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「実践 仕掛学」を読んで

大阪大学で仕掛学の教えている松村真宏先生の「仕掛学」の続編である「実践 仕掛学」を読みました。

実践編ということで、ページの半分以上を著者と教え子たちが実際に行った45の実例に割いています。成功例だけでなく予期しない結果となったものも紹介されていますので、仕掛を取り入れてみたいと思っている場合には多いに参考になると思います。

仕掛学とは、つい行動してしまうきっかけを作る仕掛けを体系的にまとめたものです。

行動経済学とのナッジと類似性が高いです。本書ではその違いも明確にされています。

ナッジは「つつく」で、仕掛学は「そそる」です。ナッジでは、臓器提供者の意思表示の「あり」をデフォルトにすることで臓器提供へと誘導するように、社会にとって良い方向に導くことを意図しています。

仕掛学では、選択肢を増やしてあげて興味を持った人が選んでくれれば良いという思想に基づくとしています(オルタナティズムという)。

ナッジは悪用すれば人を操ってしまいかねませんが、仕掛学はそのような悪意の部分を排除したものと解釈しました。

見ただけで使い方がわかるアフォーダンスについても、仕掛における未来を予期させるフィードフォワードに当てはまります。

アフォーダンスについてはこちら↓

事例の中で私がわかりやすかったのは、JR大阪駅の階段の利用促進を図った「大阪環状線総選挙」です。実際、大阪駅の環状線はエスカレーターに乗るのに行列がいつもできています。その緩和を目指すことを目的として「天満派か?福島派か?」をセンサーを用いてどちら側を歩くかで選挙を実施したものです。

エスカレーターを使いたい高齢の利用者はそのままでいいですが、せっかちな大阪人ですから、行列を作るよりもちょっと遊び要素のある階段があると使いたくなるはずです。実際に7日間の実施で階段の利用者が1日あたり1342人増えたそうです。

仕掛学には、FAD要件があります。すなわち、公平で誰も損をしない(Fainess)、誘引性があり思わずやってみたくなる(Attractivenss)、そして、仕掛ける側と仕掛ける側の目的が異なるけども視点を変えることで両方の目的が達成できる目的に二重性(Duality of purpose)です。

事例をよくみていると、身の回りにも仕掛によって思わず行動しているものってあるのだな、っということに気付かされます。

課題の解決に仕掛学の視点で取り組んでみるヒントにしてみたいと思います。


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