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Faceless Burial ‎/ Speciation

オーストラリアのデスメタルバンド。「あさって…」で五つ星をもらっていたので聴いてみました。BLOOD INCANTAIONが良かったのでこちらも期待大。

ギターはデスメタルとして王道のリフを使いながら、後期DEATHっぽい整合感のあるテクニカルリフやDEMILICHのような異形にネジれたリフを多く盛り込んでおり、多彩になった楽曲展開と共にリフのヴァリエーションも大いに上がっています。BLOOD INCANTATIONなどの新世代オールドスクールデス勢に通ずるデスメタルIQの高さをみせつけていますね。

聴いてみるとさすがのクオリティでした。ただ、個人的にはもうちょっとリフとかメロディが正統派というかハードロック的だったりN.W.O.B.H.M.的なものが差し込まれる方が好みかな。こういう暴虐な音像に、ところどころすごくオーソドックスなリフとかメロディが入ってくるのが好きなんです。とはいえ、テンションを保ったまま鳴らしきるのは見事。勢いだけに頼らず練られた曲構成も感じました。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Worship 6:20
最初からブラスト、怒涛のリズム、グロールが入ってくる
這うようなベース、刻みははっきりしている
ヘヴィな突進型ながらグルーブが出てくる
リズムチェンジ、けっこうメロディアスなリフ
ツービート、さまざまなヘヴィ・ミュージックの語法が出てくるのは面白い
ツービートのところはハードコア由来なのかな
ミドルテンポが結構続く、ドラムの手数はところどころかなり多い
きしむようなギター音、ジェント的なフレーズが一瞬
途中、ちょっとワイルドハーツっぽいリフ、なんだっけこれ、Earth VS Wildheartsの曲にあったな
まぁ、一瞬だけだが
けっこうスロウでドゥーミーなパートに、ボーカルはほぼグロールというか、何か獣が唸っているような
単に中音域にノイズ成分を足しているだけのボーカル
ただ、音像そのものは全体的には整理されていてかっちりしている、リズムチェンジもハキハキしていて演奏レベルは高い
メロディアスなリフの刻みが入るがメロデスまではっきりとは展開しない、ややカオスさは保っている
ただ、ドラムが無暗と疾走せずけっこうリズムを奏でる
ドゥーミーで曲展開が早い、サバス、というか、人間椅子というか
早いパートは激烈に早い、歌メロはほぼない(グロールのみ)
リフ、リズムの展開によって曲が進行していく
★★★★

2.Limbic Infirmary 6:58
かなりヘヴィなリフ、というか前曲からシームレスにつながっている
全体が一つの組曲みたいなものだろうか
疾走とヘヴィネスの緩急のつけ方が上手い
落ち着いたリズム、展開は激しいのだが比較的乗りやすいというか、展開は自然
一つ一つのパートをけっこう余裕を持って続けていく、飽きるまでいかないところで切り替わる
この辺りはうまい
暗黒的、ユーモアはあまり感じないが娯楽性はある
雰囲気だけで終わらせずきちんと音楽的内容がついてきているというか
途中からドラムが連打し、ギターが乱舞する
舞い踊るようなパートに、リフの間からソロが立ち上がってくる
かなり太い音、意外だな、ちょっとザッパっぽい(あそこまでフレーズに癖はないが)
音程移動が激しすぎず、適度にヘヴィなリフ
ボーカルが暗黒感を出している
★★★★

3.Irreparably Corpsed 4:35
ほとんど前の曲と印象は変わらないなぁ、ブラストで進行
曲の印象が変わらないのはあまり悪い意味ではない、同じクオリティ、同じテンション
もともと一つの曲の中で緩急がかなりあるので、アルバム全体が同一テンションというのは聞いていて悪くない
酩酊感がある、ドゥームはそういうものだし
悪夢のサイケとでもいうべきか、ただ、あまりおどろおどろしさはない
極端な不協和音とかはないし、ところどころに刻みや疾走パートがあるから楽しさはある
ジェットコースターみたいな、あと、極端にテクニカルに走っていないから心地よい
ギターの音が太めで温かいトーン、ゴリゴリはしているが耳触りではない
ひたすら歯を食いしばって聞くというタイプではなくライブは笑顔でモッシュとかなんじゃないかな
ところどころに美味しいパートが出てくる
ブレイクして再び疾走、次の曲に行ったのかと思った
★★★★

4.Speciation 7:28
ヘヴィな始まり、スロウで引きずるようなリフ
引きずる、といってもハイパースロウまではいかず、ギリギリミドルテンポぐらい
疾走パートとの緩急でヘヴィに聞こえる
リズムは適度にアップテンポでノリがいい、ゆったりとしたヘドバン
今のところの全体の印象としてはスロウ~ミドルぐらいのテンポが土台で、そこでリフがいろいろと表情を変えていく
それにところどころ疾走パートが入ってくるし、急にメロディアスというかコードが展開していく感じかな
基本、リフを繰り返すところはコード展開はあまりない
この曲は今までの中では一番ヘヴィ、だんだん手数は増えているがBPMは同じリズム
倍速に感じるようなパターンもところどころ入ってくるが、ゆったりしたヘドバンでずっと同じノリでも行ける
ピッキングハーモニクス、金属音のようなものが入ってくる
後半、リフの反復
鈍い火花のような、だんだんと立ち上がっていく場面、鉄を打つようなリフ
ドロドロと溶鉱炉のような、まさにヘヴィメタルな音像
★★★★

5.Spuming Catarrhal Gruel 5:44
シームレスに次の曲へ、ややアップテンポ、同じ曲の中で場面が変わったのかと思った
金属音、金切り音が多めのリフ
グロール、風の音のようにも聞こえる、人の声はやはり耳を惹く
メインはギターリフで、バッキングとしてボーカルが機能している
疾走パート、トレモロリフ、北欧のような冷たさは感じない、どちらかといえばアーシーで温かい音像
熱を帯びていく
テンションが上がっていく
間奏の後リフ、メロディアスな展開、この曲は盛り上がり度が高い
ブラックメタル的な音像も入ってくる、カオス一歩手前の激烈
★★★★☆

6.Ravished To The Unknown 6:38
これは人間椅子っぽいリフからスタート、というかこういう音程のリフがあった気がする、最初だけだが
同じリフを延々と繰り返しだんだんとヒートアップしていく
展開、リズムが変わる、金切り音
同じリフというかモチーフを繰り返しながら展開していく、
だんだんと展開が早くなる、温度があがり溶鉱炉に
とちゅうブレイクして少しクールダウン、ただ、テンポは落ちたものの音は熱を帯びたまま
だんだんと余韻が冷めていく、フェードアウト、ノイズ度が増して混沌へ溶けていく
★★★★

総合評価
★★★★
全曲テンションが変わらない、どの曲も聴きどころがあり、全体で一つの組曲のよう
ややヘヴィ、ややアップテンポ、など曲ごとの色合いはあるが、一つの組曲の中の別のパート、ぐらいの差異
5だけはやや曲としてキャラが他より立っているが、他の曲が質が低いわけでもない
アルバム全体、40分弱
ドゥームの影響が強いというか、酩酊感や没入感がありつつも各曲のアグレッションも高く展開もしっかりある
展開が少なすぎると飽きるし、展開しすぎるとチープになる危険があるが、両方からうまくバランスが取れている
雰囲気や完成度は高いが、もう少し耳に残るメロディやリフがあれば個人的には名盤だった

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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