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「わかっちゃいるけどやめられない」セルフコントロール問題とは-行動経済学の理解と実践68

セルフコントロール問題とは、人が特定の行動をとった方がいいと頭ではわかっていても、ついついその行動と逆のことしてしまうことを言います。

ダイエット、お酒、たばこ、衝動買いなど、わかっていてもついついやってしまうことは誰にでも一つや二つはあると思います。

だいたい、こういう時って「明日からやろう」とか「今日だけはいいだろう」といった自分への言い訳で、結局、次の日も同じことを繰り返してしまうものです。自分に厳しい(セルフコントロールのできる)人は、思い立ったらすぐに実行できてしまいます。

自分に厳しい人というのは、時間的整合性(Time Consistency)が取れていると言えます。時間的整合性は、伝統的な経済学における合理的活動に合致するものとされています。

一方で、行動経済学においては、時間的非整合性(Time Inconsistency)を認識しています。時間的非整合性は、消費者が現在の選択と未来の選択に一貫性がない状況を指します。具体的には、以下のような行動が見られます。

  1. 現在バイアス:目先の利益を過度に重視し、将来の利益を過小評価する傾向。例えば、将来の健康のために今ダイエットをすべきと分かっていても、目の前の美味しい食べ物に手を伸ばしてしまうことです。

  2. 自己制御の欠如:長期的な目標達成のために必要な行動を維持できず、短期的な誘惑に屈する。例えば、禁煙を決意してもストレスが溜まるとついタバコに手を伸ばしてしまうことです。

  3. 選好の変動:時間が経つにつれて選好が変わり、現在の計画が未来には実行されない。例えば、今日決めた運動計画が明日になるとやる気を失ってしまうことです。

これにより、消費者は短期的な誘惑に負けやすくなり、長期的な目標達成が困難になることがあります。

マーケティングへの応用

ナッジの応用:時間的非整合から時間的整合へと向かわせるためのナッジは、さまざまな場面で用いられています。たとえば、たばこの箱に記載された肺がんリスクの表示は法律で義務付けられたものですが、これは喫煙の抑制に向けたナッジの一例です。他にも、食品のカロリー表示や自動加入の年金制度など、消費者が健康や経済的に良い選択をしやすくするためのナッジが活用されています。

インセンティブ:時間的非整合性を克服するために、短期的なインセンティブを提供することも効果的です。例えば、フィットネスアプリが運動ごとにポイントを付与し、そのポイントを景品や割引に交換できる仕組みを提供することで、消費者の行動を促進できます。これにより、消費者は目の前の小さな報酬を得ることで、長期的な目標に向けた行動を継続しやすくなります。チート・デーもインセンティブの一つと言えるでしょう。頑張った自分へのご褒美として、この日だけは特別な許可を与えるのも良いかもしれません。

最後に、これらの手法を活用することで、企業は消費者の行動を効果的に導き、長期的な顧客関係を築くことができるでしょう。セルフコントロール問題に対する理解を深め、消費者が望む行動を取れるようサポートすることが、成功するマーケティングの鍵となります。

参考文献:



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