ばせていただいているので、血肉になるまで、この書籍は読ませていただきました。

コミュニティは、特定のプロダクトに既に関心を持つ人々で構成されていますが、共通の興味関心を持つ人たちが多く集まればよいだけではないのです。書籍にはこのように記載されています。

マーケティングにおけるコミュニティは、集まることが目的ではありません。集まった人が情報を発信し、拡散しないといけない。つまり、コンテンツ生成装置(Contents Generator)なのです。

ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング

その発信者をどう増やしていくためにはどうすればよいのか?顧客同士の交流と情報発信を促すことで、どのような効果が期待できるのか。考えられるのは下記のようなことです。

ブランド想起とエンゲージメントの向上

コミュニティは、ブランドの想起と理解を深めるための理想的な「場」です。マーケティングがコミュニティの運営を担当することにより、プロダクトやサービスの特長、使用方法、および成功事例を共有することが可能となるため、ブランド想起を体験を交えながら伝えることが可能です。また、顧客と直接対話することで、そのニーズ、そして、顧客が実際に感じる価値を直接聞くことができます。

効果的なリード生成と顧客育成

コミュニティを活用することで、興味関心を持つ潜在顧客を引きつけ、彼らを質の高いリードへと変換することが間接的に可能となります。コミュニティ内での積極的な参加は、参加者の購買意欲を高め、製品やサービスへの関心を具体的なアクションへと動かします。実際にコミュニティ内で顧客同士のコミュニケーション、情報共有からプロダクトのユースケースを学ぶことで顧客育成にもつながります。そして、また、このプロセスは、従来の広告やプロモーションよりも高いROIをもたらすことが多いです。

顧客理解と良質なフィードバック

マーケティング部門がコミュニティを管理することで、一過性の関係ではなく、長期にわたる関係を顧客と築くことができます。この持続的な関係から顧客理解につながって良質なフィードバックが生まれてきます。良質なフィードバックが生まれることで、それはプロダクトの改善点でもあり、顧客のファクトから生まれた課題、顧客が実際に体験した内容に基づいたプロダクトの魅力を知る場所となります。

以上のことから、コミュニティは単なるリード生成の場ではなく、実際の売上に直接貢献する重要なプラットフォームとなり得るのです。

また、既存の顧客の声を大切にし、顧客の声を大きくしていくことで新規顧客を獲得するというアプローチは、現代のマーケティングにおいてますます重要になっているように思います。

顧客自身が製品やサービスの魅力を語ることは、企業からの一方的な広告よりも信頼性が高いと受け止められるため、新規顧客の獲得に直結します。よって、コミュニティを通じて売るという戦略は、今後のマーケティングの主流となり得る有効な手段であるわけです。

カスタマーサクセスにおけるコミュニティの役割

しかし、コミュニティはマーケティングだけではなく、カスタマーサクセスにおいても重要な役割を果たします。

BtoBのサービスにおいては、カスタマーサクセス部門がコミュニティを担当することもありますが、その場合、顧客理解や、顧客エンゲージメントの向上など、長期的な顧客保持が大きく促進され、LTV(ライフタイムバリュー)の向上に貢献します。

この戦略的なコミュニティの配置によって、企業全体の成果にも大きく寄与できるということです。

エンゲージメントと満足度の向上

コミュニティは顧客が同じ興味や課題を持つ他のユーザーと交流する場を提供します。カスタマーサクセスがこのプロセスを管理することで、顧客は製品に関する深い理解を得ると同時に、問題解決のサポートを互いに提供することが可能になります。これにより、顧客はより積極的に参加し、製品やサービスに対する満足度が高まります。

顧客ロイヤリティの強化と顧客理解

顧客がコミュニティ内で積極的に交流することで、製品への愛着が高まり、顧客ロイヤルティが強化されます。これは、長期的な顧客保持に直接的に寄与しますし、それによって顧客理解にもつながります。長く使い続けている人たちを理解することは、マーケティングにおいては最も重要です。どこに価値を感じてくれているのか、コミュニティを利用して顧客理解に繋げていくことが可能となります。

オープンコミュニケーションによるプロダクト改善

顧客からの直接的なフィードバックは、プロダクトやサービスの改善に不可欠です。コミュニティ内でのオープンなコミュニケーションを通じて、顧客は自らの経験を共有し、改善点を提案することができます。このフィードバックは、プロダクト開発チームが顧客の声を直接反映させるための貴重な情報源となります。

以上のことから、カスタマーサクセスがコミュニティの運営を担うことで、顧客との関係を深め、持続的なエンゲージメントを促進するとともに、企業の成長に貢献します。

正直申し上げると、弊社のコミュニティはマーケティングを目的としている部分があるため、カスタマーサクセスにおける領域については、僕自身もまだまだ勉強不足なので、カスタマーサクセスにコミュニティを置いている方々から色々と学ばせていただきたいです。

マーケティング部門なのか?カスタマーサクセス部門なのか?

どちらの部門に置くことが正解ということはございません。僕自身、どちらも正解だと思っています。

しかし、それ以上に重要なのは、コミュニティの目的が何であるかを理解することです。

コミュニティの目的がマーケティング寄りであれば、その活動が新規顧客獲得やブランド認知の向上に直結することが期待されます。一方、カスタマーサクセス寄りであれば、既存顧客のエンゲージメントの維持や顧客満足度の向上が主な目標となります。

このように、コミュニティをどちらの組織に配置するかを決定する際には、その目的を明確にすることが必要です。

そこで、小島さんが唱える「OWWHフレームワーク(Objective, Who, What, How)」を用いて、コミュニティの目的を定義し、対象となる顧客層(Who)、提供する価値(What)、実行方法(How)を明確にすることから始めると良いでしょう。

つい先日開催されたCMC_Sendaiの資料を貼っておくので、読んでいない方は目を通しておきましょう。

つまり、コミュニティの目的に基づいて適切な部門に配置することで、組織全体の戦略的な目標達成に貢献し、その効果を最大限に引き出すことができるということです。

ちなみにこの書籍はマーケティングでもカスタマーサクセスでもなく、「コミュニティ」の本質を解いた書籍なので、こちらを読んで目的をどちらに置くかを決めてみてもよいかもしれません。

コミュニティを独立させた方がよいのでは?

さて、ここからが本題なわけですが、今の組織でのコミュニティの位置は、マーケティング内に置いています。しかし、組織が縦割りになっておらず、The Model型の組織をすべて見れている現状を見ると、コミュニティを独立させることにより、その潜在能力を最大限に引き出せるのではないかと昨年末あたりから思い始めました。

昨年、このような組織にしていきたいと考えて、描いていた図です。

このように、コミュニティはマーケティングの部門内で影響を与えるわけではなく、もはやビジネスをグロースさせていくにあたって、各部門と深く結びついているわけです。

そう考えると、マーケティングの機能としてマーケティングの配下に置くのではなく外に出して、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスまで連携し、その役割と位置づけを正しく理解し、組織内で適切に位置づけるべきだと考えています。

これはあくまでも僕がマネジメントしている組織の話なので、再現性は難しいかもしれません。また、会社によってコミュニティの定義も異なるため、そこのすり合わせも必要です。

まだ、これは頭の中で構想を描いている段階で、実現できていないのですが、こういう組織にすることで、コミュニティと他部門との施策の掛け算がしやすくなり、よりスピード感を持って、ビジネスをグロースさせられるのではないかと考えています。

そして、顧客起点でかつ顧客が生成するコンテンツを量産できるようになるはずです。なぜか、ここはUGCとは言いたくなかったので…UGCなんですけどね。

部門間連携を加速するコミュニティ

では最後に、このポストについて深く掘り下げていきます。なぜ、このポストをこのタイミングで掘り下げたのかというと、先ほどのコミュニティをどくりさせた時、この横と縦の連携が必須になってくるからです。

組織の持続的な成長を支えるためには、部門間の横の連携を強化することが不可欠だと僕自身は考えています。そして、この連携を強化するためには、何をすべきかを今から考えています。

そこで必ず必要となってくるのが、全部門が共通のビジョンと目標に合意し、それに基づいて各自の役割と責任を明確にすることです。このプロセスを進めるために、経営陣は戦略的計画会議を定期的に開催し、部門リーダーたちと共に目標を設定します。共有された目標は、各部門の日常業務において意思決定の指針となり、組織全体としての一体感を醸成します。

次に、異なる部門間で定期的なクロスファンクショナルミーティングを行うことが重要だと考えています。これにより、部門間のコミュニケーションにはどうしてもブロッカー(人だけではありません)が存在します。そのため、コミュニケーションが促進されるためには、各部門の進捗状況や課題がリアルタイムで共有されること、透明性を持ったマネジメントは重要です。

部門を跨ぐ業務のコミュニケーション、マネジメントにおいては、前回の記事でもお話ししたチームワークマネジメントの記事を読んでみてください。

現在、マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、そして、マーケティングオペレーションの各部門が持つ独自の視点と専門知識が生かされ、より革新的で効果的な活動が生まれてきています。

ここにコミュニティが加われば、これらの部門間でさらに強固な絆が築かれ、組織全体の連携が一層強化されるでしょう。コミュニティを介して、顧客から直接のフィードバックを受け取ることができ、それを各部門が共有することで、顧客ニーズに対する迅速かつ効果的な対応が可能になります。

さらに、コミュニティを通じて得られるインサイトは、プロダクト開発やマーケティング戦略、カスタマーサービスの改善に役立ち、企業のイノベーションを加速させられると信じています。

まとめ

コミュニティを中核的な位置に置くことで、マーケティングのキャンペーンやカスタマーサクセスの取り組みが顧客との実際の対話に基づくものになり、顧客の声が直接プロダクトやサービスの改善に繋がっていきます。

また、組織内におけるコミュニティの存在は、部門間の壁を低減し、よりフラットで協力的なカルチャーを育むためのカタリストにもなります。コミュニティを活用することで、従業員も顧客も同じ目的に向かって働くことができ、それが組織の透明性と信頼を高める要因になって、組織は継続的な成長を遂げることができると信じています。

最後にお知らせです。

ヌーラボでは、Backlogユーザーによるコミュニティ「Japan Backlog User Group 」通称JBUG(ジェイバグ)が毎月各地で開催されています。

お住まいの近くで開催される時はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか?Backlogを利用したユースケースを学ぶだけではなく、コミュニティの運営についても学べるかもしれませんよ〜。


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