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連載:メタル史 1981年⑩Holocaust / The Nightcomers

スコットランド出身のHolocaust。N.W.O.B.H.M.の中では数少ないスコットランドのバンドです。上の画像は再発盤のもので、もともとは青っぽいジャケット。

オリジナルの配色

1977年に結成され、中心人物はギタリストのジョン・モーティマー。Holocaustは現在も活動中であり、ある時期からモーティマーがボーカルも兼任するトリオ体制となっていますが、このアルバムリリース当時は別にボーカリストがいて、ツインギターの5人体制。

あまり情報がないバンドですが、おそらく1981年頃の写真
多分右端がモーティマー

Black SabbathJudas PriestUFOBudgieLed ZeppelinRushなど70年代のハードロック、プログレッシブロックバンドから影響を受けたサウンドですが、基本的にスコットランド、エディンバラで活動していたのでロンドンとはまた違う環境で生活・活動を続けていたバンドです。どこかで読んだのですがUKの文化というのはイングランドの都市的な文化とスコットランドの田舎(カントリー)的な文化の衝突によって生まれている、という視点があり、確かに歴史的にもライバル関係というか、近しいけれど違う土地柄。スコットランドはUKの北部ですね。

スコットランド、濃い緑部分

スコットランドのメタルバンドはそれほど数が多くなく、有名どころだとお下劣パイレーツメタルのAlestorm、Thin Lizzyとの共通点もあるThe Almighty、60年代から活動するNazareth、メタルコアのBleed From Withinといったところでしょうか。こうして並べてみるとイングランドのバンドとは少し違う個性があるようにも感じます。アイルランドのバンド(代表格はThin LizzyU2)と似たようなものかもしれません。アイルランドは独立国、スコットランドはUKの一部という差はあれど、スコットランドも独立運動が盛んですからね(2014年にも独立投票が行われている)。イングランドとは一定の距離感があり、独自の気風がある。

Holocaustもスコットランドメタルシーンを代表するバンドの一つ。ただ、もともとの立ち位置がマニアックであり、N.W.O.B.H.M.マニアであるMetallicaのラーズ・ウルリッヒのお気に入り。彼らがSmall Hoursをカバーしたことで一般のメタラーに広い知名度を得るようになったバンドです。他に、Gamma Rayが本作収録のHeavy Metal Maniaをカバーしたりしています。

本作のプロデューサーはRobert Bell。他で名前を見かけない人です。スコットランドのスタジオにいたプロデューサーでしょうか。1981年、オリジナルリリース時はHolocaust自身のレーベルであるフェニックスレコードからリリース。完全なインディペンデント作品です。当時は流通の問題もあり表舞台に出ることはありませんでしたが、作品の完成度から知る人ぞ知る名盤としてアンダーグラウンドで広がり、時代を超えて聞き継がれてきた作品。

※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。

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1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…

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