なぜ今、レコードがブームなのか?-行動経済学の理解と実践52
最近よく聞くのがサブスクリプションの影響で音楽CDが売れなくなったという話です。
実際に音楽をサブスクで聴くようになってからCDを買う理由がなくなってしまったと思っています。
月額いくらか払うだけで最新のアルバムがすぐに聴けるようになります。ちょっといいなと思う曲があったらその曲のアーティストの他の曲もストリーミングで聴くことができます。日々、その時興味を持った曲を選んだり、聞いている曲からおすすめリストも出してくれます。
好きなアーティストのCDを応援の意味で買ってあげたいと思うのにモノとして買う理由がないんです。
一方で、CDに駆逐されてしまったかのようなレコードの人気が上昇しているそうです。
日本だけでなく、世界中でレコード売上が伸びているそうで、イギリスではレコードがCDの販売を上回ったというのをニュース記事で読みました。
なぜレコードが復権しているのか?
理由は多々あると思いますが、いくつかは行動経済学的に説明がつきそうです。
1つ目は、所有することのうれしさです。デジタルのCDではストリーミングと音質に差がなく所有意欲が下がってしまいましたが、アナログ盤のレコードを持つことはコレクションとしての意義も持っています。
収集癖があるという人は多いですが、レコードの収集癖については主に2つの心理効果が影響しています。保有効果とスノッブ効果です。
保有効果
自分が持っているものに実際よりも高い価値を認めたくなるのが保有効果です。自分のものであるレコードに高い価値を認めたくなるのです。
スノッブ効果
他の人がストリーミングで音楽を聴く中で自分はアナログで聴いているという「他人とは違う」という思いが働いています。
2つ目が、音質の違いです、CDなどのデジタル音源では人が聞こえないとされる音域はカットされています。アナログ盤ではそういった音域も含めた音を収録するため深みのある音が楽しめるそうです。
また、レコードをかけるさいのノイズも趣のある音として親しまれています。CDに取って代わられた時は邪魔とされていたものが、今では温かみや深みとして受け入れられています。
さらに、レコード自体が扱いに手間がかかることも逆に好まれる理由です。
これらについては、バラ色の回顧とDIY効果で説明することができます。
バラ色の回顧
昔のことを当時よりも美化してとらえようとする心理効果です。懐かしさはその当時を知らない人でも伝播します。
DIY効果
自分が手を加えたもの手間をかけたものに対して価値を認めることをDIY効果、または、組立家具の小売から名付けられたイケア効果と言います。
3つ目が、レコードプレーヤーへの投資です。レコードを買うと音楽を聴くためにはプレーヤーが必要です。1台のプレーヤーを購入すると1枚のレコードを聴くためだけというわけにはしたくないでしょう。プレーヤーへの投資を正当化するためにはレコードを何枚も購入する必要があります。この投資心理はサンクコストで説明することができます。
先に払ったものの元を取ろう考えて追加の投資を繰り返すことを埋没費用(サンクコスト)といいます。自分の最初の投資が間違っていなかったと信じるためにも続けてレコードを買う必要があるのです。
まとめ
実は私もレコードに興味があるのですが、一度始めてしまうと「レコード沼」にはまってしまいそうで、今は踏みとどまっています。
一見すると非合理に見えてしまうレコード人気ではありますが、そこにある価値を認めているからこそと言えるでしょう。
そういったところにこそ愛着やファン心理は生まれてくるのでしょう。
新しい技術で市場を奪われてしまったモノの価値見直しのヒントになるかもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました。