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Dan Penn ‎/ Living On Mercy

Dan Pennは1960年デビューのベテランのアメリカのシンガーソングライターで、自身でアーティストとして活動するよりは裏方としての活躍が多い人。アレサフランクリンの「do right woman , do right man」など、多くのヒット曲を持っています。こちらは26年ぶりにリリースされたソロ作。さすがの味わいというか、匠の技、力が抜けたけれど隙の無い完成度を感じる作品でした。リラックスしているのだけれど洗練されている感じがSteely Danの「Everything Must Go」を個人的には思い出しました。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1 Living On Mercy 4:41
少し弾むような、穏やかなリトルフィート的なリズム
アーシーだけれど弾む感覚が潜んでいる
温かい声、落ち着いているが枯れてはいない
無理のない進行、沁みる
煌びやかなギターの音、じわじわと熱量が上がる
素朴なカントリーにショービズ的な煌びやかさ、洗練が混じるのはミュージシャンの手練れがなぜる技か
ギターの刻み、ベースの刻みが力強い
26年ぶりのアルバムらしい
★★★★

2 See You In My Dreams 3:24
少し控えめのグルーヴ、揺らめく炎のような
静かでメロウな雰囲気で歌声が揺らめく
入ってくるギターが美しい
Steely Danのような音、コード進行や曲調はだいぶ違うのだが(ジャズの影響はあまり感じない)、
ギターの音やグルーブには同様の心地よさを感じる
エブリシング・マスト・ゴーの、力の抜けた頃
★★★★

3 I Do 3:04
ちょっとしたダンス、ピアノが軽やかにフレーズを奏でる
アコースティックギターとボーカル、カントリーのダンスホール
サザンロック、アメリカンロック
なんとこの人、御年78歳らしい
確かに枯れた声はしているが、いやいやどうして、十分瑞々しい
グルーブが心地よい、凄いな
★★★★

4 Clean Slate 4:09
心地よいグルーブ、何気ないが完璧なリズム
ジャクソンブラウンのレイトフォーザスカイのギターソロのような、フレーズが収まるべきところに収まっている
あまり言葉で分解するのに適さないかも、コード進行とか歴史とかは語れるけれど
心地よく体をゆだねる、自然体で聴ける
ただ心地よく身をゆだねるだけで音楽に浸れる
ちょっとコード進行い捻りがある
自然に流れていくけれど、メロディの展開はけっこう複雑というか練られている
ギターのカッティングが心地よい、ジャストタイムで心地よいところで鳴る
★★★★☆

5 What It Takes To Be True 3:00
落ち着いたオルガン、ギターのユニゾンと語りからスタート
ボーカルが入ってくる、ちょっとエルトンジョン的なスタート
アメリカのアーティストなのにエルトン感があるとは
本当にこの曲はブリティッシュっぽいな、コード進行といい、ちょっと湿り気のある音作りと言い
ギターソロの音色も泣ける、やっぱり俺ギターの音が好きなんだなぁ
★★★★☆

6 I Didn't Hear That Coming 3:41
雰囲気が変わり軽快なナンバー
サザン、桑田さんはこういう音楽にあこがれて音楽をスタートしたんだろうなぁ
初期サザンにはこういう曲がいくつかあった
もちろん、日本のフィルターをかけて独自のものを生み出したわけだけれど
この曲は自然だなぁ、自然にメロディがあるべきところに落ち着いていく、そう感じる
けっこうメロディは特徴があるというか凝っているのだけれど
無害なBGM感はない、ありきたりでありがちな進行というわけではない
ナチュラルに体になじんでいく感じ、カーペンターズを始めて聴いた時にも近い
エルトンジョンのPearchtree Roadにも似た空気を感じたなぁ
ただ、こちらの方がなめらか、良しあしではなくエルトンはエルトンのカラーが強いからね
こちらはアーティストカラーはそこまで前面に出てこない、単に素晴らしい曲が素晴らしい演奏で鳴らされている
★★★★☆

7 Down On Music Row 4:09
揺らめくチークタイム
ゆったりと優雅に左右に揺れるリズム
オルガンの音が響く、郷愁を感じる
一つ一つの音がよく馴染んでいる
ああ、音楽性は違うがブエナビスタとかにも近いかも
「ずっと続けてきた人」の自然体な感じが出ている
ちょっとクールダウン
★★★☆

8 Edge Of Love 3:49
少しハードロック、ブラスロック調の曲
ギターリフっぽいものにブラスが絡む
疾走はしないが無理なく走るブルース
よくこのアルバムが出たなあ、78歳という年齢もそうだし
結実したことが奇跡的
心地よくて聴いていられる
ボーカルは当然年老いているのだが、声の出し方、力の抜き方が上手い
ヘナヘナとならず、すっとひいていくというか、達人感がある
ここぞ、というところで軽やかに声を出して盛り上げて、また力を抜いていくというか
★★★★

9 Leave It Like You Found It 5:00
ちょっとプレスリー的な「いい声で歌い上げる」のバラード
もっと軽快に進んでいくが
だんだん軽快になっていき、女声コーラスが絡んでくる
明るい情景
★★★☆

10 Blue Motel 4:51
ゆらめくコード、ゆったりとしたリズム
ブルーモーテル、か、憂鬱なモーテルだろうか、本当に青いのか
ホテルカリフォルニアよりももっと本質的な諦念というか、清々しさ
キャリア絶頂期でスターだった若者たちが諦念を歌ったホテルカリフォルニアもそうだが
半ば隠遁した78歳が歌う諦念、郷愁は凄味というか透明感がある
こちらはその分アクがないけれど、純化された郷愁のような
★★★★★

11 Soul Connection 3:35
軽快なナンバーに、ちょっと枯れた味わいはある
ハーモニーでツインボーカル、しっかりとしたメロディが流れていく
ドライブ、といっても比較的スムーズな街乗りといった感じか
無理をして飛ばすというよりは適度なスピードを楽しむ
この人音域広いのかなぁ、けっこうメロディにはバリエーションがある
高音になるとうまく力を抜いている、年齢的に当然ながらつきぬけるようなパワーはないのだが
そうはいってもメロディを正確に気持ちよく抑えてくる
★★★★

12 Things Happen 3:47
穏やかな進行ながら熱がある
声は低め、かなり低い音域でメロディが推移する
ボブディランにも近い、他の曲より低い
★★★☆

13 One Of These Days 3:36
穏やかな音像でスタート、こちらも低い声でゆったりと歌う
カントリーの王道メロディ
少し高音の、オペラチックな女声が微かに入ってくる
コーラスになって主旋律を追ってくる
★★★☆

全体評価
★★★★☆
流石のクオリティ、とにかく心地よい
かといって退屈ではなく、良い曲と素晴らしい演奏が詰まっている
後半、ややテンションが落ち着きすぎているが、落ち着きたいときにも聴けるということで
ロックらしいダイナミズムもないわけではないし、歌メロもフックがある
2020年らしさ、はほとんど感じない(一部音作りなどでモダンなところはあるが)
アメリカンロックの王道

ヒアリング環境
夜・家・ヘッドホン

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