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Loudness / SUNBURST~我武者羅

総合評価 ★★★★★

今年最後のレビューはこちら。素晴らしい、ジャパニーズメタルの総帥、オリジネイターたる自負と気概を感じる見事な新作。40周年、29作目にして初の2枚組。魂のこもった凄味とどこか未だ粗削りな初期衝動が同居する唯一無二の世界観。これだけベテランなのにコンスタントにアルバムを出し続けるのは日本市場の特異性もあるだろうし、本人たちのストイックさもあるのだろう。コンスタントに出す、ということは好不調がそのまま曲作りに出るわけで、また、どの曲もアイデアスケッチ的になる。いろいろなアイデアを詰め込むことはできるけれど、よりその時々の感情や生活が反映される、というか。それゆえ生々しさや粗削りな感覚があるのだろう。そうした楽曲を有無を言わせぬ迫力にしているのはベテランゆえの(録音や編曲への)知識と、あくなき鍛錬に支えられた演奏技術あってこそ。

本作の発売日、12/29に六本木で開催されたライブに参加したのだけれど、高崎晃の80年代ママのギターヒーロー像に驚いた。名前はもちろん知っていたし一通り聞いては来たもののどうも今までそこまではまり込んだことがなく、「ちょっと良く分からないバンド」でもあったラウドネス、いわゆる「ジャパメタ」をそれほど聞かないで来たからだが(唯一ジャパメタ的なものに触れていたのは筋少の橘高曲だけだったりする。X Japanも聖飢魔IIもラウドネス同様「知ってはいるけれどハマっていな」かったし)、ライブを観てその存在感に圧倒された。そしてハードコアとかジャパメタ(V系を含む)の源流というか、Loudnessの歴史=日本のメタルの歴史とも言えるんだなぁと改めて再認識。初期Xとかかなりラウドネスっぽい曲があるよね。相互に影響を与えているのだろうけれど。

また、ちょっと独特の不協和音感というか歪みがあって、それがどうも苦手というか「どうしてそうなるのか」が分からなかったのだけれど(チューニングはあっているはずなのに、どうも和音が合っていないように聞こえる)、たとえばCrazy Nightのリフ、ギターとベースがどうもあっていないように聞こえる。しかし今回ライブで見てみて、やはりその感覚が変わらなかったので「ああ、これは意図的にやっているんだ」と腹に落ちた。楽器特性やプレイスタイル、音作りで微妙にヘルツが違うのだろうけれど、それが真っ向からぶつかり合うから鋼鉄感が生まれる。それもこのバンドのサウンド特異性なんだろう。本人たちも意識していないのかもしれないけれど、80年代メタルど真ん中のパワーコードを活用した華やかなリフにもLAメタル勢にはない奇妙な「歪み」や「引っ掛かり」の感覚がある。これはジャーマンメタル勢にもあるから、ベースの音作りに何か秘訣があるのかもしれない。あえて弦楽器隊の音のせめぎあいを前に出すというか。

なお、上記した通りそれほどハマったことはないはずなのだけれど、なぜか昔「高崎晃のようにギターが弾けたら楽しいだろうなぁ」とは思った記憶がある。とにかく音や存在感に迫力を感じていたんだな。今回、生で見てみてその印象は変わらず、まさにギターヒーローがそこに存在した。「日本が世界に誇るヘヴィメタルバンド」の意味がようやく体感できた気がする。あと、二井原実のボーカルも何気に凄い。ずっと2時間以上あのテンションで声が出続けるというのは驚異的。ライブバンドとしては現存する世界トップレベルのメタルバンドの一つだと思う。

【CD Disc1】
01. Rising Sun-Instrumental ★★★☆

マーチングの行進曲のようなリズム。このバンドの特徴的なコード進行、あまり展開しないというか、ちょっと不協和音感があるというか。何か独特な引っ掛かりがあってそれは好き嫌いが分かれるところだと思う。なんだろう、ハードコア的というのでもないし、この「ちょっと不協和音な感じ」が日本的な感性なのかもしれない。何なんだろうなぁ、USのバンドにはあんまりない感覚な気がする。ジャーマンスラッシュとかジャパニーズハードコアとかにはあるんだけれど。チューニングがずれているわけでもないだろうし。

02. OEOEO ★★★★☆

歯切れの良いリフ。響くベース。けっこうヘヴィでミドルテンポなナンバー。コーラスはメロディアスだけれどスピード感は薄目。歌詞からもっとアッパーなイメージだったがけっこうどっしりした曲なんだな。ビートが絡み合う感じで面白い。高度な演奏技術が必要なタイプの曲。存在感のあるギター。80年代然とした「ギターヒーロー」が当時のままでいまだに健在なのって考えてみるとけっこうレアかもな。もちろん、さまざまな変遷(インド三部作とか)を経て現在があるわけだけれど。コーラスはジャパメタ的というかアニソン的なメロディ。悪い意味ではなく、80年代のアニソンはかなりジャパメタっぽかったんだよな振り返ると。ダンバインとぶとか、影山ヒロノブ歌唱曲はもちろんだし。

03. 大和魂 ★★★★★

ややアップテンポなナンバーへ。これは12/29の六本木のライブでもやった曲。コールアンドレスポンスタイプの曲。筋少、橘高曲っぽい(というか橘高がラウドネスチルドレンなのだけれど)。コーラスでテンポチェンジする、そのあたりのアイデアの詰め込み方、力技でねじ伏せる感覚がこのバンドの特徴といえば特徴。でもギター、ベース、ドラム、ボーカルというミニマルな編成なんだよな。ギターリフの歯切れの良さ。ギターとボーカルの絡み合いが前面に出てくる。80年代的なギターヒーローVSハイトーンボーカルというスタイルをそのまま保持しながら先に進んでいる。もちろんリズム隊も前に出る時は出てきて存在感はある。お、この曲はギターソロの時はベースだけになるな、ライブっぽい作り。リフとソロを重ねていない。こういう感覚はハードコア的かも。何度も展開する曲。

04. 仮想現実 ★★★★★

こちらもライブでやったナンバー。モダンなヘヴィネスを感じさせるリフながらテンポはアッパーでコード展開感もある。これは90年代とインド三部作を経たから出せる音像。緊迫感があって不思議と耳に残る節回し。これはバンドサウンドがかっちり噛み合っているように感じる曲。グルーヴィーなメタルを血肉にしていることが分かる一曲。音響も迫力があって良い。

05. Crazy World ★★★★☆

アップテンポなナンバー。なだれ込んでくるようなリフ。こういうJ-METALというか、奇妙でねじくれた、さまざまな要素を無理やり継ぎ合わせたような曲を滑らかに演奏されるとスリリング。先の展開が読めないというか、逆に言えば流れるようなメロディがあるわけではなく、どこか無理やりなメロディなのだけれどバンド全体の演奏力や勢い、熱量でダイレクトにねじ伏せてくる。音そのものの迫力が強い。歌詞もけっこう直接的で分かりやすい。こうして改めて聞くとLoudnessってビジュアル系のルーツな感じもある、直接的なルーツ。だからV系っぽい奇妙で継ぎ接ぎ感もある曲構成とも言えるが、それが凄い演奏力と存在感で鳴らされるから圧倒される。なんだろう、ギターリフを主体に作っていくとこうなるのかな。

06. STAND OR FALL ★★★★☆

ちょっとダークでホラーな感じのイントロから。英語詩の曲。ベースの山下作曲(他は基本的に高崎晃作曲)。ベーシスト作曲だけあってコード進行がくっきりしている。80年代メタル的というか、ちょっとジャーマンメタル感もあるコーラス。かっちりしたパワーメタル。この曲はソロのバックにリズムギターというかリフを刻むギターが入っているし、一部ツインリード的なソロもある。音の重ね方がパワーメタル的。ボーカルスタイルは違うが曲構成的にはAcceptにも近い。

07. The Sanzu River ★★★★☆

スロウなテンポ、ややダークな雰囲気の曲へ。ギターが泣く。ボーカルが高崎晃。不思議な脱力系の声をしている。二井原実の熱唱、ハスキーでワイルドなボーカルとは違うマイルドでちょっと幼めの声が面白い。ちょっと言葉の発声が独特。うーん、、、あまり類似がいないが小室哲哉の歌声のような独特さ。この曲はテーマからしてもそうだが人間椅子みたいな曲。お、ボーカルが喚きだした。この曲は高崎晃がドラムも担当しているのか、独特の重さというかドタバタ感がある。ということはベース以外高崎晃がやっているということか。本人の嗜好が色濃く出た曲。

08. 日本の心 ★★★★★

アップテンポな曲に。多少切った張ったの時代劇っぽい、チャンバラ感のあるリフ。お、歌舞伎の見得のようなボーカル。日本的な感覚が強い曲。「おもてなし~~~」と朗々と歌い上げていてマジなのかギャグなのか。音像はシリアスなんだけどなかなかワードチョイスが独特。力技でずれるコード進行、途中からNWOBHM的なリフ展開を見せる。邪悪なリフ。そこに和風(?)なボーカルが乗る。面白い音。

【CD Disc2】
01. 輝ける80's ★★★★☆

ここから3曲は80年代に作っていた曲をリバイバルして作り直した曲らしい。ちょっとヘアメタル感のあるリフ。華やかなギターサウンド。ボーカルは暑苦しくシャウトスタイル。ミックスも少し変わったな、ややボーカルが前に出てきた? 音の隙間が増えたのか。お、コーラスではポップな色合いが強い、やはりボーカルが比較的表に出るな。コーラス(「やればいい~」の箇所)でルート音が展開しないのがラウドネスらしい、ここで展開してフックをつけるより、同じコードで押し通すんだな、パワーメタル的。途中で高崎晃ボーカルが少し入ってくる。ここで急に高崎ボーカルが入ってくるとライブだとやや脱力感があったなぁ。スタジオ盤ならまだしも、ライブだと二井原との熱量が違いすぎる。そのギャップが面白くて印象に残っているから作戦通りなのだろうけれど。印象を変えたくて高崎ボーカルを入れているのだろうから。

02. エメラルドの海 ★★★★★

これまた80年代感があるリフ、だけれど軽やかさと同様にヘヴィさがある。ベースやギターの低音が強くてどっしりしている。この硬派な感じは独特だな。この曲はメロディアス感が強い。ああ、重さがあるのはベースがどっしりしている、あまりルート音が激しく動かないせいもあるのかもな。Judas Priestスタイルとも言える。こういうテンポのギターリフはルドルフシェンカーばりの鋭さがある。いや、高崎晃は高崎晃なのだけれど。ステージアクション的にもスコーピオンズやAccept的なフォーメーションがあったし、流れを汲んでいるんだろう。

03. 天国の扉 ★★★★☆

お、ポップなリフ。いかにも80年代的というか日本で言えばアニソン的な展開。音はものすごく重厚感があって音響的にはアニソン感はないけれど、それこそ影山ヒロノブが歌えばドラゴンボールの主題歌になりそうな感じ。いや別にこのまま主題歌になってもいいんだけれど。そういえばラウドネスってタイアップしたことあるのかな。Jelousyとかタイアップついてたっけ。あ、アニソン3曲やってるんだな。そういう歴史も感じさせる曲。

04. All will be Fine with You ★★★★☆

スローブルースなナンバー。こういうテンポの曲はなんとなくしっくりくる、関西フォーク的。B'zにもこういうテンポの曲はあるな、Don’t Leave Meとか。Disc2の方がポップというかJ-ROCKの語法も取り入れつつワールドレベルのメタルサウンドで鳴らしている感じ。音響、音色は欧州の一流クラスのバンドにも引けを取らない。じっくり盛り上がるハードロックバラード。いかにもギターで作った感じの曲。

05. Fire in the Sky ★★★★☆

ヘヴィなリフがなだれ込んできて、ピッキングハーモニクスが舞う。90年代初頭のスラッシーさやグルーヴィーさもあり、緊迫感が高い曲。グルーヴィー一辺倒で終わるのではなく途中からビートアップ、テンポチェンジするのは緩急の妙。昔、アルバム数枚分グルーヴメタルをやったからこそ身に着いた手法が活きている。

06. HUNGER for MORE ★★★★★

疾走曲。勢いが良い。作詞が二井原実/高崎晃名義、ちょっとボーカルの節回しというか言葉の載せ方が独特。ちょっと自由にボーカルが言葉を乗せてみた、という感じなのかな。しっかりテンションを上げていくメロディ展開、曲構成はお見事。お、そこからツインリードでネオクラシカルなソロに。

07. The NAKIGARA ★★★★☆

ドラムの鈴木(アンパン)政行が作曲に関わった曲、高崎/鈴木が作曲で二井原/鈴木が作詞。復帰祝いというところか。ベースとなるリフを高崎が作ったんだろうな。歌メロや曲展開が鈴木作、というところか。ドラムが張り切っている。リフに対する歌メロの重ね方がちょっとテンションがかかっていて面白い。これはまた雰囲気が違う曲になっている。ちょっと聖飢魔Ⅱ感もあるな。ダミアン浜田閣下作曲”ではない”聖飢魔Ⅱの曲(細かい)。

08. wonderland ★★★★☆

最終曲、ヘヴィでダークな感じ、トライトーンというか悪魔感の強い不穏なメロディ展開。初期作のようなダークファンタジー感がある。お、コーラスで以外な展開に、郷愁を誘うというか安らぎを感じさせるメロディラインに。不穏な響きからの解放感があるがコーラスが終わると再び悪魔的なヘヴィなリフが戻ってくる。

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