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Obscura / A Valediction(2021、ドイツ)

「チョットワカル」メタラー向けおススメ度 ★★★★★

「完全に理解した」のダニング=クルーガー効果なるものがある。

これは学習などで少しわかるようになると「もう全部分かった」みたいになる現象のことだけれど、これって音楽ジャンルについても当てはまる気がしていて、たとえばメタルって似て聞こえるじゃない。だからちょっと聞くと「だいたい同じに聞こえる」「だいたいパターンがわかった」となる。で、そこからしばらく聞いていくと「あれ? なんも分からん」になっていき、だんだんと曲のバリエーションとか、「どうしたらこんな曲作れるんだろう」に変わっていく。そんな「チョットワカル」方におススメのアルバム。

ドイツの誇るテクニカルデスメタルバンド、Obscure。同名のバンドが非常に多くて検索が大変なのだが、一般的に「Obscure」というとメタラーが想起するのはこのバンドだろう。一応テクニカルデスメタルと位置付けられているがかなりギターはメロディアスで、王道・正統派パワーメタルに感覚は近い。ボーカルがデスボイスなだけでリフは格好よくギターソロもメロディアス。むしろネオクラシカルなパワーメタルとして超一級品のアルバム。

本作も期待値を超えてくる出来で最高。チルドレンオブザボドム(COB)の後期とかにも近いパワーメタル度合いかも。スウェーデンのCOBに比べるとこちらはドイツのバンドなのでよりクラシカルというか、メロディ展開や演奏がもっとかっちりとしている(ドイツのバンドは工業製品のような、メイドインジャーマニーの質実剛健な完成度の高さがある)。ロマンティック過ぎず無骨なメタル感もあるのが最高。仕事をしながら聴いていたのだが実にはかどった。このバンドの魅力はリズムもかっちりしているところ。高い演奏技術の賜物として小気味が良くてリフからソロから聞いていてテンポが良い。この「テンポ感の良さ」が最大の魅力な気がする。

ここのところ、USでは「新譜より旧譜を聞く割合が増えている」らしい。もう旧譜のシェアが7割越えだそう。確かに、新譜より評価が固まっている旧譜の方がはずれは少ないし、あとは自分でも聞きなれたアルバムの方が心地よいのかもしれない。でもその中でなぜ新譜を追うか、というとやっぱり「何か新しい表現」を期待するからなのかなぁ。同時代性、みたいなものも音楽から感じているからかもしれない。2021年、「現代のヘヴィメタル」の名作。


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