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連載:メタル史 1984年②Iron Maiden / Powerslave

夏は忙しい! いろいろバタバタしていてなかなかじっくり音楽を聞く時間がありません。連載ペースが途切れてしまって申し訳ありません。今後は週1更新を目標に進めていきたいと思います。いつかは終わりますので気長につきあっていただけると助かります。メタル史以外に書きかけの記事もいくつかあるのでそれも盆休みで仕上げたいなぁ。

N.W.O.B.H.M.から生まれた最大のバンド、IRON MAIDENDef LeppardはむしろN.W.O.B.H.M.出身と言われたがらないので、N.W.O.B.H.M.から生まれた最大のバンド=IRON MAIDENだと僕は思っています)。彼らのすごいところは80年代を通して進化し続けたことです。まるでThe Beatlesのように。80年代はほぼ1-2年の1枚のペースでアルバムを出し続けたけれど、その間の進化たるやすさまじいものがあります。毎回ファンの求めるハードルが上がり、それを超え続ける。時には予想を裏切りつつも、「IRON MAIDEN像」をアップデートし続けて行ったのは感嘆。同じくUKメタルの雄であったJudas Priestが80年代の黄金期にあっても賛否両論の作品も生み出したのに比べて、80年代のIRON MAIDENってほぼすべてが圧倒的に「賛」なんですよね。かつ、商業的にも成功をおさめ続けた。これだけ多くのアルバムを多くのファンを熱狂させながら生み出し続けたバンドはメタル史で稀。それだけ核となる個性が確立していて、且つそこに対して時代に合わせた新機軸をチャレンジングし続ける取捨選択、プロデュース眼が優れていたということなのでしょう。

1984年のIron Maiden

前作「Piece Of Mind」でドラマーがニコマクブレインに変わりリズムの洗練を手に入れたバンドは、本作でさらに進化を遂げます。Aces Highのような疾走曲はより疾走感を増し、N.W.O.B.H.M.の特徴であったブルース~ハードロックの流れとパンクの流れがぶつかって生まれたともいえるシンプルかつ印象的なパワーコードリフの極致ともいえる2 Minutes to Midnightを収録し(こんなシンプルかつ王道パターンで擦りまくられたリフを、N.W.O.B.H.M.が商業的に終焉した1984年にリリースして成り立たせてしまうのが凄い)、そして前作「To Tame a Land」で実験的に開花したスティーブハリスのプログレ精神、大曲主義が結晶した「Rime of the Ancient Mariner」も収録しています。前作の延長線上にありながら深化・進化してみせたアルバム。その進化の進み方がまさにファンの求めるもの、理想の音像として結実したバンドにとってもファンにとっても至福の歴史。まだまだ進化の余地があったということでしょう。それだけ残された進化の可能性が大きかった。

どんどん巨大化していくツアーセット

ただ、さすがにここで余白を埋め尽くしたのか、あるいは過酷なツアー(80年代はツアーがどんどん大規模化し、音響機材の進化と共にアリーナツアーへとライブの商業的規模が巨大化していった時代でもあります)とレコーディングの生活で肉体的に疲労したのか、翌年1985年はライブ盤リリースでオリジナルアルバムリリースがない年となりますが、そのあとは音像的に新機軸を打ち出していくことになります。それはまた次作の記事で。

カリブ海でのレコーディング再び
スティーブハリスが日の丸Tシャツを着ていますね

本作のバンドメンバーは前作と変わらず。プロデューサーも変わらずマーティンバーチ。そして録音スタジオまで変わらずカリブ海です。前作と姉妹のようなアルバム。制作環境的にも前作でつかんだ感覚をさらに掘り下げた作品と言えます。

※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。

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1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…

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