つくりたいのは、九谷のあるくらしの実体験
先日、自宅の器のラインナップがふと気になって、食器棚にあるものを改めて見てみたことがある。
思いのほか僕が買うものには癖がありそうで、器はリムのついた青っぽいものが多く、それ以外だと小さいぐい呑や小皿、醤油皿などがいつの間にか必要以上に置かれていた。
誰しも何かしらの癖は持ち合わせているのではないかと思う。どんな優秀なプロ野球選手や甲子園のエースでも投球フォームに癖があるように、自分では気がつくことができない癖があるのが、人間だったりする。
僕の食器棚はまさしく収集癖のような癖を感じる、そんな構成だった。
ある一人の作家さんから聞いた興味深い話
一方で、興味深い話を聞いたのはちょうど一年前ぐらいのことだった。
2019年の春にセラボクタニの開業で小松にきてから、毎月一回必ずある会議でご一緒し、会議後の食事で一緒になっていた作家さんの一人。
小松九谷を代表する窯元、錦山窯の吉田幸央さんは、いつも食事の際に一緒にノンアルコールの飲み物を注文し、常に頭の中にある色々な考えに触れさせていただいて、とてもよくお世話になっている作家さんだ。
春先にあった全国規模の緊急事態宣言、飲食店が大変な状況を迎えている中ではあったが、一方で将来の店舗開業を志すようになっていた僕は、ちょうど一年前ぐらいの頃、
まだ産地では店舗開業について公にしていない中で、いつものように何かの用事があって錦山窯に伺い、いつものように幸央さんのカップでお茶が出てきて、近況を伺っていた。
確か、こんな話だったと思う。僕はこの話を聞いた瞬間すぐに、”器を使ってみてわかる価値”が感じられる、そんなお店を開こうと思ったのだった。
九谷焼=”高級でハレの日に使う器”というイメージ
九谷焼が飾られるか桐箱に大事にしまわれてしまう理由は、実は沢山ある。
一つずつ取りあげてもキリがないので省略するが、あえて僕なりの視点で一つ特筆するとしたら、飲食店が与えているイメージも大きいように感じている。
九谷焼は、僕の知る限りでは高級料亭やいい和食屋さんでしか使われていないことが多い。
僕が普段から接しているような、作品づくりに勤しむ作家さんの器が使われているお店は、(僕もそれほど高級なご飯を食べられる余裕がないので)たぶん片手で収まるぐらいしか無いように思う。
どれも高級料理店だ。だからこそ(それだけが理由では無いけど)一般市民が持つイメージとして、九谷焼は高級なご飯にしか合わせることができない、と思われてしまっているのでは無いか・・・、と思う。
・・・どうしてお店であまり使われないのか。シンプルに洗いづらさがあったり、割ってしまうことへの不安があったりと、実際に使う側に起因することも沢山あるが、
一方で産地としてカジュアルなご飯に使ってもらうようなシーンを作って来れなかったことも、大きな原因の一つであるように感じている。それは器をつくる側に起因することだと思う。
食と九谷のペアリングイベント「九谷餐会」はじめます
ちょうど一年前から時間が経過し、コロナ禍における創業融資の苦難を経て、目処が立ち始めた2020年の12月、
融資相談をさせてもらった担当者から「お店じゃなくてイベントで九谷焼を使ってもらうのってどうですか?」と言われたことを思い出した。(結局その銀行からは最初の面談後に断られる結果となった)
お店はお店で勝算がある。ただ、お店を始める前に、イベントでそのような機会を作って使ってみてもらうことは、お店づくりの参考にもなりそうだ。
と考えて企画書に起こし、各所への相談を経て、半年かけて作った食と九谷のペアリングイベント「九谷餐会」の初回開催を7月28日の夜に行えることになった。
会場はきっかけを与えてくださった、小松九谷を代表する窯元・錦山窯のギャラリー「嘸旦 -MUTAN-」にて。定員6名と少人数のイベントになるが、着々と当日への準備が進むにつれて、本当に楽しみになってきた。
初回となるSeason1-1「発酵する中華」の予約受付は、明日、7月10日(土)10時にオープン。興味ある方は、下記のイベント詳細からお申込ください。
つくるのは、九谷のあるくらしの実体験。私たちがまだ知らない九谷焼の新しい楽しみ方が、ここからはじまります。
最後に今回、九谷餐会の会場を特別にご提供いただく、錦山窯・吉田幸央さんとご家族の皆様、初回のゲストシェフを快くOKしていただいた、中華料理とシェリー酒の名店・西華房の浦山隼人さん、
素敵なロゴマークとビジュアルを作っていただいたデザイナーの森あんじゅさん、僕の考えていることを言葉に落とし込んでくださったコピーライターでサウナ好きの西垣強司さんに、心から御礼申し上げます。もしよければこちらのnoteも読んでみてくださいー!
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます☺️ 皆様にいただいたサポートは九谷焼のつくり手のお手伝いに使わせていただきます。