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A Ray of Hope Vol.05 (明日の叙景 / nervous light of sunday / THA BLUE HERB) @ 渋谷CYCLONE 2023.2.24

今日はこちらのイベントに行ってきました。

明日の叙景THA BLUE HERBnervous light of sundayの3バンド対バンイベント。2022~2023は海外アーティストを中心にライブに行っていましたが、一通り見たい海外の大御所バンドは観れたので今年は国内アーティストのライブを増やそうと思っている昨今。日本のアンダーグラウンドメタル界で話題となった明日の叙景を観ようと思ってライブ予定を調べたところ、直近がこのイベントだったのでチケットをゲット。でもブルーハーブってヒップホップだよなぁ。名前は知っていたし音源もなんとなくは聞いたことがあるもののそれほど縁がなかったアーティスト。もう一組は完全に初。異種格闘技的なイベントコンセプトなのかと予想。全アーティスト、ライブは初見なのでどんな体験になるか楽しみでした。

今日の会場は渋谷サイクロン。そこそこ通っているハコです。

会場近くからすでに人だかり、階段にも行列が。今まで来た中で一番混んでいるかも。

中に入っても大入り満員です。客層は若め。服装や雰囲気も普段のメタルライブとは違う客層。ハードコアとヒップホップとメタルが混じっている独特の空間。

ほぼ定刻、19時に明日の叙景がスタート。アルバムジャケットのイメージだけでルックスを見たことがなかったんですが意外に美形というか、ビジュアル系の要素もあるのね。

アー写、美形

ボーカルとリードギター以外あまり動かず。音像は音源に近い印象。もっと棘が出ている感じもしたけれどそれはPAの問題か。ギターサウンドに関してはやっぱりシューゲイズの影響が強いんだなぁと思いました。ボーカルスタイル、歌い方とドラミングはブラックメタルだけれど、ギターサウンドやフレーズだけ見るとParannoulにも近い現代青春系シューゲイズ。ブラックメタル+シューゲイザーをブラックゲイズと言うようですがそれを体現した感じ。でも、ボーカルの動きが思った以上にビジュアル系なのは意外。

あと、ボーカルがブラックメタル的な絶叫だけでなく時々ポエトリーリーディング的なパートが入るのも特徴。

あと、ちょっと珍しいなと思ったのがベースがかなり前に出てくるんですよね。立ち位置が。それほど動かないプレイスタイルなので、そういうベースプレイヤーって後ろのベースアンプの近くにいて、リードギターとボーカルが前面に出てくる、という立ち位置はよく見るんですが、明日の叙景は弦楽器隊(リードギター、リズムギター、ベース)全員が前の方に出てきていた。ずっと4人がステージ前面に出ていた。最初のうちはボーカルだけ動きまくっていることもあって、まだステージングは過渡期なのかなという印象だったんですが、むしろこのフォーメーションが「全員で前に出る」という姿勢の表れなのかも。ライブが進んでいくにつれて引き込まれるものを感じました。最新作からの「キマイラ」の開放感を観て、「ああ、音楽的にも変化していく途上なのだなぁ」と実感。ここからDeafheavenのように独特の曲骨子を残したまま歌い方を変えるのか、最初が極端な音楽性であった分、変化の振れ幅を多く残している。可能性を感じたバンドでした。

ちなみに、明るくなったステージでボーカルの顔をよく見たらしっかりブラックメタルの顔だった。コープスペイントを落としたブラックメタラーですね。素顔でブラックメタルやるとこういう感じになるのか。

素顔のブラックメタラーのイメージ


転換を挟んで2組目、nervous light of sunday。完全に初見でしたが演奏がタイト。あと、メンバーが意外とベテラン。全員ルックスがいい味を出している。あとで調べてみたら20年以上のキャリアがあるらしい。

なんとなく勝手なイメージで若手バンドかと思っていたんですが違った。明日の叙景が熟成の途上だとしたらこちらは成熟を感じる。音楽的にはメタリックなハードコア。けっこうカッチリした演奏ですが曲構成はハードコア。フロアの盛り上がりも凄くて、メタルのモッシュとは違う、ハードコアのモッシュ。ハードコアの方が激しいんですよ。メタル系よりモッシュの半径も広いし、中の運動量も多い。ダイブも起きるし、こりゃ完全にハードコアだなと。

ハードコアのライブってスポーツ的な高揚感と幸福感を感じることがあって、今回もそんな感じでした。予定調和ではない、スパーリングのような感覚。一応ライブに行く前に音源は聞いてみたのだけれど、音源よりライブの方が好き。

音源だと緊張感とか切迫感が強いんですが、ライブだともっと開放感、幸福感を感じました。本物のバンド。


3組目、THA BLUE HERB。名前だけは昔から知っていて、それこそ日本のヒップホップのレジェンド、みたいな。90年代のヒップホップのディープなところにいるアーティストのイメージ。名前がブルーハーツとハーブ(マリファナ)をかけているのはいいセンスだなと思ったり(ハーブの意味はもっと後に知った)。

ライブスタート、それまでと違うノリ。完全ヒップホップ。曲を聞いたことはあるし、ライブ映像も観たことがあるからイメージ通りだったんだけれど、言葉の洪水に10分、20分、30分、とさらされていると不思議な感覚になってくる。よくこれだけ言葉が出てくるなぁという感嘆と、今日のライブのシチュエーションをふんだんにもりこんだMCと歌詞が混然一体となった言葉。それがいやおうなしにステージと自分とをつなげていく。まるで友人と会話しているような、思い出を共有しているような。ビートはドラマだから、それは単なる会話ではなくドラマなんですよね。何気ない日常のシーンにBGM入れると劇的になるし、あるいはドラマからBGM取り去ったら急に日常に見えるし、そんな感じ。音楽はドラマ。

ちょうど先週、札幌に行ったんですよ。雪景色の札幌。曲の中で札幌、すすきのが散々出てきて、その旅が続いているような感覚になりました。

凄い情報量で、言っていることも「ん?」と思うことがない、納得ができる内容が多かった。BOSSこと清水さんは52歳。彼の方が年上だけれど彼の言うことがある程度は分かるようになってきて、創作というか保証がない仕事、個人事業主で生き続けていくことの葛藤とか不安とか、キャリアを積んでいくことで若い頃の自分に比べて今はどうなんだろうとか、人との別れも増えてくるとか、それでも今ここにいる自分、この瞬間に集中しようというコンセプトは自分にとっても共感できるものでした。これを説教臭くなく、でもしっかりと伝えられるのはヒップホップという形式ならでは。

最後は客席に降りてきて盛り上げる。

そしてステージダイブして外に運ばれていきました。すげーもん観たわ。


ライブ終了。出口で手書きのフライヤーを渡される。これは凝っているなぁ。日本のライブハウス文化。

今日のライブ、振り返ってみると3バンドとも「DIY」精神があったかも。THA BLUE HARBの曲で「ないならつくる、いないならなる」という言葉があったのですが、まさにそんな感じ。自分が欲しいものを自分で作る、作っている、作ってきた人たちが集まったライブ。僕もそう在りたいと改めて思った夜でした。

土曜の夜の渋谷の街は人が多かった。スクランブル交差点に水カンがかかっていた。みんな夢の途中なんだな。

それでは良いミュージックライフを。

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